「AIを使う組織」から「AI前提で設計された組織」へ
ディップは全社員3,100名のうち、4分の3にあたる2,300名が営業職という、非常に「営業に強い会社」です。一方で、HR領域には技術力を武器にする競合他社も数多く存在します。 私がCTOに就任する際、会社に宣言したのは、今の強みを活かしつつ「営業力に加え、プロダクトや技術にも強みを持つ会社」へと進化させることでした。営業力という既存の武器に、強力な技術力を掛け合わせる。これこそが会社からの期待であり、私が成し遂げるべき最大のミッションだと考えています。 そのため、まずは「バイトル」の大規模リニューアルを通じ、単に「プロダクトを作る」段階から、その先の成果にまで責任を持つ「価値を出し切れる組織」への変革を推し進めてきました。 また、その延長線上にある現在の大きなテーマが「AIを使う組織」から「AI前提で設計された組織」への転換です。AIを単なるツールとして導入するのではなく、プロダクト、開発プロセス、さらには組織設計そのものをAI稼働前提で再設計する。この大きな転換期を乗り越え、組織を進化させることが、今の私の挑戦です。 求人サービスでは応募数が重要な指標となります。ただ、求職者にとって応募は入口であり、本当に大切なのは納得して働ける場所に出会い、その後も活躍できることです。 そこで私が入社してから推進しているのが「繋がり続けるサービス」への転換です。これまでの「点」の支援だった応募数を追うモデルから、面接、就業、その後のキャリアまでを支援する。ユーザーの真の利益を追求する構造に変えること、これが私の言う「価値を出し切る」ということです。 私は長年ソフトウェアエンジニアとしてキャリアを積んできましたが、その経験から断言できるのは、開発者にとって最も悲しいのは「作ったプロダクトが使われないこと」だということです。私たちも含め人材サービス各社は、これまで応募者数を主要KPIとして磨いてきました。これは事業として正当な努力ですが、その先の『就業』『定着』に責任を持つ視点も同時に強化したい――それが私のテーマです。 どれだけ高度な技術を駆使しても、プロダクトが顧客の課題解決に直結していなければ意味がありません。だからこそ私は、「何を作るか」ではなく「提供先にとって何が嬉しいのか(アウトカム)」に徹底的にこだわりたい。自分の書いたコードが誰かの人生を動かし、実際に使われているという手応え。この「アウトカムの実感」こそが、事業会社に身を置くエンジニアにとっての「最大の開発者体験」だと考えています。 エンジニアが「何を作るべきか」を深く考えるための、時間と精神的な余裕を確保することが組織の重要な役割です。具体的には、不要なミーティングを徹底的に削減し、コーディング作業などのルーティンは積極的にAIに任せる体制を推進しています。今の時代、AIによって捻出された時間は、そのまま「ユーザーへの価値創造」や「事業への深い理解」に充てるべきと考えています。 バイトルなどの大規模プラットフォームにAIを導入する際、最大の壁は、実は技術よりも、「AI前提で設計されていない組織構造」が最大の壁でした。 AI導入では『モデル精度』や『ツール選定』はもちろん重要です。ただ、大規模サービスでAIを継続的に活用していくうえでは、それだけでは不十分です。『誰が責任を持つのか』『どこまでAIに任せ、どこで人が判断するのか』といった、業務・責任・統制の設計まで含めて見直す必要があります。 AIは便利ですが、「便利だから任せる」だけでは危険です。私はよく「AIを導入しているかは論点ではない。AI前提で設計できているかが差になる」と話しています。AIはもはやツールではなく、インフラです。だからこそ、組織全体を再設計する必要があるのです。 また、判断の軸を「ユーザーファースト」という言葉で統一しています。現場で技術選定や仕様に迷ったとき、常に「これは求職者にとってプラスになるか?」という基準に立ち返る。この判断軸によって、エンジニアは迷いなく本質的な開発に集中でき、それが結果として良好な開発者体験と強いプロダクト作りに繋がると信じています。
「まだ世の中にない価値」を形にする
新卒で広告代理店に入社し、約5年間勤務した後、LINE(※現在のLINEヤフー)へ転職しました。その後、LINE時代の先輩だった藤原(現ディップ常務執行役員の藤原彰二)さんから声をかけていただいたことをきっかけに、ディップに出会い、2022年6月に中途入社しました。正直、それまでディップについて深く意識したことはなく、「求人広告の会社」というイメージを持っていました。しかし、藤原さんから「新規事業を立ち上げる」と聞き、強く興味を惹かれました。前職でも新規事業の立ち上げやグロースに携わっていた経験があり、その知見を活かせるのではないかと感じたことが、入社の決め手になりました。 ディップでは、最初は商品開発本部内で、新規事業のフィジビリティスタディやPoC(実現可能かどうかの検証など)を担う部署に所属し、様々な新規事業の立ち上げに携わりました。その後、当時のAI・DX事業本部(現在のソリューション事業本部 AI・DX事業部)に異動し、新サービスの立ち上げや、既存の販促・求人DX事業のリブランディングなどを担当。現在は、ソリューション事業本部の中にあるAI・DX事業部で、主にdip AIやバイトルトークといったプロダクトのグロース・企画に携わっています。 ソリューション事業本部の中にAI・DX事業部があり、事業部内には、営業、dip AIやバイトルトークの企画、販促領域はMEOやSNSブースターという予約台帳関連の企画担当者が在籍しています。取り組みとしては、各プロジェクトのグロースと、新しいことに挑戦するという大きく二つの軸があります。ユーザーインタビューやクライアントからのフィードバックをしっかりとヒアリングし、それを基に開発・企画の優先順位を決定し、実行していくというサイクルで、KPIを最大化するために何ができるのかを日々実行しています。営業と企画が同じ組織内にあるので、お客様の声をダイレクトに企画へ反映でき、迅速な意思決定ができるのは、組織としての大きな特徴だと思います。 全社的にも注力しているのが、dip AIとバイトルトークです。dip AIは、今後の採用マッチングの精度を高める上で不可欠と考えており、どのようなシーンで活用できるか、どうマネタイズするかといった点を日々研究しています。一方、今年2月末に正式リリースされたバイトルトークは、β版の段階から大手企業のお客様に高評価をいただいており、利用社数も着実に増えています。今後は、よりアクティブな利用を促進すること、そして未導入の大手企業への導入をさらに強化していく予定です。 何より面白いのは、「まだ世の中にないもの」を生み出すことに携われる点ですね。dip AIもそうですが、まだ明確な成功モデルが存在しない中で、「どうやったら使ってもらえるか」「どこにマネタイズポイントがあるか」などを手探りで考えています。決まった役割があるわけではなく、少人数で動いている分、自分がボールを拾えばどこまでも任せてもらえる環境です。 さまざまなタイプのメンバーがいますが、共通しているのはプロダクトや事業への強い愛着です。日常的にUIやUXについて語り合ったり、おすすめのアプリを共有し合ったりと、仕事の枠を超えたコミュニケーションは活発なほうだと思います。 組織としての魅力は、やりたいと言えば任せてもらえる環境があります。実際、私自身もバイトルトークのプロジェクト立ち上げに手を挙げて参画しましたし、年齢や立場に捉われず、プロジェクトを任せてもらえることも多いので、推進力や巻き込み力は自然と身についていきます。 また、最近だと事業部内で「企画職オーディション」という取り組みを企画して、営業やCSのメンバーが企画職に挑戦できる機会を作りました。40人ほどエントリーがあり、営業職の3人が企画に異動しました。こうした「自らチャンスをつかむ」文化が根づいていることが、メンバーのモチベーションにもつながっているんじゃないかなと思いますね。
ユーザーに寄り添い、10年後も価値を生み続けるプロダクトへ。テックリードが新規プロジェクトの指針を描く。
入社してしばらくは、『スポットバイトル』のワーカー向けアプリケーション開発を担当していましたが、現在は新規プロジェクトで、モバイルアプリ開発をしています。特にiOSアプリ開発のテックリードです。 エンジニアとしては、新卒で入社した会社では、5年間以上、携帯電話向けのアプリや組み込み開発を経験しました。その後、デジタル地図データやルート探索データを扱う会社でWebフロント・バックエンド、そしてiOS・Androidアプリ開発を7〜8年ほど担当しました。その次は、オンライン会議やオンラインイベントのプロダクトを開発する会社で、iOSアプリ開発を3年ほど経験し、ディップに至ります。 過去の経験の多くが、社内利用者向けの業務系システム開発でした。より多くのユーザーに影響を与えるプロダクト開発に携わりたいという思いが強くなり、toC領域のサービス開発に興味を持つようになりました。それから、ディップが「労働力の社会課題解決」を目指している点にも惹かれました。社会課題を解決していくというアプローチは、非常にやりがいがあると感じました。 現在携わっている新規プロジェクトでも、以前携わっていた『スポットバイトル』チームでも、スクラム開発で進めています。なのでPOとは密接に連携していますね。エンジニアだけだと、どうしても一歩引いて「誰のための、何のサービスなのか」という視点を持ちづらくなることがあります。企画の担当者がユーザーのペルソナや課題を深く掘り下げ、そこからユーザーストーリーを組み立ててくれるため、ユーザーを意識した開発ができるようになりました。 入社してから、改めてユーザー視点とは、企画チームと密に連携し、数字と向き合いながら、ユーザーの課題解決に貢献することだと実感しました。『スポットバイトル』を担当していた頃、直前キャンセル率が課題になっていたんです。企画担当者が様々な施策を考案し、それを開発チームが機能として実装することで、キャンセル率の低下に貢献できたことがありました。他にもアプリ初回起動時にオンボーディングを表示する機能を追加し、ユーザーが初回利用時に『スポットバイトル』というサービスについての理解を深められるようにするなど、さまざまな機能を作ってきましたね。ユーザーの課題解決に貢献できたと実感できるのは、大きなやりがいです。 苦労したことは、ディップに入社するまで本格的なスクラム開発の経験がなかったので、スピード感には最初は苦労しました。1〜2スプリントという短い期間でバックエンドからフロントエンドまで機能開発を完了させる必要があり、ドメイン知識のキャッチアップも含めて必死に食らいついていきました。 バイトルのリアーキテクトという新規プロジェクトではものすごい数のユーザーを抱えています。立ち上げのプロジェクトという責任の重さを強く感じると同時に、この仕事をやり遂げれば、ディップの中で自分の役割や居場所を確立できるのではないか、という思いもありました。エンジニアのキャリアとして見ても大きなチャンスだと感じています。 目標としては、スクラムで開発を行ってきた今までの経験なども活かしつつ、チームを導くという役割に挑戦しています。プロジェクト開始時に、チームのメンバーそれぞれがこのプロジェクトで果たす役割、リーダーシップの宣言を行う機会がありました。私の宣言は「技術的な指針を明確にし、開発の方向性をぶれさせないこと」です。テックリードとして、アプリ開発領域における技術的な指針を定めること、Android/WebとUI/UXを統一すること、ユーザーの使いやすさとメンテナンス性の高いアプリを作ることを目指し、この先も進化していけるプロダクト開発をリードしていく役割を担っています。 意識していることは、「10年後も使えるプロダクト」を目指しています。そのため、モバイルアプリ開発においても、アーキテクチャやドメイン駆動設計のようなデザインパターンなどを導入することで、将来的な変更や機能追加に柔軟に対応するための土台を作ることを目指しています。
事業戦略の中で絵を描き、計画を実行するディップのマーケティングの面白さ
前職はインターネット広告を専門で取り扱う広告代理店で、コンサルティングや法人向けのマーケティング、新規事業を行っておりました。一般的な広告代理店とは違い、出稿金額に対する「%」で報酬をいただくコミッション制ではなく、月々の稼働工数をベースに算出するフィー制となっていたため、クライアントに伴走でき、さまざまな提案をすることができましたが、その一方で、予算やクライアント側のリソースなどの都合で実行できない施策も多かったです。例えば成果を出すための100のアイデアがあったとしても、予算・リソースの事情で選べる打ち手は5つしかない。95のアイデアを捨てることになってしまいます。それがすごくもったいなく、悔しく感じていました。しかし、お客様の意思決定ですから、一線を越えて踏み込むことはできません。「マーケティング活動を支援する」という立ち位置ですから仕方のないことですが、できることに限界を感じました。それなら事業会社の「中の人」になってしまえば良くて、権限が持てるポジションを任せられれば、自由に、思い切ったことができると期待して、ディップへの入社を希望しました。
他社を経験して再びディップへ──「挑戦を後押ししてくれる、この場所で」
学生時代から人材業界に興味があって。さまざまな業界・業種の企業、しかもそのトップ層と直接話ができる環境に魅力を感じたんです。多様な価値観や考え方を吸収し、自分が一番成長できるフィールド、それが人材業界だと思いました。 その中でもディップは、まだ『バイトルドットコム(現:バイトル)』が世間にあまり知られていない時期に、「業界No.1になる」と冨田社長が宣言していたんです。そのメッセージに衝撃を受け、「自分もその一員として挑戦したい」と思い、入社を決意しました。 大手顧客を担当するビジネスソリューション部門に携わっていたのですが、営業の仕事が面白くて、より幅広い業界やプロダクトで自分の力を試したい気持ちが芽生えました。そこで、デジタル広告の業界へ転職。配信動画サービスで流れるCM広告やデジタルOOHの提案営業に取り組みました。 やりがいのある仕事に従事する中でもディップでもう1度という気持ちが芽生えたのは辞める前にお世話になっていた上司の存在が大きかったです。在職時に大手クライアントの課題解決に貢献する営業手法を学ばせていただき、営業パーソンとして本質的な思考力を培うきっかけになりました。また、転職を経て他社で新しい環境に飛び込んだことで、「もっと挑戦したい」「自分の成長を、もう一度ディップという舞台で試してみたい」という気持ちが強くなったんです。 再入社後は、『バイトルトーク』という新しいコミュニケーションツールの立ち上げを、営業推進という立ち位置で自ら手を挙げて担当させてもらいました。0→1を経験できる機会があることも、再入社して改めて感じた魅力の一つなんです。「やりたい」と声を上げたら任せてもらえる。そうした環境が根付いているのは、昔から変わらないディップの魅力だと思います。 今後の目標としては、ディップを業界のプロフェッショナル集団にしたいという思いがあります。個人的には、コミュニケーションツールを通じて世の中の常識を変えるような、新しい価値を生み出していきたい。その挑戦の舞台として、ディップ以上の環境はないと再認識しています。