前職時代にコンサルティング事業部を立ち上げた経緯をお話しください。
前職のデジタルマーケティング会社には、人事部門の役員(CHRO)として参画しました。私が入社した当時、創業間もないベンチャーらしく非常にフラットな組織でしたが、今後の事業成長を見据えて次のステージへ進むためには組織体制のアップデートが不可欠でした。そこで約半年間をかけ、ミドルマネジメント層を育成するとともに、評価制度や目標設定、進捗管理から結果評価に至る一連のPDCAの仕組みを社内に導入・定着させました。 この社内改革を進める中で大きな気づきがありました。私自身が長年培ってきた組織開発の知見やノウハウと、前職の会社が強みとして持っていたマーケティングノウハウを掛け合わせることで、他にはない独自の価値提供サービスが生み出せると思いついたのです。これがコンサルティング事業部を立ち上げた直接のきっかけでした。 世の中には、10名から30名、あるいは50名規模へステップアップする過程で、組織づくりやマネジメントに深く悩んでいるベンチャー企業や中小企業がたくさん存在します。そうした企業の経営者の方々に対し、私たちが自社で実践し築き上げた生きたノウハウを届け、成長を支援したいという強い想いで事業を立ち上げました。
自走化支援というスタイルにたどり着いた経緯をお話しください。
事業立ち上げ初期の約2年間は、一般的なコンサル会社と同様に評価制度を設計して納品する代行スタイルを採っていました。しかし運用を続ける中で強い違和感を抱くようになったのです。評価制度は納品して完成ではなく、運用しながら軌道修正やチューニングを行うものです。外部が代行して作るだけではクライアント側に知見が残らず、新しい課題が生じるたびに自社で対応できず私たちを頼る依存体質が生まれていました。 質問が来るたびに契約が延長されるためビジネス上はプラスですが、顧客の本質的な課題解決になっていない状況に居心地の悪さを感じたのです。そこである時期から、完成品を渡すのではなく、構造を学びながら企業の価値観や戦略と連動した制度を「一緒に作っていく」アプローチへ一変させました。 その結果、クライアントに知見が蓄積され自分たちで組織を動かせる「自走化」へ導けるようになりました。組織が自走して成長すれば、採用やリーダー育成など次の課題が生まれます。顧客の成長に伴って私たちの支援領域も広がり、共に発展していける持続可能なビジネスモデルを確立できたと考えています。
お客様はどのような課題感を持って相談に来られるのですか?
メインターゲットである30〜100名規模へ拡大する過程で、社長1人による全社員との直接コミュニケーションに限界を感じてご相談に来られるケースがほとんどです。離職率の高さというネガティブな悩みから、属人的マネジメントからの脱却というポジティブな課題まで様々です。 中には過去に他社コンサルを入れて失敗し、現場マネージャー層が「どうせうちの会社は変わらない」「社長がまたコンサルを連れてきた」と冷ややかな目で見ている冷え切った状態の企業様もありました。私たちはまず現場の方々と丁寧に関係を構築し、なぜ評価制度が必要なのかを解きほぐしながら伴走しました。 私たちが伴走を続ける中で、まず社長自身の意識と行動が劇的に変化しました。その姿を見た現場のミドルマネジャー層も「この会社にまだ期待できるかもしれない」と当事者意識を持つよう変わっていったのです。現在その企業様は脱コンサルタントを果たし、事業課題に合わせて自分たちの手で制度をチューニングしながら順調に成長されています。このような劇的な変化を生み出せるのが私たちの強みです。
「人には自分で難題を乗り切る力がある」という信念をお持ちと伺いました。
社会人になってからの経験は挫折の連続でした。 大手企業時代、早期にマネジャーに昇進するも組織を上手く動かせず挫折。マネジメントを極めるべく組織コンサル会社へ転職し、感情を排してルールと数字だけで管理する型を徹底的に叩き込みました。しかし理論は完璧でも人間は感情を持つ生き物であり、数字だけでは人は動かないという新たな壁にぶつかったのです。実際、コンサルが入ったことで社員が辞め、社長が一人ぼっちになる厳しい現実も目撃しました。 挫折と葛藤を経て行き着いたのが、人は本質的に弱い生き物であるという「性弱説」です。どんな経営者も孤独や不安を抱える弱い人間であり、向き合えば人は必ず変わることができます。だからこそ、相手に寄り添い一緒に「やろう」と熱量を高める伴走者が必要不可欠なのです。 クライアントの熱量を高めるために必要なのは、自分自身が誰よりも高い熱量を持って向き合うことです。私自身、弱い人間だと自覚しているからこそ「自分にだけは絶対に負けない」と日々自己研鑽を続けています。自分が成長し続ける姿勢を示してこそ、人の変わる力を信じた本質的な伴走ができるのだと信じています。
今後、御社のようなコンサルティング会社の存在意義はどのように変化していくとお考えですか。
AIなどのテクノロジーが急速に発達する中で、単に情報を提供したり制度を設計して納品したりするだけのコンサルティングは不要になり、AIに代替されていくでしょう。知識や正解の提示だけならAIの方が圧倒的に優秀だからです。しかし、人間は「これが正解です」と教えられたからといってすぐに自発的に行動できるわけではありません。一人ではダイエットが続かずパーソナルトレーナーが必要になるのと同じ理屈です。 経営者は孤独や不安を抱える生身の人間であり、情報だけで一歩を踏み出せる人はごくわずかです。だからこそ当社のコンサルティングでは、あえて「答えを教えない」スタイルを徹底しています。悩む経営者に対して結論を言うのを堪え、「AとBの選択肢があり、それぞれメリットとデメリットがあります。御社の価値観なら何を選びますか?」と問いを立てるのです。 この泥臭く人間臭い対話のプロセスがあって初めて、経営者の中に「自分たちで決めた」という強い当事者意識と熱量が芽生えます。相手に寄り添い問いを立て熱量を点す価値は、時代が変わっても絶対に無くならないと確信しています。