SALESCORE株式会社

SALESCORE株式会社は、「セールスイネーブルメント」領域でSaaSと伴走型コンサルティングを掛け合わせた独自の支援を提供する企業だ。セールスイネーブルメントとは、営業組織が継続的に成果を上げるための人材育成や業務改善の取り組みを指す。同社の強みは、営業活動の可視化、評価基準の標準化、成果再現の仕組み化といった課題に対し、「テクノロジー」と「文化」の両面から支援する点である。

現在提供しているSaaSプロダクトは二つ。一つは『SALESCORE SYNC』。SFA（営業支援システム）への入力負荷を最大1/10に軽減し、営業担当者が本質的な業務に集中できる環境を整える。もう一つの『SALESCORE VISUALIZE』は、営業課題を一目で可視化するダッシュボードツール。SFAと連携し、各メンバーの進捗をリアルタイムで表示。クロス集計や分析機能を活用し、改善アクションの設計までを支援する。

これらのプロダクトに加え、「Buddy」と呼ばれる専任コンサルタントの伴走支援も特徴だ。全体戦略設計から、営業プロセス・KPI等の具体設計、浸透・定着までを一貫して支援。顧客ごとの事情に寄り添いながら、営業組織における構造的な課題解決を目的としたセールスイネーブルメントを実現する。
既に多様な業界で導入が進み、営業変革を加速させる手段として注目されているが、代表の中内崇人氏は「登山で言えば、まだ二合目」と語る。セールスイネーブルメントの有効性は、国内ではようやく浸透の入り口に差し掛かった段階。営業活動のデータ活用や標準化も他領域に比べて遅れており、「営業は迷惑」といったイメージもなお根強く残っているという。

こうした現状を踏まえ、同社が描く未来像は二つある。一つは、営業がアスリートのように行動を振り返り、成長を楽しめる世界。商談や提案、発言のタイミング等が定量的に可視化され、営業自身が主体的に学び、進化していける環境をつくること。もう一つは、営業組織全体が科学的にマネジメントされ、経営の意思決定が高速化する社会の実現だ。これにより、商品開発やサービス改善へのリソース配分が最適化され、結果としてより良い商品が、より早く消費者の元に届く。

この未来を形にするため、同社では既存プロダクトの改善に加え、次なるプロダクト群の開発にも注力している。今後は3カ月に1本のペースで新機能をリリースする計画が進行中。SFAに止まらず、メール・商談動画・通話ログ等の未活用データや、同社が蓄積してきた独自データを活用し、営業一人ひとりに対する課題可視化と成果改善の提案を目指す。

プロダクトと並んで、変革の鍵を握るのが「人」の存在である。同社はプロダクトのみならず、伴走するBuddyの存在にも強くこだわっている。顧客の営業変革に深く向き合うためには、高い意欲を持つ一定数の人材が必要だ。
「達成の喜びをあたり前に」このビジョンの実現に向けて、同社は採用を拡大し、仲間と共に次なるフェーズに挑んでいる。

同社の真価は、「営業行動の変化を組織の文化にまで昇華させること」にある。その信念の背景には、中内氏自身が経験した原体験がある。
創業直後、Buddyとしてあるクライアント企業に常駐した時のこと。営業一人当たりのアポイント件数が1日1～2件という状況を変えるべく、営業活動の分業化を図り、一人1日5件のアポイント獲得を目指す体制を導入した。しかし、理論上は達成可能なこの目標に対し、現場の動きは鈍かった。資料作成や訪問するタイミングの都合等、様々な理由が挙げられ、旧来のやり方に戻ってしまったのだ。

「最初の1カ月は全く変わらなかった。“できるはず”のことが“当たり前”になるには、仕組みだけじゃ足りない。環境と空気が変わらなければ、文化として根付かないのです」
そう語る中内氏は、自ら電話営業を行い、1日で90件の架電から10件のアポイントを獲得。その様子を間近で見たメンバーが「自分にもできそう」と口にし、翌週には101件の架電で11件のアポイントという成果を上げた。組織の空気が、確実に変わった瞬間だった。

「“頑張ります”では文化はつくれない。形骸化して終わってしまう。でも、隣の人が100件やっていたら自分も自然とやるようになる。人は環境に影響される生き物だから、水準が文化として共有されれば、お互いに引き上げ合えるでしょう」（中内氏）。

こうした考え方は、同社の組織づくりにも色濃く反映されている。同社では、営業における“文化”をいわゆる企業カルチャーとは分けて捉えている。
それは五つのバリューに言語化されており、中でも「顧客より顧客のことを考える」は最も共感度が高い価値観だ。目の前の依頼内容をこなすのではなく、顧客自身がまだ気付いていない課題や理想の姿まで想像し、時には議論を交えながら最良の行動を導く。

同社では文化を浸透・定着させるための仕組みを徹底している。朝会・夕会・週次レビューといった日々のコミュニケーションの中で、バリューが体現されているかを振り返り、評価する環境がつくられている。制度も整備されており、社員一人ひとりが「持論」を磨いていける環境が整っている。
中内氏は語る。「日々研鑽していますが、当社の文化レベルは、まだまだ日本一とは言えません。でも、積み上げていく余地があるということです。事業成長と組織拡大の過渡期にあるスタートアップとしては、文化に対してかなり投資を行っている自負があります」
行動の再現性と改善の継続性を実現する鍵は、文化にこそある──同社はこの本質的なテーマに、真正面から挑み続けている。

現在、同社は事業・組織共に拡大フェーズにある。3カ月に1本のペースで新機能をリリースすることを目指しており、プロダクト開発チームの強化が急務だ。また、文化づくりという観点では、セールスイネーブルメントの考え方を社会に広げていく上で、顧客企業と現場で向き合うBuddyの増員が欠かせない。中内氏は「文化が100%できている営業組織は存在しない」とした上で、「テクノロジーと人の支援、どちらも必要。トータルソリューションで価値を届ける会社でありたい」と語る。

採用に当たって同社が最も重視するのは、スキルや経歴ではない。「この仕事を通じて社会をどう動かしたいのか」という視点と、本気で顧客に向き合おうとする意志こそが重要だと考えている。

事実、営業未経験・元ジムトレーナーという経歴のメンバーが、入社1年でBuddyとして活躍している例もある。オンボーディング制度や支援事例の動画、会議映像、ロールプレイのアーカイブ等、学習環境も整備されており、一定の指向性さえあればキャッチアップは可能だ。

顧客の要望をそのまま受け入れるのではなく、最先端の知見と自らの持論を基に激論を交わし、時には顧客の期待値すら塗り替えていく。そのためには、精神的な負荷もいとわずに踏み込める姿勢が求められる。中内氏は「この仕事はAIにはできない、人にしか担えない領域。だからこそ、意味がある」と語る。

Buddyとしての経験を積んだ後は、営業企画やマネージャー等、顧客企業の“営業組織づくり”に通じる様々な領域にスキルを転用できる。また、日々の対話を通じて得たインサイトを開発チームに還元する役割も期待されており、「何が本当に必要か」を顧客以上に考え抜き、プロダクトづくりへと接続する。そんなキャリアの選択肢が開かれているのも、同社ならではの魅力だ。

社内には、多様なバックグラウンドを持つメンバーが在籍している。それぞれの視点や知見を生かしながら、営業組織の変革に貢献している。共通しているのは、顧客にとって意味ある仕事をしたいという思いと、「自らの成長を止めない」という姿勢だ。
Buddy同士によるナレッジ共有に加え、育成プログラムの整備も進められており、主体的に学ぶ人にとっては、極めて濃い時間を過ごせる環境である。

「素直さ」「学ぶ意欲」「なんとかする力」。これが、同社が掲げるカルチャー要素だ。プライドより成果にこだわり、健全なフィードバックを受け入れ、答えのない問いにも逃げずに向き合う。そんな気風の中で、自分自身を更新し続けられる人材を、同社は歓迎している。