改めて、御社を立ち上げた時の思いをお聞かせください
農業の機械化は進んでいますが、今なお人がいないとままなりません。「売上や利益を伸ばしたい」「面積を2倍にしたい」農家の方々がそういった夢を叶えるには、結局のところ人手が必要で、しかし人口減少は進む一方です。この先農業に関わる人が大きな希望を持てる社会にするには、AIなどの高度なテクノロジーが不可欠だと考えました。 そうして農家の方々とたくさんコミュニケーションを取りながら、いただいた要望や気付いた点をもとに、プロダクト開発に乗り出しました。現在開発を進めている高畝アスパラガス収穫ロボットも、とある佐賀県の農家さんからの要望がきっかけで構想が始まったのです。 近年アグリテック企業は続々と生まれていますが、当社を設立した当時はまだ珍しい業界でした。長い年月をかけ、農家と同じ目線で自然と向き合って得た知見は、我々の大きな財産です。
これまでで、御社を立ち上げてよかったと思えた瞬間はありますか
やはり農家の方々に貢献できていると実感した時ですね。 プロダクトを提供した農家さんから、「65歳で引退しようと考えていたけれど、この製品があるならあと5年続けてみようかな」という言葉をいただきました。引き際を考えていた方がもう少し頑張ろうと思えるようなものを作れたのだと、努力が報われたような感覚でした。またとある農家さんでは、当社のプロダクトをめぐってファーム内で争奪戦が起きているようで、それも嬉しかったですね。 また農家の皆さんは、我々の取り組みに共感し、協力してくださる方ばかりで心強いです。リサーチや研究開発では実際に農家さんのファームを拝見して、作業の仕組みを学びながら課題やニーズを見つけていきます。そのような依頼をする時、断られた事はほとんどありません。皆さん快く提供してくださるのです。「現場の方々にとって必要なものをもっともっと生み出したい」という気持ちも、さらに高まります。
御社の存在意義がよく分かりますね。社内のメンバーにはどのような方が多いですか
我々の仕事は、正解の見つかっていない世界で模索するようなものばかりです。このような世界で、メンバーはひたむきに色々な事を試したり、お互いのアイデアを話し合ったりしています。 例えば制御エンジニアは、独自の仕組みを持つ収穫ロボットを開発してくれました。メカエンジニアは、出来上がったプロダクトを量産に向けて抜本的な改良に乗り出しています。またAIエンジニアも、最新の技術を取り入れようと日々論文を読んで研究していて。どのメンバーも本当に頼もしいです。大変な道のりですが、日々少しずつ進歩しているのは確実で、メンバーの一生懸命な姿にはグッとくるものがあります。 しかし、まだまだメンバーは足りません。タスクをシェアしながら一人ひとりが能力を存分に発揮できるような組織体制にしていきます。
より良い組織を作る上で、菱木さんの中で意識していることがあれば教えてください
みんなで同じ方向を向くためのコミュニケーションは常に心がけています。その一環として、長年取り組み続けているのが“合宿型の出張”です。 遠方のファームで研究や開発、プロダクトの運用を行う際は、数日間かけての出張になります。その出張先が決まった時、そのエリアの近くで一軒家等を探し、社宅として借りるのです。毎日メンバーで同じ釜の飯を食べて、同じ屋根の下で寝て。夜にボードゲームで遊んで盛り上がった事もありますね。もちろんホテルを借りてそれぞれで過ごそうと思えば、そのような手配もできます。ですが、この合宿スタイルの出張で共に過ごす時間を増やす事で、仕事中の息が合うようになったと思えるのです。今後も、この合宿型の出張を続けていくつもりです。
最後に、御社に興味を持った方へのメッセージをお願いします
農業という世界には、手つかずの課題がたくさん残っています。そこには、まだ見つけ出されていないアプローチ方法もあると思うのです。それはAIプロダクトで解決できるものだけでなく、例えばマーケティングの視点から対策できる事もあるかもしれません。私たちはそれを愚直に探し続け、一つひとつに応えていきます。 そういった意味で当社は、AI技術に限らず様々な視点から挑戦できるフィールドです。また今後はグローバル展開も視野に入れています。日本だけでなく、世界各国の農業のカルチャーを作り出すというくらいの気概でいます。 自分自身の手で世の中を変えたい。そんな思いを秘めている人には、面白いと思ってもらえる場所ではないでしょうか。一緒に仕事できる日を楽しみにしています。
