株式会社トリプルスリーを創業した理由は?
食品・酒類メーカーで外食企業と仕事をする中で、もう少し近い距離で関わりたいと思ったことが独立のきっかけでした。クライアントに対してサポートを行っても、「ビールを売る」という事実が付いて回り、100%の力でバックアップできないもどかしさを感じることがあったのです。自由な立場になれば、よりクライアントに寄り添ったサポートができると考え、独立を決意しました。 もう一つの理由は、大学の野球部の後輩と、いつか独立して一緒に会社を経営したいという夢があったことです。食品・酒類メーカーで働いた10年間、未熟だった自分に投資して育ててくれた恩をある程度返せたと感じたこともあり、独立を決断しました。私が社長、後輩が副社長という形でスタートしました。 二人とも野球部出身ということもあり、社名は野球にちなんだものにしたいと思っていました。「スクイズ」「ヒットエンドラン」等の様々な候補がありましたが、「トリプルスリー」を選んだ理由は、オールマイティに何でもこなせる会社にしたいという思いがあったからです。人材採用、店舗内装等、外食企業の経営における困りごとに声をかけてもらえる会社を目指すという理念を、この名称に込めました。トリプルスリーは、打率3割・30本塁打・30盗塁を1年間で達成した選手に与えられる称号で、プロ野球の歴史で10人しか達成したことのない偉業です。そのパワーとスピードをバランス良く兼ね合わせた感覚を、社名に反映させました。
コミュニケーション能力認定講師の資格は、なぜ取得したのですか?
コミュニケーション能力認定講師の資格は、食品・酒類メーカーの在籍中に取得しました。実は私、お酒が飲めない体質なのですが、その会社の営業職では酒席に出る機会が多かったのです。外食企業の経営者とお酒の席で話すことが多い中、しらふで酔っている方々と話すのはかなりつらい場面もありました。相手も気を使ってしまうようで、打ち解けて話すのに酒席を用意した意味がなくなってしまいます。そこで、酒席で酔っている人よりも高いテンションを発揮するためにコミュニケーションの勉強を始めました。 元々コミュニケーションには自信がありましたが、体系的に学ぶことで感覚的に理解していたことを次々と言語化できるようになり、苦手なことも克服することができました。この経験を通じて、私はコミュニケーションの力を実感し、当社の経営においても「コミュニケーション」を中心に据えています。信頼関係をベースとしたチームでの仕事に、強い信念を持っています。 相手の反応がコミュニケーションの成果です。相手に「コミュニケーションを取りやすい」と感じてもらえれば、それは成功と言えます。そのためには、相手の立場に立って物事を進める姿勢が必要です。当社のメンバーは、全員が「相手軸」でのコミュニケーションを意識しており、そのおかげで働きやすい職場環境が整っていると自負しています。
ミッション「日本の外食産業に革新を」にある「革新」は、どんなことをイメージしていますか?
日本には、思いが込められた素晴らしい飲食店が数多く存在します。しかし、その魅力を十分に伝える機会を逸しているために、人材不足に苦しんでいる企業が多いのが現実です。「不安定」「ブラック」「大変」といったイメージが外食産業に根付いている結果、若者にとって不人気な職種とされています。大学でコミュニケーションの講義を行った際、「飲食店でアルバイトをしている人」と尋ねると、約半分の学生が手を挙げました。しかし、「就職活動で外食産業を目指している人」と聞くと、誰一人手を挙げないという状況がありました。飲食店の仕事を楽しんでいる学生でさえも、就職となると選びたくない。この事実の中に、解決すべき課題のヒントがあると感じています。 外食産業における働き方のOSをアップデートする必要性を強く感じています。労働集約型で成り立ってきた業界のため、人材を大切にする意識が薄いというのは否めません。一方、他の業界では「人材こそが資産」という発想から、年々働き手への待遇や意識が改善されています。外食産業でも「人を大切にする経営」を実践することで、飲食店での仕事に誇りを持ち、学生達が卒業後の進路として選ぶようになる未来を目指せると考えています。 当社のクライアント企業にも、旧来の外食産業の働き方や考え方をアップデートする必要性を感じている企業が多く存在します。彼らと共に外食産業全体に革新をもたらし、新しいスタンダードを築くことが、当社のミッションです。
家族を大切にする社風があるといいますが、その根底に流れる思いは?
私は、子供が生まれ、家を購入し、夫婦共働きという状況の中で独立・起業した経験から、「家族ファースト」を徹底しています。私にとって個人的な優先順位の最上位は「家族」であり、自分の夢を叶えることよりも、家族を幸せにすることを優先しています。ビジネスの本質は、クライアントを喜ばせることです。その意味では、最も身近な存在である家族を幸せにできない人が、クライアントを喜ばせることは難しいとさえ感じています。その考えから、当社では年に一度、従業員の家族を集めて一日を過ごす「大感謝祭」を2022年から開催しています。従業員が仕事を頑張れるのは家族の存在あってこそ。会社として従業員の家族に感謝を示し、今後も「家族ファースト」を実践する取り組みを続けていきたいと考えています。 私は共働きで子育て中の身でもあります。そのため、仕事と家庭の両立の大変さを日々実感しており、働き方に柔軟性を持たせることで、間接的に子育てをサポートできる体制を整えています。妻は現在も大手企業で活躍しており、家事・育児は基本的に半々で分担。料理や子供の送り迎えも担当しており、土日は家族サービスに全力を注いでいます。この経験を基に、仕事と家庭を両立できる環境づくりを推進していきたいと考えています。
仕事をする上で、大切にしていることは?
価値あるものを生み出すこと。それが私の仕事の核心です。お金とは価値の対価であると考えています。常に相手軸で物事を捉え、相手の期待を超えることを目指しています。ただし、相手の期待を超えるには、一辺倒な方法ではなく、まず相手がどのような期待を持っているのかを正確に理解することが必要です。スピード、質、量、どれを重視しているのかを把握し、その期待を上回る成果を提供することで、真の価値を生み出せると思っています。 また、私は個人的な人生のテーマとして「人に影響を与える存在になること」を掲げています。有名になりたい、人より目立ちたいということではなく、自分の言葉や行動によって誰かが「もう少し頑張ろう」と前向きに思えるような存在でありたいという意味です。このテーマは、私の経営者としての意思決定にも繋がっています。短期的な利益や効率を優先するのではなく、その経営判断が誰にとって意味があるのか、誰かを前向きにさせることができるのかを、しっかりと考えた上で決断するよう心掛けています。
