株式会社TOMIYO JOB

福岡市に本社を置く株式会社TOMIYO JOBは、福岡・鳥栖・佐賀・熊本・中津・宇都宮に支店を構え、九州を中心にメーカーの工場等で働くスタッフを派遣している人材紹介会社。即入居できるワンルームマンションの完備等、ワーカーが働きやすい職場づくりを目指して福利厚生を充実させているのが特徴である。人材派遣を始めて25年。九州で180社のメーカーにスタッフ650名を派遣している。

「会社設立から工場へのワーカー派遣を生業にしてきた会社が、現在のTOMIYO JOBのベース。ただ、人材派遣は景気に左右されやすい事業で、利益率が低いため売上高の割に経常利益が出ません。会社を安定的に成長させるには、事業の柱が他にも必要だと考え、2013年から経営の多角化を推し進めています」（代表取締役・綾部光希氏）。

2016年、ワーカーをサポートする目的で保育園を開園したのが、現在の富世ホールディングス（TOMIYO JOBの親会社に当たるホールディングス）の出発点となった。

『とみよ保育園』は、福岡県福岡市博多区、福岡県福岡市東区、福岡県糟屋郡、大分県中津市、佐賀県鳥栖市に、定員20名前後の小規模保育園が5園と定員180名の大規模保育園がある。

「当社の社員が安心して働けるために、保育園を自社で運営し、社員の子供も含めて預かっています。当初の目的は、自社の社員のための保育園運営でした。当時は、待機児童問題が深刻な時期で、『とみよ保育園』は政府が新たにスタートさせた『企業主導型保育園』の制度を活用して始まりました」（綾部氏）。

企業主導型保育園の運営に成功した富世ホールディングスは、グループ会社を通じて、保育コンサルティング事業も展開。企業主導型保育園の開園方法が分からない、保育士や園児を集めるノウハウがない企業にサポートする。

「富世ホールディングスの保育コンサルティング事業は、デザイン設計から、施工、開園申請、保育士・園児の確保、運営方針・保育計画の立案、Web戦略、そして監査まで一括で担当可能です。企業主導型保育園の制度は補助金もあるので、その辺りのコンサルティングも請け負います。さらに、保育園のフランチャイズも展開しています」（綾部氏）。

保育事業が成長したことで、富世ホールディングスの事業多角化は波に乗り、さらなるシナジーを生み出す事業が生み出された。その一つが、ICT事業だ。

富世ホールディングスが開発・運営する『famcloud（ファムクラウド）』は、企業主導型保育に特化したクラウドサービス。園児の登降園システムや職員出退勤システムとして活用でき、園児の記録や指導計画等を職員間で共有できる。保育園の運営に必要な多数の機能を搭載しており、ユーザーフレンドリーなインターフェイスで、職員が直感的に操作可能なサービスだ。

「保育コンサルティングで全国350施設以上の企業主導型保育園の開業をサポートし、自らも保育園を運営する富世ホールディングスならではのクラウドサービスです。業務管理システムに強いIT企業と、UIに強いデザイン会社の協力の下、保育士が使いやすいサービスを開発しました」（綾部氏）。

企業主導型保育事業は、助成金申請のための情報処理や資料作成に大変な手間と時間が必要。さらに書類作成の基となる記録業務は、保育士の負担となる。『famcloud』は、企業主導型保育の月次実績報告に必要なデータをまとめてCSVでダウンロードができる等、保育園と本部が離れている事業者でも、遠隔で管理・確認ができる。業務改善や軽減が可能となり、保育園の運営がスムーズになる。

保育園を利用する保護者にとっても、『famcloud』はメリットがある。

「保護者用アプリ『fam.』を活用すれば、行事や持参品、休園といった園からのお知らせを一覧で表示でき、登園降園のスケジュール管理や、急なスケジュール変更の通知もアプリで可能。保育園での子供の様子や食事内容がタイムラインで配信され、フォト機能で保育士が登録した写真を共有できます」（綾部氏）。

子供を預けられる保育園とママの仕事を同時に紹介する『シゴコト』は、働く女性を応援するためのサービス。保育園に子供を預けていないと仕事が探せない。しかし、仕事がないと保育園に子供を預けられない。そんな働くママをサポートする。

「日本がシュリンクしている現在、当社のサービスを提供することで、働く女性を応援したいと考えています。人材派遣と保育園運営を事業展開してきた富世ホールディングスだからこそ提供できるサービスです。母親が働いて世帯収入がアップすれば、子供の教育にも多くの予算を割けます。そうすれば第2子、第3子を持つ家庭が増え、少子化対策にも繋がり、日本の未来に貢献できます」（綾部氏）。

『シゴコト』のサービスをIT化した『園活日記』というWebサービスも計画中。それに合わせて、エンジニアチームを本格的に組織化する。

「これまで、ICT事業は外部ベンダー協力の下で開発を進めてきました。今回、新しいWebサービスを立ち上げるに当たり、自社エンジニアを増やして、内製化することを決定しました。プロジェクトマネージャーから開発エンジニアやデザイナーまで、10名前後の採用を予定しています」（綾部氏）。

富世ホールディングスには、エンジニアチームがない。デザイナーとエンジニアが合計3名いるが、Webサービスを内製化するには足りない。経験豊富なエンジニアとデザイナーを外部から迎え入れて、ICT事業の拡大を目指している。

「ママと子供を元気にするのが、富世ホールディングスの理念。とにかく世の中を良くしていきたい。そのために、これからもサービスを生み出していきます。エンジニアチームができれば、やりたいことをもっと沢山スピーディーに実現できます。コンセプトは『親との時間を作ろう！』。『園活日記』をタッチポイントにして、働く親とその子供を包括的にサポートしたいです。顧客に言われるままシステムを作るだけではなく、サービスや事業の創出に携わりたいという思いを持っているエンジニアに来てほしいです」（綾部氏）。

2020年、父から後を譲り受ける形で、綾部氏が社長に就任。組織をホールディングス化し、それぞれの事業を子会社に整理した。さらに、子会社や部門間の壁を取り払う目的で、オフィスを全面改装。屋内の壁を取り払ってワンフロアのオフィスに改造した。

「社員みんなで作った自慢のオフィスです。ほとんどを社員と一緒にハンドメイドしました。私もハンマーで壁を壊しました。改造後、オフィスの雰囲気が明るくなりました。音楽を流して、社員がリラックスした雰囲気で働けるようにしています。残業はゼロではありませんが、極力残業しないように、と社員には伝えています。仕事とプライベートのバランスが大事です。今回、エンジニア組織を作るに当たって、フレックス制やリモートワークの導入等、働き方もゼロから考える用意があります。新しく入ってくるエンジニアにも、組織作りに参加してほしいと思っています」（綾部氏）。

博多駅筑紫口から徒歩5分の好立地に自社ビルを持ち、収益を上げている事業が複数あり、経営も安定している富世ホールディングス、ならにTOMIYO JOB。敏腕ビジネスマンの2代目社長が見据える未来は、明るくて壮大だ。サービス開発にチャレンジしたいエンジニアには、ぜひチャレンジしてほしい。