株式会社アクト

建設業界を中心に、プロ仕様の工具に特化したリユース事業を手掛ける株式会社アクト。中古の工具を企業や職人から買い付け、店舗やECで販売している。2023年1月現在、直営12店舗のほか、フランチャイズ3店舗を展開している。

同社は、リユース業界に新たなスタンダードを先取りした一社でもある。それは、メンテナンスを加えること。一昔前のリユース業界では、買い付けた商品をそのまま販売するのが一般的だった。できるだけ手間を掛けず、早々に売り渡して利鞘を上げることが“常識”だったのである。しかし、同社はその“常識”に切り込んだ。代表取締役の伊藤啓介氏は、「私達が展開しているのは、CtoBtoCビジネス。この“B”に存在価値を出さなくては、企業成長はないと考えました」と言う。そこで、買い付けた商品を丁寧にメンテナンスし、摩耗した部品は取り替え、動作確認も実施。次のお客様が安心して使える状態にまで仕上げて販売している。元々、自動車部品の中古販売を手掛けていた同社は、メンテナンスに高い技術を持っていた。前のユーザーの痕跡を感じさせないクオリティーを目指しており、それがお客様に高い評価を得て、事業を成長させている。

その同社が今、力を入れているのが、事業のDX化である。特に集客の面で、デジタルマーケティングを推進していこうとしている。具体策の一つが、会員に対する集客施策の強化である。現在は会員カードによって顧客とリレーションを築いているが、今後は会員アプリへ移行していきたいとのこと。アプリにすることで、ダイレクトな情報提供が可能になり、よりアクティブな施策を打てると考えている。また、若い世代のお客様にリーチを拡げる狙いもある。「工具は高価なため、買い替えるのはベテランの職人が多いです。しかし、若い職人にもお得な情報をタイムリーに提供し、将来の伸びしろとして大事に育てていきたいと考えています」と伊藤氏は期待している。

デジタルマーケティングは、EC事業でのさらなる集客も目指している。元々は大手ECモールに出店していたが、「お客様が思い出す店名は、結局そのECモールの名前になるため、それでは囲い込みができない」と伊藤氏は考え、自社ECサイトをオープン。2020年6月にはリニューアルも実施し、売上が好調に伸びている。このECサイトへの流入をさらに拡大するため、新たなデジタル施策に挑みたいという。

マーケティングの部署は、現在、少数精鋭のメンバーで業務に当たっている。その一方で、業務範囲が多岐にわたるため、外部の協力会社に委託している業務やプロジェクトも多い。そのため、仕組み化できた施策があっても、社内にノウハウが蓄積されず、再現性の低さが課題となっている。これを解決するため、マーケティングの内製化を推し進めようとしている。今後は、マーケティング部門を増員し、組織力を強化していく。「ここで得られたノウハウを、資産として蓄えていきたいです」と伊藤氏は語る。

同社のマーケティング部門の歴史は浅く、デジタル領域はまだこれからといった部分がほとんど。まだセオリーもルールもない状況にある。その中で、試行錯誤し、共につくり上げていく刺激的な現場となっている。何より、リユース業界としてもデジタルの領域は未開拓とのこと。お客様も、最近までスマホではなくケータイを利用している人が多かった、というのが現場の実感だという。だからこそ今、デジタルマーケティングに一足早く着手すれば、業界をリードするチャンスが大いにある。他業界でデジタルマーケティングの経験がある方は、その転用で業界に新たな可能性を切り開くかもしれない。

新しい仲間に求めることは、積極的なコミュニケーションだという。特にマーケティング部門は、業務のアウトラインがない中、ゼロから作り上げる必要がある状態。雑談も含めて何でも意見を交わし合い、一緒に楽しく取り組んでいきたいという。また、マーケティングは実店舗を含め、様々な部署に影響を与える。そのため、部署の垣根を越えたやりとりも多い。実際の店舗に足を運び、スタッフと打ち合わせることや、マーケティング施策全体の話をエリアマネージャーと検討すること、買い取りを一括で受け付ける窓口と相談することも。様々なポジションの社員と会話する必要がある。その上でもコミュニケーションは重要なスキルとなるだろう。

なお、マーケティングのスキルや経験、実績があれば大歓迎だが、小売店の店長等を務め、店舗運営の改善施策を企画し、取り組んだ経験等も生かせるとのこと。その人の得意を発揮できるよう、柔軟に仲間として受け入れていく姿勢だ。

リユース業界の“常識”を壊し、今もDXで新たな地平に進もうとしている同社。激しく競争するハードな社風を思い浮かべるかもしれない。しかし、「業績の達成」に重きを置く一方、それと同じ比重で「人間関係の構築」を重視している。人材育成を担う上長にあたる社員には、心理学をベースとした指導法を研修等で教授。責める、叱責する、非難する等、人間関係を壊すような教え方ではなく、支援する、傾聴する等、信頼関係を築きながら育成していくスタイルをとっている。

例えば月1回、上長と1on1で実施する「チャレンジ面談」では、毎月の目標に対する達成度合いを評価しているが、基本的には「何が良かったのか？」という承認を主眼としている。このような面談を通じて、成長をコミットする上長との信頼関係を高め、社員の成長意欲へと繋げている。

また、指導者としてふさわしい人材が管理職に就けるよう、人事評価制度にも工夫がある。評価項目に、人間性を評価する情意項目が設けられており、キャリアアップにはその評価を満たしていることが絶対条件。それに加えて、管理職としてのスキル・能力が評価される。これにより、部下の考えを尊重し、思いやり、支えられる人材が、上長になれるように配慮されている。このため、社内の風通しは非常に良く、役職や年次に関係なくフラットに話せる。悩みがあれば誰もが相談に乗り、後押ししてくれる同社の温かさは、きっと心強いだろう。

さらに、自分の意見を発信すれば、チャレンジできるチャンスも多く、それを推奨するムードがある。日常業務の提案や改善はもちろんのこと、社内の横断的、先進的なプロジェクトに取り組む委員会にも、挙手制で参加することが可能。委員会から、新たな部署が誕生することもあり、マーケティングの部署もその一つである。自分の意志で、キャリアを広げられる環境は大きな魅力だと言える。

マーケティングに関しては、社外取締役のサポートもあるので、これから学びたいという方の期待にも応えられるという。
「いろいろなことに興味がある人が、それに沿って仕事を拡大できるやりがいがあります。安心とワクワクする気持ちで入社していただきたいです」（伊藤氏）。