デジタルデザインラボ株式会社

デジタルデザインラボ株式会社は、名古屋市に拠点を置き、3DCGを基盤としたデザイン開発やコンテンツ制作を担うデザイン会社だ。自動車メーカーをはじめとする各種工業製品メーカー、航空宇宙関連会社、エネルギー会社、プラントやインフラの建設を担う総合重機メーカー等と直接契約を結び、UI/UXデザイン開発、展示会・プレスリリース・研究開発報告用のコンテンツ制作、VR・AR・空間再現ディスプレイを活用した製品シミュレーション等、様々な業務を請け負っている。

同社は2011年5月、“デジタルとデザインで、人と機械の未来を描く”というミッションの下、株式会社スズオキデザインとして設立された。創業者は大手自動車メーカーのデザイン子会社で経験を積んだ3DCGデザイナー、代表取締役・鈴置崇真氏だ。独立前の鈴置氏は、車両開発におけるカラーリングやユーザーインターフェースの作成に携わる傍ら、スマートコミュニティ構想のビジュアライゼーション等に従事してきた。独立後も当時の案件を引き継ぎ、最新技術に対応しながら業務内容や取引先を拡張してきた。

「当社はプロダクトデザインという領域の中で、GUI・HMIといったユーザーインターフェースの制作案件に加え、ビジュアライゼーションの業務を担っています。CO2や温度、電気、化学反応等の目に見えないものを、CGをはじめとするデジタル技術を駆使して見えるようにする仕事です。広告宣伝を担うデザイン会社とは異なり、インハウスに近いポジションで、研究開発や試験研究といった領域の案件を中心に請け負っています」（鈴置氏）。

同社の強みは、圧倒的な顧客理解である。同社が手掛けている産業分野は、自動車、化学プラント、航空宇宙、エネルギー等、特殊な分野ばかり。そういった領域のクライアントが、研究開発を行う際に声がかかることが多いのは、これまでの経緯を逐一説明せずに済むからだ。

「私達は自動車の法規も理解していますし、各エネルギーの特徴も理解しています。クライアントが10年後の未来を表現したいという時に、これまでの歴史から説明していたのでは大変です。設計会社の場合、仕様書をくださいというところからスタートしますが、当社は、大まかな説明を受けただけで、3案ぐらいは提案できます。それこそがデザイナーの役割です」（鈴置氏）。

元々は鈴置氏の個人事務所的な性格が強かった。しかし年々、事業規模や業容が少しずつ拡大する一方、業界の変化にも対応する必要が出てきた。そこで2024年5月、より広い範囲でデジタル活用に取り組むために社名を現在のデジタルデザインラボへと変更。現在は、組織的なデザイン会社として発展するための体制づくりを行っているところだ。

近年、顧客ニーズの増加に伴い注力しているのは、AR/VR等、インタラクティブな動きのあるコンテンツ制作やプロトタイプの開発だ。技術の進歩とともに3DCGでイメージを具現化する以上のものが求められるようになってきた。同社も約10年前から、独学でUnityを習得したデザイナーがプログラムの発生する案件を引き受けてきたが、直近の2年間で市場が拡大し、社内のリソースだけでは追い付かなくなっている。

「例えば国際的なエキシビションに出展するためのユーザーインターフェイスや映像を、Unityを使って作成しました。また、CGで描いたプラントの中で、エネルギーがどのように動くかを見せるコンソール等を作成する等、デジタルツインの領域も増えています。クライアントの中でも、単なるモデリングでは満足できず、動いて当たり前といった認識が拡大しています」（鈴置氏）。

急激なニーズの拡大に対し、同社は外部パートナーを活用して対応しているが、クライアントからの要望には完全に応え切れていない。クライアント側も内製化を進めているが、追い付かずに困っている状況が続く。他に受け皿を探すにしても、同社と同等のクオリティーを出せるデザイン会社は見つからない。

こういった問題を解決し、クライアントのニーズを満たすため、同社は現在、Unity、Unreal Engineといったゲームエンジンを使いこなせるエンジニアの採用に力を入れている。

求めているのは、鈴置氏をはじめとするデザイナーが思い描くビジョンを具現化するエンジニアだ。ゲームのように複雑な動きは求められないが、デザインの意図を汲み取る感性は求められる。

同社が制作するクリエイティブやコンテンツで重要なことは、見る人の感情を動かすことだ。

「ビジュアリゼーションの目的は、シミュレーションの結果を正確に再現することだけではなく、見る人の感情に訴えかけて、“こういう未来になれば良いな”と思ってもらうことです。お客様の話を聞いて意図を汲み取り、どう見せるかを提案し、採択されたら具現化していく。商業デザイナーには理解力が求められます。同様にエンジニアにも、デザイナーが思い描く世界観を動きの中で再現する感性が求められます」（鈴置氏）。

同社のクライアントが構想し、デザイナー達によって描かれる世界観は、近未来を描いたSF作品を彷彿とさせる。鈴置氏自身、学生時代にSF作品に魅了されたことが3DCGデザイナーの道を進むきっかけとなった。鈴置氏のみならず、クライアントも似通った指向を持つ。架空のキャラクターを操作しながら物語を進めていくRPGゲームに熱中したことがあるようなエンジニアであれば、共通の価値観、指向性のもとで会話をし、アウトプットできるだろう。

現在、同社の社員数は8名。まずは数名のエンジニアを採用して基盤を固め、将来的には20名から30名の体制を目指している。

同社が目指しているのは国内製造業の国際競争力を高めることだ。

「私は、日本の製造業が国際競争力を失った一因は、UIやビジュアリゼーションの差だと考えています。世界中の製品品質が均一になってくれば、製品に対する消費者の評価基準は、サービス品質や使いやすさ、使い心地といったものに移ってきます。使いやすさの向上が国際競争力を回復させるためのカギです」（鈴置氏）。

設立以来掲げてきたミッションには、このような思いが込められている。

創業当時は、メインクライアントの拠点がある三河安城市からスタートしたが、デザイナーの採用をしやすくするために名古屋へ移転。マンションの一室からのスタートだったが、その後、社員数の増加に合わせ拡張移転を繰り返してきた。

現在地のオフィスには2023年に移転。モーションキャプチャスタジオや、360度カメラ、立体視ディスプレイ、3Dプリンター等の機材を揃え、最先端の制作環境を整えている。制作物の検証や納品時は客先に出向く必要があるが、それ以外は、ほぼ自社内で作業が完結できる環境である。

「当社の仕事は、未来の社会を構想し、実現していく過程に関わる仕事です。社会的に影響力の大きな案件も多く、やりがいもあります。今後はデジタルツインをメインに、現実とバーチャルの掛け算で、日本の製造業を未来へと導いていきたいと考えています。新しい技術に触れることが好きな方には最適な環境を提供できるはずです」（鈴置氏）。

鈴置氏の個人事務所的な位置付けから、よりパブリックな存在として発展する方針に転換したばかりの同社。人数も10名に満たないため大企業並みの制度は確立されていない。しかし、開発環境の整備には積極的な投資を行うことに加え、教材購入やセミナーへの参加にかかる費用は会社が負担する等、社員一人ひとりの自学自習は可能な限り支える方針だ。

また、案件の進め方は、特定のメンバーに負担がかからないよう分業制を採っている。残業時間はほとんどなく、ライフワークバランスも取りやすい環境である。

「当社が求めているのは経験者層です。ただし実務経験があり、自学自習ができる方、新しい技術に関心を持ち積極的に挑戦できる方、成長意欲のある方であれば、経験年数や現在のスキルは問いません。UnityやUnreal Engineの経験を生かし、我々と共に未来のものづくりをアップデートしてくださるエンジニアの応募をお待ちしています」（鈴置氏）。

勤務地は名古屋本社、東京事務所のいずれか。コロナ禍で整備したリモートワーク環境を維持するため、週1回設けたリモートワーク日以外、出社して業務を行う。穏やかな雰囲気の中、仕事の面白さを実感しながら働ける環境が同社の魅力である。