4つの事業部門を擁し、ハイレベルで特色のある受託開発や自社製品開発に取り組む
システム開発会社の株式会社メビウス。4つの事業部門を擁し、ハイレベルかつ特色のある受託開発や自社製品開発を手がけている会社だ。
「1つの領域しか手がけていないと経営が景況に左右されてしまいますので、複数の領域を手がけるようにしています」と代表取締役の坂本淳氏は説明する。
〜事業内容〜
■第一事業部
●BIグループ
新たなテーマに取り組むために設けられた。目下、キャリア向け大規模通信システムとAI領域をカバー。前者は、大手SIerにて長年当該領域で活躍したメンバーが入社して担当。後者では、日本のAI研究の第一人者であるDeepZenGoプロジェクト代表の加藤英樹氏を“AI顧問”に招き、力を入れている。
●DTグループ
Web系・オープン系を中心に、業種・業界を問わず広範な分野で多様な業務システム、情報システムの開発を行う。20名のエンジニアがAIによる音声認識システム開発プロジェクトへ参画するなど、大手企業との取引が多い。
■第二事業部
●NSグループ
通信や認証などの基礎技術を応用したプロジェクトを手がける。通信キャリアの認証サブシステムやメーカーの評価検証システム、HD画像配信システムなどの比較的大規模なシステム開発から、組込向けファームウェア開発まで、通信・制御分野を幅広くカバー。
●SSグループ
世界No.1の計測機器メーカーである米テクトロニクス社の日本法人OBが「日本一の計測ソリューションをつくろう!」と同社に集結してできた部門。取引先には、宇宙航空研究開発機構、高エネルギー加速器研究開発機構、NHK放送技術研究所、日立製作所中央研究所など大規模な研究組織が並ぶ。
〜自社製品〜
●IoTソリューション「STRIX」
M2M/IoT/IoEという業界のトレンド、OneM2Mなどの国際標準規格化、それらの背景を踏まえた上で開発したIoT/M2Mソリューション。大手建設機械メーカで大規模M2Mを手がけたメンバーが担当し、産業機械メーカや建設機械メーカ等で5年以上の運用実績がある。
●「e-Document Worker」
スキャンしたドキュメントに、電子的に手書きで追記できるWebアプリケーション。保存したドキュメントはデータベースで管理でき、複数の人での共有が可能。
なお、受託開発や自社製品開発の品質向上のために会社設立直後から品質保証部を設けて専任者を置いている点も特長的だ。
AI活用のエンジニアリングを手がける“AIer”を目指す
同社の設立は、2000年12月。創業者の坂本氏はテクトロニクス社日本法人で10年間、ハードウェアやファームウェアの開発を手がけた後、IT領域に転じて複数のシステム開発会社を渡り歩く。その過程で、バブル崩壊による倒産も経験。「メンバーを連れて別の会社に加わり、取引先の仕事は完遂させた。このことで信頼関係を深め、今日まで取り引きを継続させている」と坂本氏は述懐する。
そして、ソフトウェア業界を経験し、SESや派遣で収益を得ているところが非常に多いことに問題意識を感じた。
「SESや派遣では、エンジニアが40歳以上ともなると仕事がもらいにくくなります。年齢を重ねるにしたがって給料も減ってしまう。仕方なく退職して違う道に行ってしまうという構造がありました。それはおかしい。私は、エンジニアが生涯働ける環境が必要だと強く思い、当社を設立したのです。『社長が「死ぬまで働け」と言うブラック企業』と冗談を言う社員がいますが(笑)、そうではなく『死ぬまで働けるホワイト企業』と胸を張って言えます」(坂本氏)
このため、前述のとおり業務内容に特色を持たせ、目下自社に持ち帰っての受託開発や自社製品開発の比率を高めようとしている。60歳になってプログラムが書けなくなっても、豊富な経験を生かして自社製品の技術営業ができるというわけだ。
「7年前からIoTやAIに本格的に取り組み始めていますが、今後はさらに力を入れ、当社としては“AIer”となることを目指していきます」(坂本氏)
“AIer”とは、“SIer”をもじった造語。AIが進展し、すでにプログラミングはAIが自らが学習してこなしてしまう時代が来ている。今後、単なるプログラマーはさほど必要とされなくなる可能性が大きい。
「そこで、AIをどのように活用すればいいかという、より上流でのエンジニアリングが求められるようになると思います。“AIer”とは、そうした業務を手がけるエンジニア集団のイメージです」(坂本氏)
一方、IoTはあらゆる領域に入り込み、ウェアラブルなセンサーによってデータを収集する分散型システムがますます広がりを見せる。同社の得意領域としてビジネスの柱としていく構えだ。
2000年12月に創業して以来、実に20年弱、同社を経営し、現在の規模まで拡大させてきた。
互いに影響を与え合いながらいい方向に進んでいく、自律的でまとまりのある組織
2020年4月現在、社員数は118名。“生涯エンジニア集団”を指向する会社だけあって、平均年齢は43歳とやや高め。その運営ポリシーは「メンバーが自分たちで考え、お互いに影響を与え合いながらいい方向に進んでいく、自律的でまとまりのある組織」(坂本氏)だ。
「私もそうですが、そもそもエンジニアは束縛されるのを嫌います。ですから、基本的に当社は自己裁量に任せます。ただし、最近は自由になり過ぎたきらいがあるので、要所をグリップできる“猛獣使い”を求めています(笑)」と坂本氏。例えば、開発スケジュールも本人が計画し、やりたいペースでできる環境がある。もちろん、業績評価は成果によって判断されるが、上から押し付けるような環境は皆無だ。
坂本氏は、神奈川県情報サービス産業協会の女性活躍ダイバーシティ委員会の理事に10年前から就任していることもあり、ワークライフ・バランスの推進にも力を入れている。目下、フレックスタイムや時短勤務制度が導入され、在宅勤務制度も検討されているという。
風土づくりにおいては、“メビウスの野望”と呼ぶ、坂本氏によるビジョン発表を創立直後から行ってきた。
「これからこんな技術をやっていくから勉強してほしいとか、今年は何名採用してこんな組織にする、などといった事業ビジョンを月例会などで共有してきました。最近はややトーンダウンし堅い内容になっていましたので、今年からまた以前のように夢を語る機会にしていきます」(坂本氏)
社内の親睦を深める機会としては、毎年4~5名を迎える新卒者の歓迎パーティーや、家族も招いての夏のBBQ、忘年会が3大イベント(すべて自由参加)。18年の夏は“アジサバBBQ”として、社員が釣った魚を役員が包丁で捌き、その場で焼いて楽しむというイベントを開催した。忘年会は、毎年恒例で近くのダーツバーを借り切り、協力会社も招いてダーツやり放題・飲み放題で楽しむというフランクな環境だ。
そんな同社が求める人材像について、坂本氏は次のように話す。
「エンジニアは、尖った技術を持つと殺伐とした雰囲気になりがちです。そうではなく、“歌って踊れる”エンジニアであってほしい。そこまでいかなくても、思いやりや人間味のある方であってほしいです。また、人の言うことに盲従するのでなく、自分の頭で多面的に考え、納得できることをやるような“天邪鬼”な面もほしいです。素直さも大切ですが、素直過ぎないことが大切です。そして、エンジニアらしく、目の前のことにとことん打ち込める人。疑問は決して放置せず、すぐ解決して自分のモノにする姿勢がほしいです」
高度な技術力と自由な環境が備わり、かつ生涯働ける“エンジニア天国”のような同社。見逃せない存在といえる。