コンピュータに興味を持ったきっかけは?
私は子供の頃から好奇心が旺盛で、百科事典が友達だったんです。 祖母が教員をしていたことから日本地図を持ってきて、子供の私に解説するような人で…。それを理解するためだったり、興味深く感じたことを調べるのは大好きだったのですが、暗記中心のテストのための勉強にはあまり興味が持てなかったんですよね。大学も「とにかく富山から出たい」という気持ちで、受かった三重の大学に入学。大学生になってからも、ほとんど勉強らしい勉強をしなかったんです。ただ三重は富山に比べるととにかく暑くて、学内の涼しい場所にいたかった。工学部で涼しい部屋は二つしかなくて、電子顕微鏡室とコンピュータルームのみ。涼しさ目当てでコンピュータルームに入り浸っているうちに「コンピュータって面白いものだな」と思うようになりました。当時はまだマイクロプロセッサーが出たばかりの頃でしたが、もともと好奇心旺盛だった私の心を強く捉えましたね。それが4年生の時。コンピュータへの興味をきっかけに、ようやく勉強する気になったんです(笑)。
現在、英国企業の現地法人を経営されているわけですが、イギリスと関わることになった経緯を教えてください。
大学を卒業すると地元へUターンという形で、富山の工作機械メーカーに就職しました。エンジニアとして勤務していましたが、同時に海外との新規事業開拓や技術提携のようなことも担当していたんです。ヨーロッパの展示会などにも足を運んでいましたよ。ある時、同僚から「イギリスのある大学ですごい超精密機械の制御装置を開発している」という話を聞いて、その大学に「訪問させてください」と手紙を書きました。念願かなって訪問が実現したのは、それから半年後。現地での収穫は制御装置だけではなく、今、弊社で扱っている「AlphaCAM」ともその時に出会いました。その大学への訪問がなければ、きっとまったく違った運命をたどっていたんですね。
独立して事業を興そうとした時は、どんな思いを抱いていましたか?
私が独立した頃は、金型の分野ではCAD/CAMが普及していましたが、部品加工分野ではまだあまり導入が進んでいなくて、手作業でプログラムを造っている人も多かったんです。自分が機械畑のエンジニアだったこともあって、そういった現場で活用されるCAD/CAMを開発し届けていきたいという思いがありましたね。今もその思いが変わってはいませんが、より広い視野で見るようになりました。PlanitグループのCAM製品は、金型と工作機械だけではなく、家具やインテリア、シートメタル、木工などあらゆる分野で展開されています。それぞれの分野で製造に携わる人々が無数にいるわけで、製造業に携わるあらゆる人々に対して「コンピュータの力をものづくりに役立ててもらえればいいな」と考えています。
代理店ではなくて、現地法人であることのメリットや強みは?
英国に比べて日本のユーザーは、要望が多い傾向にあるようです。クライアントから「もっとこうしてほしい」「こんな機能があれば導入する」といったリクエストを頂いても、代理店ならばそれを取り入れることは難しいですよね。なぜなら代理店はあくまで決められた製品を、メーカーとの契約のもとに取り扱っているだけなので、クライアントの選択肢は「導入するかしないか」の二択になってしまいます。ところが現地法人である弊社は、英国本社のメーカーは同じ組織であり、いわば仲間なんですよ。「日本ではこういうマーケットがあるから、こういう機能をつければニーズが高まる」といった販売戦略に関するフィードバックをして、開発陣とのキャッチボールでよりよい製品へと育てていけるんです。これは製品を扱っているだけの代理店にはできない弊社の強みであり、大きなメリットだと思いますね。
お休みの日はどう過ごされていますか?
土曜日は妻と一緒にテニスをし、日曜日は妻と水泳をしています。テニスはゴルフほどお金がかからないし気軽に楽しめるのがいいですね。妻は自分では「運動音痴」と言っていたのですが、テニスも水泳も最初はできなかったのに、教えたらとてもスジがよくて。私が仕事している間に、テニスや水泳ばかりしていたようで、今ではどちらも私よりうまいですね(笑)。将来は仕事を引退してハワイに住みたいという夢があるので、その準備も兼ねてるようなものですよ。
読書が趣味とのことですが、お気に入りの本は?
新幹線で往復4時間かかる名古屋と富山の拠点を行き来する生活なので、移動中を読書タイムにしています。週に厚めの本を含めて3冊は読みますよ。ビジネス本や啓蒙書はあまり好きではないので、それほど読みません。一番好きなのは海外の推理小説です。中学の頃からミステリファンでしたから。最近は英国や欧州の歴史物や宗教物,ノンフィクション、数学や科学をテーマにした本にも凝っています。発掘されたアルキメデスの写本に関する分析について書かれた本なども面白かったですよ。やはり知的好奇心が刺激される本を好んでいますね。