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インタビュー画像代表取締役 CEO 阿久津 岳生氏 JAXAで研究に携わった連続起業家。不動産・建築分野で計8社を起業し、ホールディングス化やM&Aを経験。都市計画・経営学・宇宙科学を大学院で研究し、2020年からJAXA宇宙科学研究所(総研大)に所属。研究室の恩師や仲間と株式会社WHEREを創業し、衛星データとAIを活用した不動産仕入れ支援プラットフォーム『WHERE』を開発。代表取締役として、地球の不動産市場の変革と、将来の火星における不動産探索を目指している。

不動産・建築分野で8社を起業し、3つの大学院でも学ばれています。なぜ、ビジネスを続けながらアカデミアな世界で学びつづけるのでしょうか?

ビジネスを進める中で、自分の知識や知見が足りないと感じるたびに、新たな学びを重ねてきました。 私にとって、学ぶこと自体が目的ではありません。ビジネスの現場で見つけた課題を、アカデミアの知見によって突破する。そのために、大学院で研究を続けてきました。 最初に『都市計画』を学び、その知識を生かして不動産会社を起業しました。事業を進める中で、建築の知識も必要だと感じ、事業領域を広げ、ホールディングス化やM&Aにも挑戦しました。 しかし、会社が成長するにつれ、今度は経営という新たな壁に直面しました。そこで、『経営学』を体系的に学ぶため大学院へ進学しました。 大学院で得た知見をビジネスに持ち帰ると、それまで見えていなかった課題が見えるようになり、会社は再び成長する。その繰り返しが、自分の経営スタイルになっていきました。 私はビジネスを通じて世界を変えたいと思って起業しました。しかし、目の前の仕事を続けているうちに、気付けば普通の不動産会社になっていたんです。会社は成長している。でも、世界どころか、日本も、当時事業をしていた福岡すら変えられていない。自分が掲げた目標と、実際にやっている仕事の距離を認めざるを得ませんでした。 社員には常々、「成長するためには、一つ上の視座を持たなくてはいけない」と話していました。その言葉を自分に向けた時、「自分は成長しているのか」と問い直したんです。世界の一つ上にある視座は何か。そこで浮かんだのが『宇宙』でした。

不動産業界から宇宙分野へ移るのは、大きな転換だったと思います。どのように研究の世界へ入ったのでしょうか?

2019年頃、宇宙業界の方々へ会いに行きました。 そこで実際に言われたのは、「お前、不動産屋の親父だろ。怪しいな」という言葉でした。外から話を聞き、仲間に入れてもらおうとしても、なかなか受け入れてもらえない。それなら、その中に飛び込むしかない!と考え2020年からJAXA宇宙科学研究所の中にある大学院に入学し研究することになりました。 入ってみると、不動産業界とは本当に別世界でした。不動産の現場では「物件をいくらで仕入れ」「どう売るか」というお金の話や極めて実務的な会話が中心です。研究室では、ホワイトボードに物理の公式を書きながら、研究者の方々が楽しそうに議論している。最初、私には何を話しているのかも、なぜそれが面白いのかも分かりませんでした。 そこで気づいたのは、研究者と同じ土俵で競争する必要はないということでした。 宇宙科学の知識では、研究者には到底かないません。一方で、自分にはビジネスをつくり、顧客を見つけ、技術を社会実装し、お金が動く仕組みへと育ててきた経験があります。研究者が技術の可能性を深く追究するなら、私はその技術が社会のどこで必要とされ、どのような価値を生み出せるのかを考える。自分の弱みを補うことよりも、それぞれ異なる強みを持つ人たちをつなぎ、新たな価値を生み出す。そのことこそが、自分にしか果たせない役割なのだと実感しました。 宇宙業界へ入ったことで得た一番大きなものは、知識そのものより、自分の立ち位置です。専門家になることではなく、専門家だけでは見つけにくい事業の入口を見つける。それが、私が宇宙の世界で担う役割だと考えています。

プロダクト『WHERE』は、どのように生まれたのでしょうか?

『WHERE』の前に、宇宙データやオープンデータを使って、一人ひとりに合った「その場所の住みやすさ」を可視化するサービスを作っていました。ビジネスコンテストへ出すと賞は取れる。でも、「あったらいいね」で終わり、お客様がお金を払うサービスにはなりませんでした。自己資金を1,000万円以上投じましたがビジネスとして成立させられませんでした。面白いと言ってもらえることと、必要だから対価を払ってもらえることは違います。評価される一方で、資金は減っていく。その現実に向き合わなければなりませんでした。 そんな時に研究室で、月の衛星データからクレーターをAIで解析する研究に出会いました。この技術を地球へ応用すれば、不動産取引に繋がりやすい『空き地』や『駐車場』を自動で見つけられるのではないか。私自身、不動産会社を経営していた頃に、街を歩いて候補地を探し、所有者を調べる「物上げ」の大変さと価値を知っていたため、研究を見た瞬間に事業の形が浮かびました。研究室の仲間に相談すると、1週間でプロトタイプができ、本当にAIが候補地を見つけました。それまでのビジネスモデルを全て捨て、『WHERE』へ懸けることにしました。 当時は手元の資金もほとんどなかったので、完成度を高める前に、ユーザーになりそうな7社へ連絡しました。全て商談に繋がり、うち2社から月額約50万円で受注できました。賞ではなく、お客様が対価を払ってくれたことで、この課題は私だけのものではなく、事業として解決する価値があると確信しました。

それまで築いてきた会社を離れ、株式会社WHEREへ集中する際には、どのような決断があったのでしょうか?

会社を売却し、その資金で次の事業を始めるのは、スタートアップでは一つのセオリーだと思います。私自身、ホールディングス化やM&Aも経験してきました。経営者視点だけで見れば、事業を売って得た資金を次へ回すのは合理的判断です。 しかし、以前の会社では理念経営を続け、その思いに共感したメンバーが集まってくれていました。創業した時から「いつか会社を売る」と伝えていたわけでもありません。新しいオーナーの下で理念が変わり、それまで一緒に働いてきた仲間が「自分達の時間は何だったのか」と感じるような形にはしたくなかった。私には、仲間を裏切るように思えたんです。 そこで、自分は経営から退き、経営を会社を支えてきたメンバーへ譲りました。以前の会社を売却して資金を得る道を選ばなかったため、最初は手元資金だけで乏しい状態から始まりました。研究室の仲間とプロトタイプを作り、まず自分で売りに行く。既に会社を何社も経営してきた後で、またゼロからのスタートです。 以前の会社に残りながら新規事業を試す方が、安全で楽だったと思います。でも、それでは自分が本当に懸けたことにならない。当社には、それまで築いたものを手放してでも向き合いたい課題がありました。 その選択の先で、プロダクト『WHERE』はPMFを果たしました。2025年春にはシリーズAラウンドで5.5億円を調達し、同年冬には4.6億円のデットファイナンスを実施。創業以来の累計調達額は約11.1億円に達しています。過去の成功を守るより、もう一度、自分が世界を変えられると思う事業へ進む。その決断が、現在の当社に繋がっています。

仕事をする上で、大切にしていることは?

私達が掲げているスピリットは、「『おっ!』をつくる」です。人が驚いたり、喜んだりする瞬間を、世界へ届けたいと思っています。 その原点の一つは、子供の頃の母との経験です。通知表で音楽が1だった時、怒られると思って見せたら、「1から5まで全部そろっていて、バラエティーに富んでいるね」と言われました。欠点だと思っていたものが、視点を変えると面白さになる。その言葉に、私自身が驚かされました。 中学生の時には、「学校を180度変える」と言って、全校生徒の前で逆立ちしながら生徒会の演説をしました。みんなが「おっ!」と反応し、当選できた。人は、見たことのない視点に出会うと動く。その感覚は、今の事業にも繋がっています。 会社づくりでは、アメリカのラスベガスにある靴のネット通販会社「Zappos(ザッポス)」からも大きな影響を受けました。カスタマーサービスの“神対応”と、他社が簡単には真似できない独自の企業文化で注目を集め、後にAmazonが約12億ドル規模で買収した会社です。私は以前から「『おっ!』をつくる」という考えを掲げていましたが、Zapposは顧客や社員へ「WOW」を届けることを、日々の行動にまで徹底していたんです。 その企業カルチャーを学びたいと思い、訪問を申し込みました。すると、スタッフが空港まで迎えに来てくれ、移動中も私の家族や名前の由来まで聞いてくる。社内にはマッサージチェアが並ぶ休憩室や、音楽とミラーボールのある会議室までありました。社員一人ひとりが「ワオ」を届けることに本気で取り組んでいたんです。理念は掲げるだけでは文化にならない。日々の行動まで徹底して、初めて相手に伝わるのだと学びました。

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