株式会社Neautech

株式会社Neautech（ニューテック）は、皮膚治療に特化したオンライン診療サービスを展開するスタートアップだ。ニキビやシミ、くすみといった肌の悩みを医療で解決するための診察・治療を、完全オンラインで提供している。

同社が展開するオンライン完結型の美肌治療サービス『ANS.（アンス）』では、シミ・肝斑・ニキビ・毛穴・皮脂・くすみといった肌悩みを抱える人が、自宅で診療を受けられる。拠点クリニックに在籍する医師がチャットで診断を行い、その結果に基づいて処方箋を発行。治療に必要な薬が自宅に届く仕組みだ。

「チャット問診は予約不要で24時間受付可能です。医師が患者さんそれぞれの状況に最適な治療プランを考え、診察の上で処方された薬が最短翌日に自宅ポストへ届きます。サプリメントや市販薬とは違い、医療機関で医師の診断の下でしか処方できない医療用医薬品は、高い効果が期待できます。ただ、通院となると忙しい人にとってハードルが上がり、治療の継続を断念してしまうケースも少なくありません」（代表取締役社長・水本明宏氏）。

肌の改善には最低でも半年はかかるといわれている。医師の診療を継続し、薬を使って肌をケアし続けることで改善が期待できるが、長期間の治療にはモチベーションの維持が欠かせない。『ANS.』は患者の肌に改善が見られるまで伴走し、継続を支えるためのサポートを提供する設計になっている。

「患者さんにスマホで肌写真を撮影して提出いただく仕組みを整えており、2025年10月には、AIが『小さな変化』を見つけて応援メッセージを届けることで治療継続を後押しする『AIスキンちゃん』という新機能を追加しました。医師の診断に加えて、カスタマーサポートメンバーが治療やセルフケアの疑問を気軽に相談できる『HADA相談室』も運営しており、医学的なサポートだけでなく、美容の観点からも患者さんを支える体制を整えています」（水本氏）。

治療継続を重視したCX（顧客体験）を構築し、肌治療で確かな成果を届けることにこだわってきた結果、『ANS.』はサービス開始から約1年半となる2025年8月時点で、診察件数26万件、継続率94%、治療満足度97%という高い実績を達成した。

前年比300%の成長を実現しているオンライン美肌治療サービス『ANS.』を展開する同社は、2025年10月にシリーズBラウンドで第三者割当増資と銀行融資を実施し、総額11.2億円の資金調達を行った。デッドファイナンスを含む累計調達額は約21.35億円に達した。

パナソニックがSBIインベストメントと共同運営する「パナソニックくらしビジョナリーファンド」とは、2024年2月の資本提携から関係を築いており、『AIスキンちゃん』はパナソニックCVC推進室とNeautechが互いの技術と知見を持ち寄って共同開発したものだ。

「パナソニックは、ビューティー・ヘルスケア領域において家電製品を通じ、長年にわたり多くの人の美容や健康の悩みに向き合ってきた企業です。そして、これまでのナレッジや技術力を生かし、画像解析技術、センシング技術、データ分析技術の研究等を推進しています。さらに、くらしに関わる国内外の有望なスタートアップへの投資を通じ、強固な関係に基づいたオープンイノベーションの取り組みも強化しています。パナソニックと共同で研究・開発を進め、『続けられる』を多面的に支えるサービスを開発し、肌だけでなく健康全般を支える“AIヘルスパートナー”として、ユーザーの長期的な美容と健康の伴走者を目指します」（水本氏）。

同社のオンライン美肌治療サービス『ANS.』という名称は、英語の「Answer」に由来する。「肌の悩みに答えを」というコンセプトのもと、美容医療の領域で正しいエビデンスに基づいた医療と美容を提供している。

「医療と美容の境界は曖昧で、エビデンスの乏しいサービスや商品が溢れています。そんな中で、当社は専門医の監修の下でサービスを構築し、肌のトラブルに悩む人達に美容医療を提供したいと考えています。オンライン診療はその取り組みの一環であり、そのほかにも自社ブランドのドクターズコスメを開発・販売しています」（水本氏）。

『ANS.』の監修医が手掛けるプライベートブランドでは、医学的エビデンスとユーザーの声を掛け合わせ、肌治療プログラムにおける効果の最大化と副作用の最小化を追求し、基礎化粧品やサプリメントを開発している。さらに、新たな取り組みも加速している。

「2025年11月、自分を大切にできる食事を届けるサービス『GREEN SPOON』とのコラボレーションで野菜スープセットを開発しました。『インナーケアもスキンケアの一部』という共通の思いから、『内側から美しさを支える食習慣』を提案するコラボスープセットが誕生しました。このコラボを通じて、『食べながら自分を整える』という新しいセルフケア習慣を提案していきます」（水本氏）。

オンライン美肌治療サービスを中心に美容医療の領域でサービスを展開している同社は、「医療とテクノロジーで自分をもっと好きになれる社会へ」をパーパスに掲げ、「医療・ヘルスケア体験を変革する」をミッションとしている。

オンライン診療は2016年頃から専用システムが次々と開発され、2020年のコロナ禍をきっかけにオンライン診療へ取り組む医療機関が一気に増加し、一般にも浸透していった。しかし、医療DXは遅々として進まず、オンライン診療の普及が医療DXを加速させると同社では考えている。

「医療分野においてもDXの必要性は常に議論されており、特に糖尿病や高血圧といった慢性疾患、あるいはアレルギー等の体質改善にはオンライン治療が適していると考えています。ただ、業界の慣習や構造的な問題もあって、保険診療ではオンライン化がまだ難しいとされており、自由診療の比率が高い美容医療に活路を見出しています。当社では、テクノロジーの力で様々な疾患を治療継続できる仕組みや、医師とのコミュニケーションがより密接に行えるシステムの開発を進めています」（水本氏）。

オンライン美肌治療サービス『ANS.』が順調に成長し、シリーズBラウンドの資金調達も完了した同社は、組織拡大フェーズに入った。それに合わせて採用強化を進め、エンジニア、データサイエンティスト、PM/PdM、UI/UXデザイナー、カスタマーエクスペリエンス等、幅広い職種で人材を募集している。

「現在、社員は約40名で、そのうち女性が約9割の会社です。週3出社・週2リモートの柔軟な働き方を用意し、ライフイベントを迎えた社員でも無理なく働ける組織設計を目指しています。本社オフィスを新宿へ移転する計画も進めており、働きやすさの追求も積極的に進めていきたいと考えています。平均年齢が39歳と比較的大人なスタートアップなので、幅広い年齢層の人材が馴染める会社です」（水本氏）。

同社では、大切にしている価値観として次の五つのバリューを掲げている。

•Do the Right things：世の中に正しいことをする
•Fail Smart Grow Fast：挑戦を称賛し最速で成長する
•Take Ownership：圧倒的当事者意識でやり遂げる
•Keep Aspirations High：志高く未来を創造する
•Innovate New Chemistry：お互いの違いを力に変える

中でも「Do the Right things」は創業時から大切にしてきた価値観であり、「いい人」が多い同社のカルチャーを形作る土台になっていると水本氏は語る。

「医療・ヘルスケア体験を変革するというミッションを実現するには、営利主義に陥ることなく、医療の新しい形を考えて提案していく駆動力が必要です。そのためには、正しい行いに対する共通認識がとても重要だと思っています。美容医療を便利にすることで、自分をもっと好きになる人が溢れる社会をつくりたい。メンバー全員が本気でそう願っている会社です」（水本氏）。