BoostDraftが誕生した背景について教えてください。
BoostDraftは、私が弁護士として働く中で実感した課題を起点に生まれたサービスです。 新卒で西村あさひ法律事務所に入所した当初は、優秀な同僚たちとともに顧客の本質的な課題解決に取り組めると期待に胸を膨らませていました。ところが実際に現場で待っていたのは、誤字脱字のチェックやインデントの調整、表記ゆれの確認といった「誰にでもできる」単純作業ばかりでした。 こうした単純作業に専門知識を持つ弁護士が多くの時間を割いている。その事実に当時の私は大きな衝撃を受け、「誰かこの状況を打開してくれないか」と強く考えるようになりました。 そして2010年代後半にリーガルテックが注目され始め、「これで自分の課題も解決できるかもしれない」と期待しました。しかし登場したサービスはどれも優秀でありながら、私が求めていた「法的文書作成に潜むムダな作業を排除する」ものではなかったのです。 「誰も作らないなら自分で作るしかない」と思い、スタンフォードのMBAに進学しました。そこでアメリカのMITに留学していた現BoostDraftのCEO・藤井と出会います。彼はエンジニアとしてのバックグラウンドを持ち、「ソフトウェアエンジニアが使うツールの考え方を法律業界にも応用できるかもしれない」と画期的なアイデアを提案してくれたのです。 それがBoostDraft誕生の出発点になりました。
プロダクトはどのように広まっていったのでしょう?
最初は周囲の知人にプロダクトのコンセプトを紹介することから始め、少しずつ口コミベースで広がっていきました。 BoostDraftが取り組む課題は、弁護士や法務部門のほとんどの方が実感しているものです。 私が所属する法律事務所だけでなく、他事務所や一般企業の知人も「法務業界は法的文書の作業が非効率だ」と口をそろえて言っており、弁護士・法務の広い範囲で共通する根深い課題だと確信していました。 そこで周囲の知人に、BoostDraftの理念である「法的文書関連業務の無駄を解消するサービス」を説明すると、非常に強い共感を得ることができました。中にはBoostDraftのファンとなり、社内で導入を推進したり、他社に紹介してくださる方もいました。契約先が増えるにつれて、弁護士・法務担当者の間で口コミが広まり、一気に導入が進んでいったのです。 その結果、現在では五大法律事務所を含む数百社以上に導入いただいています。
今後、BoostDraftをどのように発展させていきたいとお考えですか?
これまで私たちは「法的文書に潜む単純作業を取り除く」ことに注力してきました。これは創業当初からの軸であり、これからも変わることはありません。そのうえで、契約書にとどまらず、取締役会や株主総会の議事録、社内規程、有価証券報告書といった幅広い文書に取り組むことで、さらに大きな価値を提供できると考えています。 一方で、リーガルテック業界全体も次のフェーズに入っています。単なる導入の先に、「本当に成果につながっているのか」という視点が問われています。BoostDraftとしては、ユーザーが効果を実感できるサービスであり続けるために、今後も地に足のついた改善を積み重ねていきたいと思います。 そして、その積み重ねの先に目指したいのは、「専門家の価値を最大化する」という原点です。弁護士や企業法務に限らず、高度な専門性を持つプロフェッショナルが能力を存分に発揮できる環境をつくること。これが社会全体の生産性を底上げすることにつながり、BoostDraftの存在意義そのものだと考えています。 これからも、その実現に向けて歩みを進めていきたいです。