貴社がテクマトリックスの傘下に入った経緯を教えてください。
私がテクマトリックスに勤務していた頃から、「カサレアルのエンジニアは非常に優秀でポテンシャルが高い」と評価されていました。初めて当社のオフィスを訪れた際、壁一面に並べられた5台スチールラックに技術書がぎっしり詰まっているのを見て、勉強熱心さに圧倒されたことを覚えています。また、Javaのユーザーグループ等の社外の技術コミュニティに積極的に参加し、そこで学んだことを発表する等、相互に技術を学び合う文化が根付いていました。 このような背景から、テクマトリックス傘下に入ることで、エンジニア一人ひとりが成長し、活躍の場を広げられる会社にしたいと考えたのです。当時メイン事業だったSESではそうした機会に恵まれないのでは…と感じていたため、プライム案件中心に変えようと思いました。当初は会社が軌道に乗るまで関わるつもりでしたが、メンバーと働くことの面白さに惹かれ、気付けば15年以上経営を続けています。
社長に就任後、どのような取り組みをされましたか。
最初に、社員一人ひとりが何をやりたいのかを知るため、全員と1対1でヒアリングを行いました。その結果、多くの社員がプライム案件や全体が見える仕事、自分が作ったものが確実にお客様のためになっていると実感できる仕事を求めていることが分かりました。プライム案件を中心に据えたのはこのような理由からです。 一方でトレーニング事業もテコ入れしました。私が社長に就任した当時、トレーニング事業は年商1,000万円程度。サーバーサイドJavaに特化し、年に数人に教える規模です。しかし、この分野にも大きな可能性があると感じていました。「Java以外の言語についても、体系的に分かりやすく教えるニーズは確実にある」と考え、トレーニングの対象領域を拡大。その結果、現在ではトレーニング事業だけで年商4~5億円にまで成長し、当社のコア事業となっています。意志を持って拡大を進めてきた中で、順調に増えたと実感しています。
社員の方々の志向を重視される理由は何でしょうか。
当社にとって人こそが唯一の「資産」と考えたからです。私の最大の役割は、社員という「資産」を最大限に活用することだと考えています。そのためには、社員が仕事をしやすく自分の成長を実感できる環境をどれだけつくれるかが最重要課題だと思っています。 例えば、社員のアイデアを積極的に取り入れ、制度や職場環境の改善に取り組むこともその一環です。私が社会人になった頃は残業が当たり前で、デスクの横に寝袋を置くのが美学という時代でした。しかし今では無駄が多かったと反省し、無理な仕事をしない働きやすい環境づくりを意識しています。 残業が少ない当社の文化は、実は私が社長になる前から存在していました。リモートワークや有給消化率等、高い水準で推移しており、土・日にチャットツールで仕事のメッセージが飛び交うこともなく、仕事とプライベートがしっかり切り分けられています。自然と根付いていた文化を、私も大切にしたいと感じています。
社員の方々に期待していることを教えてください。
私は全員に「社長」、つまり「経営者」になってほしいと考えています。レイヤーや責任範囲は異なりますが、基本は全員が経営者マインドを持つべきです。 そのマインドを育むために、毎月の取締役会情報は全て全社に報告しています。約3年前からは、プロジェクト単位の詳細な採算データをリーダー以上に公開し、自分の仕事が会社にどう貢献しているかを意識させるようにしています。夢は、全員が独立して会社をつくることですね。 なぜ全員に経営者になってほしいかというと、誰もが仕事の「当事者」だからです。自分がやることへの責任と理解、何ができるか、何をすべきかを自分で考える人になってほしい。私は基本的に「これをやれ」とは言わず、部門からの提案を尊重し、良しとすれば受け入れます。失敗しても構いません。失敗から成長の機会を得ることも沢山ありますから。実際、そうしたマインドを持って様々な提案をしてくるメンバーが増えてきました。
最後に、 社長ご自身にとって「仕事」とは何でしょうか。
これはメンバーにも時々話すのですが、仕事は勉強そのものです。仕事は常に新しい人や物事に出会う機会に溢れています。 たとえば私にとっては、社会人になってから約30年続けているゴルフもビジネス上の非常に良いツールです。お客様や友人と長時間過ごす中で、その人の「人間性」がよく分かり、価値観を知る手がかりにもなります。 人との出会いや会話のなかにも、知らないことは山ほど発見できます。そこに興味を持ち、対話から学ぶことが大切です。逆に、学びを止めると成長も止まってしまうという危機感があります。また、最近は技術革新のスピードも目まぐるしく、新しいことがどんどん生み出されています。キーワードを聞いて理解できる知識がないとこれから先も厳しい。知識はどんどん吸収し続けなければなりません。だからこそ大切なのは、人との対話や技術から常に学び続けること。それが仕事の成長にもつながると思っています。