株式会社カサレアル

IT研修、クラウドネイティブ、Webシステムという三つのソリューションによって顧客の課題を解決し、DX推進を加速させている株式会社カサレアル。同社は東証プライム上場・テクマトリックス株式会社のグループ企業として、安定した経営基盤の下、プライム案件を中心に顧客と二人三脚で上流工程から一貫した開発を行っている。

1999年の創業当初、事業の主軸は売上の約9割を占めるSESだった。2009年に代表取締役社長・窪伸一郎氏が就任するタイミングで、プライム案件中心へのビジネスモデルの転換が図られている。また、同社は創業当初から、システム開発に加えてエンジニア育成にも力を入れていた。特に、当時難易度の高かったサーバーサイドJavaの開発に特化した高い技術力を持っており、それが多くのビジネス機会を生み出していた。窪氏は「エンジニア育成事業を通じて顧客との技術的な相談機会が増加し、それがプライム案件の獲得へと繋がっていった」と語る。

現在、同社は「ラーニングサービス」「クラウドネイティブ推進支援サービス」「ビジネスソリューションサービス」という三つの事業を展開している。

ラーニングサービスは、顧客の関心が高いが提供できるベンダーが少ない、いわゆる普及初期段階の技術に焦点を当てた研修を提供することで差別化を図っている。同社は、海外の技術情報を深く調査し、ローカライズした独自のコンテンツを開発する労力を惜しまない。

クラウドネイティブ推進支援サービスは、コロナ禍を契機に本格的に立ち上げられた事業である。複数の複雑なクラウドネイティブ技術を組み合わせてシステムを自動化する支援に強みを持つ。このサービスでは、社内で培われた学習ノウハウを体系化し、トレーニングコンテンツとして提供することで顧客から高い評価を得ている。

ビジネスソリューションサービスは、顧客と直接契約するプライム案件を中心に、システム開発の上流工程から下流工程までを一貫して手掛けている。開発の多くはスクラッチ開発であり、プロジェクトは基本的に社内メンバーのみで遂行される。これは、外部パートナーに頼るのではなく、社内での技術力向上とノウハウの蓄積を重視する経営方針によるものである。この直請け・上流へのこだわりは、エンジニアの成長と顧客への価値提供を最大化するための重要な戦略的転換点であったと言える。

同社は顧客からの信頼を獲得するとともに、エンジニアの技術力を継続的に高めるための独自の環境と文化を育んできた。

同社には、技術習得と知識共有を促す「呼吸をする」というユニークな比喩表現がある。新しい知識を学ぶことを「吸う」、学んだ知識を他者に教えることを「吐く」と表現。教えることで新たな学びの必要性が生まれ、それが継続的な知識の吸収へと繋がっている。この文化が、エンジニアが能動的にスキルアップを図る強い動機付けとなっているのだろう。

例えば、同社のエンジニアは業務時間外も含む自主的な活動として、Javaユーザーグループ等の外部の技術コミュニティに積極的に参加。自らが学んだ技術をショートセッション形式で発表し、他のエンジニアと相互に学び合う機会を創出している。ビジネスソリューション技術部の部長・本田昌勝氏によれば、「AI等の最先端技術について、チャットツール上で誰からともなく自発的に会話が始まる」とのこと。本当に技術が好きなエンジニア集団なのである。

そんな同社では、誰もが「フルスタックエンジニア」を目指せる環境を提供している。まず、プロジェクトは基本的にプロパーのみで対応する。管理部部長・石川友則氏は「技術力とノウハウを社内に蓄積し、社員の総合的なスキルアップを促すため」と語る。先述の通りプライム案件が中心なので、プロジェクトが上流から下流まで一貫して社内体制で実施。エンジニアは要件定義等の上流工程から運用保守まで幅広い工程を経験し、総合的な技術力を習得できる。社内には、顧客向けの高品質なラーニングサービスの教材が展開されている。社員はこれを活用して自主的に学習し、自身のスキルを向上させることができる。スクラッチ開発が主であるため、案件によってはエンジニアが技術選定に携わり、新たな技術やフレームワークを提案する機会も与えられる。

さらに、新規事業についてもボトムアップでの提案が可能だ。プロフェッショナルソリューション第2技術部の課長代理・野中翔太氏は、Kubernetesを誰でも使えるような環境の構築を、収益が見込めるビジネスとして上司に提案。事業化に向けてブラッシュアップを図っている。
このようなエンジニア一人ひとりの自立的な成長と技術力の向上が、顧客からの信頼獲得に直結していると言える。

同社は7割を占めるエンジニアをはじめ全社員の働き方の柔軟性を高く評価し、リモートワークや時差勤務等の制度を積極的に導入している。コロナ禍を契機にリモートワークが普及し、現在では全社員の平均で約8割、開発部門では95%もの高いリモートワーク実施率を維持している。窪氏は、リモートワーク推進の理由として「人生で最も無駄な時間は通勤時間」と考えていることを挙げている。また、コロナ禍におけるリモートワークの実施経験から、生産性が低下しなかったという事実も、この方針を維持する重要な根拠となっている。

社員を支える制度はそれだけではない。年間休日は123日、育休は子供の年齢が3歳になるまで延長可能（育休復帰率は100%）、収入面においては毎年ベースアップがあり、最高昇給実績は15.9%（2024年度）と、頑張りが正当に評価される環境だ。

スキルアップ支援や福利厚生等の様々な環境を整備し、直近10年の売上高が平均112%と順調に業績を伸ばしている同社だが、今後の展望についてはあえて固定的なグランドデザインを掲げていない。変化のスピードと多様性が増す現代においては、常に変化し続ける顧客ニーズや世の中の環境に「アジャスト」していくことが最も重要であると考えているからだ。

そこで同社が求めているのは、変化を感じ取り、何をすべきかを自ら考え、行動できる「プロ」である。具体的には、自律的に学び、新しい技術――例えば生成AIのような、まだ誰も答えを知らない領域の技術――にも臆することなく、試行錯誤しながら道を切り開いていける人材を求めている。特定の技術スキルに限定されず、技術トレンドを継続的にキャッチアップして自身のスキルとして習得し、顧客サービスに展開できるマインドと能力を持つことが重要視されているのだ。

「私達自身も、現在の3事業体制を10年前に想定していたわけではありません。だからこそ、変化し続ける世の中で何が求められているかを一緒に考える仲間が欲しいのです」（窪氏）。

顧客の課題を深く理解し、システム開発の企画から運用まで全ての工程に自ら関与してフルスタックエンジニアになりたいと考える人材にとって、同社は多様な経験を積むことができる魅力的な環境を提供していると言える。このように、柔軟な働き方と未来を見据えた人材戦略が、同社の今後の成長を支える鍵となるだろう。