株式会社MOL CAREER

日本では類を見ないASEAN人材に特化した外国籍人材紹介業『ASEAN CAREER』、外国籍対象求人と外国籍求職者のマッチングプラットフォーム『Sunrise』を手掛ける。2014年に創業した同社は、日本国内の企業と、日本への就職を希望する外国人向けに様々なサービスを提供してきた。現在は自社プロダクトである『Sunrise』の開発体制を強化中で、プロダクトの更なるクオリティ向上を目指している。10年という時間を掛けて築いてきた歴史の中で、同社はどのような優位性を確立してきたのか。外国籍メンバーの比率が高い同社では、どのように求心力を高めているのか。そして今後会社をどの方向に成長させたいと考えているのか。代表取締役・渡邉健太氏にお話を伺った。

改めて同社の事業を紹介しよう。まず、設立当初から手掛けているのがASEAN人材紹介業『ASEAN CAREER』である。あらゆるASEAN人材の紹介ニーズに対し、国内最大級の幅広いバックグラウンドを持った外国籍採用専門家集団（80社200名以上）による協同探索体制により質・量ともに高い人材を紹介。企業から高い評価を得ている。累計300社以上の企業の外国籍人材採用実績があり、1万2000人以上のASEAN出身者を中心とした日本語人材求職者登録を誇っている。

そしてコロナ禍が世界を覆い始めた2020年にリリースしたのが『Sunrise』である。外国人を採用したい企業の求人を持つエージェントと、求職中の外国人の登録がある人材エージェント＆外国人へのキャリアカウンセリングを行うカウンセラーが、『Sunrise』に求人票と候補者情報を登録。より就職先の選択肢を広げることができる“共創型”外国籍人材スカウト・推薦プラットフォームだ。

渡邉氏は学生時代、海外インターンシップの運営を主幹事業とする世界最大級の学生団体の日本支部に所属。その後、2011年にHR事業大手の代理店に就職するが、東日本大震災の影響で日本全体が自粛ムードに。自分が想定していた働き方ができず、入社3か月で退職。先に起業していた同期を手伝ううちに、渡邉氏の起業家精神に火がつき、現在の取締役である田上竜也氏との出会いを経て同社を設立。この画期的なサービスを立ち上げて今日に至る。

『Sunrise』についてもう1点触れておきたいのは、同社もまた『Sunrise』を活用して外国籍人材のマッチングを行うプレーヤーである、ということだ。そしてプレーヤーであることが、実は同社の優位性の担保に繋がっている。具体的には2つ挙げられるだろう。

1つは、マッチングを牽引できること。エージェントが求人・求職を『Sunrise』にアップしていてもマッチングに繋がらない可能性はある。しかし同社がプレーヤーとして介在することで、同社の求人に求職者を、同社の求職者に求人を、それぞれマッチングさせることは可能だ。マッチング機能が十分に働いているとなれば、『Sunrise』というプラットフォームへの信頼を保ち続けられる。

もう1つは、その『Sunrise』は自社で開発・機能追加を行っていること。プレーヤーとして入っているので、ユーザビリティや欲しい機能について体感し、開発や機能追加、改修をスピーディーに実行できるのだ。場合によってはエージェント各社にヒアリングし、ブラッシュアップしていってもよいだろう。

例えば、現在の『Sunrise』にはA社の求職者リソースとB社の求人リソースをマッチングする機能はある。そこに自社のリソース同士を照会する機能を追加すれば、『Sunrise』はさらに利便性が高まるだろう。各社にとっての「自社案件」が『Sunrise』内で扱えるようになると、求職者への一斉配信も個別配信も楽になる。さらに、エージェントだけではなく求職者本人が求人リソースを閲覧し、個別にエントリーする機能を持たせるアプリケーションを作れば、求職者にとっての使い勝手もさらによくなるはずだ。

このように、自社プロダクトだからこそスピーディーにクオリティを上げられることが2つ目の優位性である。そしてその優位性を担保するカギになるのが、同社のエンジニア集団である。

「当社のエンジニアはベトナム人、ミャンマー人、日本人の3名。リリース前は私も含め全員で出社し、ホワイトボードを使いながら徹底的に議論しました。なぜなら全員が『Sunrise』というプラットフォームの意義を感じているからです。時代の大きな変化と向き合い、柔軟な選択肢を提供する。生きる選択肢を増やす。その意義に共感できることが当社のエンジニアの条件になるでしょう」（渡邉氏）。

2025年1月、株式会社MOL CAREER(旧:NODE株式会社)は船員育成・採用の豊富な経験を持つ株式会社商船三井（社長：橋本 剛、本社：東京都港区）を引受人とする第三者割当増資により資金調達を実施した。800隻以上の船舶を運航し、船員の約97%が外国籍という外国人材活用のプロフェッショナル企業である商船三井。
その圧倒的な外国人材マネジメントノウハウと、同社が10年以上にわたり築いてきた東南アジア人材紹介実績が融合することで、従来の枠を超えた高付加価値サービスの提供が可能になる。この資本提携によって何が変わるのか。代表取締役・渡邉健太氏に話を伺った。

■ 商船三井に評価された「技術力」と「業界共創の実行力」
「商船三井さんに評価いただいたのは、『Sunrise』の技術力もそうですが、それ以上に"業界共創の実行力"だったと思います」と渡邉氏は振り返る。
コロナ禍で業界全体が苦境に立たされた際、同社は同業他社と連携して外国籍人材の推薦・スカウトマッチングプラットフォーム『Sunrise』を自社開発・リリース。業界の課題を自らの手で解決しようとする姿勢が、この資本提携に繋がった。
「商船三井さんは97%が外国籍船員という、本当の意味での外国人材活用のプロです。船員育成の豊富な経験、グローバルなネットワーク、そして"人を育てる"思想。当社の方向性と一致しました」

■ 資本提携により実現する、3つの新たな価値
資本提携によって何が変わるのか。渡邉氏は3つの変化を挙げる。

・1つ目は、事業規模の大幅な拡大だ
「商船三井さんの幅広い顧客基盤への共同提案、海外ネットワークを活用した人材ソースの多様化、各媒体・学校法人への戦略的アプローチ。これらで登録人材の質・量両面の向上を図ります」

・2つ目は、『Sunrise』プラットフォームの進化
「安定性、安全性、機能性。すべてのレイヤーで向上を実現します。ユーザーにとってより使いやすいシステムへ進化させる。開発体制も強化中です」

・3つ目が、特定技能分野における展開の拡大である
従来はミャンマー人材×外食分野が中心だったが、商船三井の育成ノウハウと海外ネットワークを活用し、多国・多分野への展開を進める。「単純な登録支援ではなく、包括的な人材育成サービスの開発。そこが今後の大きなテーマです」と渡邉氏は力を込める。

■ エンジニアにとっての「海運×HR」という挑戦
資本提携により、エンジニアが向き合う領域はさらに広がる。グローバル規模でのシステム開発、海運×HRという独自ドメインでの技術力発揮。この掛け合わせを持つ企業は、国内にほぼ存在しない。
「海運業界の知識は不要です。必要なのは、新しい領域に飛び込む好奇心と、ユーザー目線でプロダクトを作る姿勢。当社のエンジニアは現時点でミャンマー人、日本人の計4名ですが、全員が『Sunrise』の意義を感じています」
渡邉氏が語るのは、時代の変化と向き合い、柔軟な選択肢を提供すること。生きる選択肢を増やすこと。その意義に共感できることが、エンジニアの条件だという。

■ 外国籍人材業界全体への貢献
「この資本提携は、当社だけのためではありません。外国籍人材業界全体の市場拡大と健全化に貢献したい。それが使命です」
商船三井という業界トップクラスのパートナーを得て、同社が目指すのは業界全体の底上げだ。
「グローバル規模で"人の人生を変えるシステム"を作る。海運×HRという独自ドメインで技術力を発揮する。そんな貴重な経験を積める環境が、今ここにあります」
すでに実績あるプロダクトを、さらに大きく育てていくフェーズ。株式会社MOL CAREERは今、新たなステージへと踏み出そうとしている。