ワンページ株式会社

ワンページ株式会社は、名古屋市に本拠地を置き、全国の中小企業を主要顧客とした事業を展開している会社だ。2017年4月の設立以来、Webサイト制作を中心に、デジタルマーケティング支援、採用支援の3本柱を確立。2022年度まで6期連続130%以上の成長を遂げている。

最大の強みは、代表取締役・河合駿輝氏が培ったマーケティングスキルだ。河合氏は学生時代に外資系飲料会社や通信会社のインターンとして、マーケティングと営業を経験。大学卒業後、東京のマーケティング会社に就職。2年間営業職を務めた後、出身地である名古屋に帰り、同社を設立した。ヘアサロンやエステ等、Webサイトを持っていない小規模事業者を相手にしたWebサイト制作から事業をスタートしたが、単なる制作ではなく、市場調査・分析からWeb制作、運用までワンストップで支援。マーケティングフレームワークに基づいた施策で、着実にクライアントのビジネス成果に繋げながら、信頼を築き、事業を拡大していった。

「ビジネス成果を求めるなら、発注主であるクライアントの先にいるエンドユーザーが誰かを考える必要があります。我々はWebサイトの制作でも、エンドユーザーが誰で、どのような趣味嗜好を持っているかを徹底的に考えてサイト設計しています」（河合氏）。

Webサイト制作を軸に、集客やプロモーションの成果を上げたことで、相談の幅も広がっていった。採用支援事業も、顧客からのニーズに応えてスタートした事業だ。同社の強みであるマーケティング視点は、採用活動でも欠かせない要素である。2018年4月には求人情報専門検索エンジン「Indeed」の正規代理店として、自社サービス『リクルートマスター』をリリースし、オウンドメディアリクルーティングの支援を行ってきた。

サポート範囲は、オンライン上の活動に止まらない。ロゴや名刺、チラシ等プリントメディアのデザイン等も請け負う。同社のWebサイト制作や採用支援を通じて事業を成長させ、新しいステージを迎えたクライアントや、コロナ禍を機に事業体制の再構築に取り組もうとする企業からは、新しいビジネスモデルの構築や新規事業開発の相談も舞い込む。同社も、セルフエステサロンをオープンして2年にわたって経営し、成長させた後に売却した実績がある。そのような実績を示しながら、飲食店、建築業等、多種多様な分野のクライアントに伴走し、数々のビジネスをゼロイチで立ち上げている。

「我々が提供する全サービスの根底にあるのが、デザイン思考です。ユーザー目線で、本質的な課題解決を目指したサービスを提供しています。今後の企業経営では、デザイン経営の視点がますます重要になります。当社はクライアント企業を丸ごとデザインする“デザインコンサルティング会社”として、まずは名古屋№1のポジションを確立したいと考えています」（河合氏）。

同社の経営理念は“特別な感動で世界を彩る”だ。
元々同社は、河合氏が「お客様と一緒に航海するような会社を作りたい」という思いで設立した会社だ。“船”をモチーフにした会社のロゴマークは、顧客、従業員、自社が一体となり、1ページ1ページを積み上げながら発展していくというビジョンを表している。その背景にあるのは、前職時代の営業スタイルだ。新人賞やMVP等を獲得し、様々なプロジェクトも任される等、営業マンとして華々しく活躍していたが、新規開拓のみで、アフターフォローは一切しないスタイルに抵抗を抱き、顧客と深く関わりながら共に成長し合える会社を作りたいと考えたのである。

そのため、クライアントとの直契約にもこだわってきた。大手代理店と取引できれば、ナショナルクライアントの案件を受注することも可能だが、クライアントへの伴走型支援という理想は実現できない。そればかりか、替えの利かないオンリーワンのポジションを築きにくい上に、スタートアップの立場では、低コスト短納期の案件に追われて社内が疲弊することも目に見えていた。そこで、1店舗、2店舗の小規模なクライアントを一から開拓し、文字通り共に成長し合える関係を築いてきたのである。

「購買意欲を引き出し、購買の意思決定へと導くには感動が必要です。お客様の期待を120%、130%上回らなければ感動は生まれません。“我々のためにそこまで考えてくれるのか”という感動を与えることが何より大切です。また“彩る”はデザインすることであり、より良くすることです。“特別なサービスで感動を与えながら世界を良くしていこう”。それが当社の理念です」（河合氏）。

河合氏が組織作りに本格的に取り組み始めたのは、設立から4年目のことだ。一人で立ち上げ、半年間で電話が鳴り止まないほどの成長を遂げ、採用も始めたが、自身の熱意とは裏腹に、従業員との間に意識の乖離が生まれたこともあった。トップ営業だけでは、いずれ成長にも限界が訪れることが見えてきたため、仕組み化に取り組み始めたのである。2022年10月には、経営理念の策定にも着手。“顧客と共に航海するような会社”という理想はそのままに、経営理念やミッション、ビジョン、行動指針、さらに上場という目標を明確に定め、それらを実現するための具体的なアクションプランを描き、実行しているところだ。

「現在も、社外CFO（チーフファイナンシャルオフィサー）と共に、当社の健康状態をチェックしながら、様々な仕組み作りを行っています。今後10年以内に100名ぐらいの組織に成長させ、上場も果たしたいと考えています。また、現在はお客様のニーズに応えてアウトプットする受託ビジネスを行っていますが、将来的にはプロダクトアウトで、自社開発した製品を世間に広めていくような事業も展開したいと考えています」（河合氏）。

組織作りを進める上で、河合氏が特に力を入れているのが人材の育成だ。顧客へのコンサルティングを兼ねる営業には、自身の強みであるマーケティングフレームワークを全員が使えるよう、徹底的に指導を行っている。デザイン思考を浸透させるため、デザインに関するオンライン講座や社外研修も導入している。さらに組織学を導入し、毎朝30分もの時間を割いて、理念の唱和、行動指針の読み合わせ、ヒヤリハットやクレームの共有、グッドニュースの発表、目標達成者の表彰等を行いながら、意識の統一を図っている。

河合氏が目指すのは“徳”と“才”を兼ね備えたプロフェッショナル人材の育成だ。

「“徳”は人間力、“才”はスキルです。どちらも兼ね備えていかなければ、人間社会では生きていけません。人間力を鍛えるためには、一人ひとりが自学自習に努める必要があります。中小企業の課題は人材育成です。どんなに優秀な人を採用しても、考え方やスキルを常にアップデートしていかなければ、絶対に良いものはできませんし、お客様に特別な感動を提供することもできません」（河合氏）。

今後は、年間休日を130日以上に設定し、フレックス制を導入する等、プライベートを充実させる取り組みも始める。河合氏には、それによって生まれる余暇の時間を、自分を高めるための活動に充ててほしいという思いもある。

明確に理念やビジョン、育成方針を定めて示したことで、社内の雰囲気は大きく変わった。価値観や考え方を共有できる人材が集まり方向性が揃ったことで、社員同士の調和が取れるようになり、活気も生まれている。また社内規定や評価基準等のルールを細かく決めることで透明性が高くなり、迷わず、安心して仕事に集中できる環境も整ってきた。

こういった取り組みの成果は既に生まれており、同社は現在、新たな成長フェーズを迎えている。今後は、サービス品質の向上とサポート体制の強化を図るため、クリエイティブ部門と営業部門が共にリソース拡充を目指し、採用活動にも注力し始めている。

「現在の当社は、“変化”と“成長”の真っただ中にいます。クライアントや会社、同僚達と一緒に成長できる環境が最大の魅力です」（河合氏）。

河合氏が採用において重視していることは、決めたことを達成する力、責任感、成長意欲、チームワーク、チャレンジ精神、プロ意識、誠実さ、素直さである。これらは全て、同社の行動指針にも挙げられている項目だ。

「情熱が溢れる会社にしていきたいです。表現の仕方が分からないだけで、情熱を持っている人は少なくないはずです。従業員と共に、私自身が働きやすい会社を作りたいと考えていますので、ぜひ自己実現の舞台として会社を活用してください」（河合氏）。