エクネス株式会社

「社会的に意義のあること、様々な社会課題の解決に繋がる事業を通じて、その対価としてお金を頂ける仕事がしたいと思い、エクネスを立ち上げました」
こう語るのは、エクネス株式会社代表取締役 CEO・平井康之氏だ。大学卒業後、金融機関に入り、営業先だったWeb制作、システム開発企業へ移り、営業として実績を上げていく。その手腕から会社の重要なポジションを任せる話も出ていたが、自ら起業する道を選んだ。

「もっと世の中の役に立つことをしたいという思いが強くなってきたからです。意義のある仕事がしたい、と。そのまま会社に残っていれば、それなりの収入はあったでしょうし、安定も手にすることができたと思います。でも、あまり意義が感じられなかったのです」（平井氏）。

同社は、“2040年 社会課題解決1兆円企業”を目指している。このような目標を掲げているのも、「日本で最も地球に必要とされる会社へ」という理想の姿を実現するために必要なことだからだ。
「人類の存続に貢献したいと考えた時、企業活動を通じて解決できる可能性のあるものは地球環境課題だと考えています。例えば、問題視されている温室効果ガスですが、日本起因で排出されているのは全体の約3%だそうです。日本のGDPが約600兆円あることから考えると、地球環境問題解決に特化した事業による売上が1兆円ほどあれば、1%くらいは貢献できる計算になります。この数字は私の適当な感覚値ではありますが、本気でそこを目指していますし、当社に集まっている社員達も、この考え方に共感してくれています」（平井氏）。

この話だけを聞いていると、「夢物語を追いかけて……」「そんな浮ついた考え方で企業経営が上手くいくわけがない」等と思う人もいるだろう。しかし、同社は2018年3月の設立以来、前年比売上1.5倍の成長を継続し、取引先も誰もがその名を知る大企業が数多く含まれる等、目標実現に向けて着実に前進し続けている。

同社が現在手掛ける事業は、二つ。最も大きな売上を占めているのが、レターテック事業だ。これは、法人や個人を対象に手紙やハガキ、メッセージカードの手書きを代行するというビジネス。メール等デジタルの無機質な文字が当たり前になっている今、手書きの温かみある文字、文章が好評で、大企業からスタートアップまで幅広い業種・業界の顧客から支持を集めている。
「用途は営業の手紙やECサイトのレビュー記載を促す礼状等、様々です。お客様から頂いた文面を手書きするという仕事なので、年配の方に空いた時間を利用して仕事していただこうと始めた事業です。年配の方の余暇を価値に変えるわけです。開始当初は15名ほどの書き手にお願いしていました。想像以上に好評を頂き、数カ月後にはスタッフだけでは事業の成長速度を支え切れなくなり、代筆ロボットを導入し、スタッフによる手書きと併用するようになっています」

二つ目の事業がフードロス事業だ。「日本の食品ロスをゼロに近付ける」ことを目指し、スーパー等には卸せない規格外野菜を全国のユーザーに低価格で提供している。全国の農家と取引があり、現在既に週当たり20トンほどの規格外野菜を流通させている。ユーザーも1万近くにまで増えているという。
「廃棄される野菜を規格外品として販売するビジネスは当社の他にも数多く存在します。しかし、正規品を扱いながら規格外品も扱っているところがほとんどです。つまり、規格外品の流通はあくまでもサブビジネスの位置付けであり、多くのリソースを投資していないのが現状。一方、当社は規格外品しか扱っていません。その分、規格外品を全国の農家から集めて、全国のユーザーにお届けすることを他社以上に力を注ぐことができます。そこが競合優位性に繋がっています」（平井氏）。
現状、対象となる規格外品は野菜だけだが、今後は果物やジュース等の加工食品も取り扱っていく予定だ。

今後は既存事業のさらなる拡大を図るとともに、新規事業の開拓にも注力していこうと動き出している。

既存事業が安定的な収益を生むようになったことで、今後はより積極的に新規事業開拓に力を入れていくと平井氏は語る。
「社会課題の解決に役立つという軸に沿った事業で、かつ既存事業とのシナジーが見込める新規事業を立ち上げていきたいと動き出しています。既存事業は、事業間のシナジーよりも社会課題解決に繋がる事業であることを優先していたため、シナジーを生み出しにくいところがありました。そこで今後は、事業同士で相乗効果が生まれる新規事業、既存事業の間を埋める・繋ぐような新規事業に挑戦していきたいと考えています」

既存事業は平井氏のアイデアによるものばかりだが、今後は社員からアイデアを募って形にしていく手法も取り入れたいという。
「アイデアを発信してもらい、可能性がありそうだと思えるものを、社員や役員を交えてブラッシュアップしていきながら事業化する仕組みをつくっていきたいですね」（平井氏）。

同社では、社員の主体性を尊重しており、社員が挑戦できる環境づくりに力を入れてきた。例えば、システム開発と業務推進を担っているイノベーションソリューション部はパートから社員になったメンバーの発案で立ち上がった部門であり、そのメンバーが現在部長を務めている。日々の業務においても、社員が挑戦しやすいように大きな裁量を与えているし、エンジニアが新しい技術に触れたい、導入してみたいという要望にもしっかり耳を傾け、実際に新技術に挑戦できる環境がある。
「言われたことだけをこなすよりも、主体的に動ける方が仕事をしていても楽しいでしょう。明確にやりたいことがある人なら、なおさらです。そのやりたいことをフラットに発信することができて、実現できる可能性も高い。そういう挑戦しがいのある会社にしたいと思って環境づくりに力を注いできましたし、これからもそうしていくつもりです」（平井氏）。

このような社風が根付いている会社だけに、「やりたいことがある人、挑戦心の強い人、世の中を変えたい人、そして誠実な人」を求めている。そういう社員が集まっているため、ここに共感できる人の方が、実力を発揮しやすいし、馴染みやすいともいう。
「社会課題解決に繋がるビジネスを通じて、世の中を良くしていきたいと本気で思っています。この考えに共感してくれる多くのお客様に支えられて、順調に事業も拡大してきています。福井県鯖江市という田舎にあるベンチャーですが、ここから東京や大阪等の大都市にある企業に勝てるビジネスをつくること、そして、より良い方向へ世の中を変えていける会社をつくることに、私達と一緒に挑戦していきませんか」（平井氏）。