株式会社才流

BtoBマーケティング・セールスの領域において、そのノウハウを活用したコンサルティング事業を展開する株式会社才流。2016年7月の設立時は、Webサービスを中心とする活動を行っていた同社だが、約2年後にコンサルティング事業へと自社サービスの軸を転換した。その経緯について、栗原氏は次のように振り返っている。

「設立当時は、企業と人材を繋げるマッチングサイトというWebサービスを展開していましたが、事業に取り組む中で『自らのノウハウを活用しながら、よりコントローラブルに顧客の成果を創出したい』という思いを抱くようになりました。そこで、私自身が前職でBtoBマーケティング支援を経験していたことから、現在の事業へと転換したんです」（栗原氏）。

同社の事業コンセプトは、より再現性の高い方法論を開発し、そして発信していくことだという。その表れが、『メソッドカンパニー』と表現された自社の事業ビジョンであり、コンサルティング事業で蓄積した知見やノウハウをメソッドして確立しながら、世の中に広く発信していく取り組みなのである。

「ここ数年、活況を呈しているBtoB領域に関し、圧倒的なノウハウを有している部分に当社の強みがあると思っています。そのノウハウを踏まえながら、どうすれば再現性高く成果を出せるか、を型化し、情報として発信しているのが現在の当社の取り組みです。この取り組みによって、属人的になりがちなコンサルティング業務を平準化し、人ではなくメソッド自体に価値を紐付けることによって“バラつき”のない支援を行っているのが当社の特徴だと思います」（栗原氏）。

コンサルティングに関するノウハウを、ソフトウェアや人的サービスとしてではなく、コンテンツとして外部に発信することで、より多くのクライアントにリーチしたい。それが同社の考えであり、その考えが実際に同社の業績向上に結び付いていると栗原氏は語っている。

「コンサルティングという“高額無形”の商材に対して、顧客の不安を取り除き、依頼へのハードルを下げるという効果も、メソッドの発信という取り組みから生まれていると思います。現在は月間約80件のお問い合わせを頂いていますし、価値のある情報を発信することで認知度が向上し、営業活動強化に繋がっているというのが、当社の現状なんです」（栗原氏）。

『メソッドカンパニー』として、現在はBtoBマーケティング領域のコンサルティングに注力している同社だが、今後についてはその対象領域を広げ、コンサルティングのテーマやメニューを増やしながら「BtoCマーケティング」「採用」「営業」「組織運営」など提供可能なメソッドテーマを広げ、自社のメソッドの価値をより高めていきたいと考えている。そして、一つのビジネスで大規模な売上を目指すのではなく、価値あるメソッドを確立しながら小規模なビジネスを数多くの領域で展開していきたいという考えにも、同社の特徴が表れている。

「例えば、自社の時価総額1,000億円の企業を目指す際に、一つのビジネスで大規模な年商を実現する一つの巨大ビジネスではなく、年商5億円規模のビジネスを200展開する。そうした“マイクロ事業法人”となって、多種多様な領域でメソッドを発信していくことに価値を見出したいというのが、当社の考えなんです」（栗原氏）。

実際に同社では、BtoBマーケティングの領域以外にも、「営業組織の平準化」「マーケター採用・育成支援」「テストマーケティング代行」といった新しい領域でのコンサルティングメニューの整備に着手している。目指すのは、100以上のメソッドを開発すると同時に、無料で利用できるWebコンテンツを展開することだと栗原氏は語っている。

「これまでコンテンツを展開することによって、当社へのお問い合わせ件数は前年比約30%増のペースで増加しています。その評価の表れである案件依頼も急増しています。企業の成長フェーズだからこそ、自身のメソッドを言語化・体系化できるコンテンツの発信者となるコンサルタント、そして数多くのメソッドをコンテンツとして発信するためのエディターが必要だと感じています。コンサルティング経験や制作経験はもちろん、自身がコンテンツを生み出す力を持つ方々にとっては、事例コンテンツ等を体系立てて発信できるやりがいを、この環境で感じることができるはずです」（栗原氏）。

メソッドカンパニーの目標を達成するために必要なのは、顧客の満足度向上を実現するコンサルタントの能力だけではなく、自身のスキル・ノウハウを言語化・体系化しコンテンツ化できる『メソッドメーカー』であると語る栗原氏。自社にある豊富な知見、高度なノウハウを発揮しながら顧客に価値を提供するには、フレームワークだけを属人的に提供するのではなく、メソッドそのものに価値を紐づけ、展開していく必要があり、仕組みと価値提供の推進を加速させていくというのが、同社の考えなのである。

メソッドを自社に閉じ込めることなく、外部への積極的な発信によって社会への価値提供を進める同社だが、その事業スタイルと併せ、社内の勤務体制にも大きな特徴を有している。その特徴とは、フルリモートで勤務する社員の快適な働き方を実現する各種の制度である。同社では、週の勤務日数を「4.5日」と設定定義し、毎週水曜14時以降を自由裁量の「みなし業務時間」とする枠組みを設けている。週休日数を増やすのではなく、週の半ばに休息が取れるという独自の体制を整備する狙いについて、栗原氏は次のように語る。

「元々当社の月間平均残業時間は約3時間程度です。高い給与水準の中で社員に対してノルマを課すこともありませんので、全員がプレッシャーを感じることなく働きやすい仕組みを整えています。水曜日の午後を退勤可能な時間にしているのは、生産性の向上を目的としています。1日8時間、週5日勤務ということに関して、私自身は“働きすぎ”だと考えます。そのため、週の半ばで感じる疲労や緩みということを解消し、生産性を高めるためにみなし業務時間という制度を設けているんです」（栗原氏）。

価値の生産を最大限に発揮できる事業展開、それを担う社員達が働きやすさを感じられる制度がある同社だが、経営者として栗原氏が大切にしていることは何か。自社の文化として根付いているという実感を交えながら、栗原氏は三つのキーワードによって自身の思いを語ってくれた。

「私が大切にしていることの一つ目が、コンテンツを起点に市場での認知度向上や顧客獲得、社内体制の整備を目指す“コンテンツドリブン”という考え方です。当社では、自社の業務オペレーションの改善・疑問に関しても、口頭での議論・説明だけではなくドキュメントや動画を活用する等、コンテンツによって推進する体制となっています。二つ目は、生産性を高めるために日々行っている“業務プロセスの改善”。そして三つ目が“ホワイトエンジン”というもの。“ホワイトエンジン”は私が考えた造語ですが、企業活動におけるグレーな要素を一切排除し、正しいことを正しいと思えるやり方で進めていくという意識を意味しています。自社内やお客様のみにメソッドを伝えるだけでなく、暗黙知だった部分も含めてノウハウや知見を世の中に発信し、後世に繋がるような価値を創造していきたい。それが私の思いなんです」（栗原氏）。