株式会社クライス

株式会社クライスの創業メンバーは、代表取締役の漆畑氏を中心とした、上流工程を数多く経験し高い技術力を誇る技術者達だ。これまで数多くの実績を残してきたが、特徴的なのは、汎用機からオープンシステムに移行してIBMとの繋がりを強めてきたこと。同社は主に、得意とするシステム基盤構築（OS、ハードウェア）を担当している。<br /><br />1999年2月の設立から代表取締役の漆畑氏は、顧客先に常駐勤務する社員達を気遣うことを忘れない。<br /><br />「エンジニア達が、安心して仕事をしていけるように。」といつも気を配っている。自身もSEとしてキャリアをスタートし、IT業界の変遷を目の当たりにしてきたからだ。同氏は、その仕事と人に対する真摯な姿勢で業界においても評価されてきた。取材当日も、顧客先に常駐している社員に電話し、相談に乗っている様子だった。同氏が社員のことを語る時の真剣な眼差しは温かく、社員を守ろうとしていることがひしひしと伝わってくる。

これまで同社が手がけてきたのは、オープン系プラットフォームでの基幹システム開発を軸に、汎用系システムからマイコン制御（組み込み）システムまで幅広い事業だ。HP製ハードなどでの構築、汎用からオープンへの移行など様々な実績を積んできたが、現在は、生命保険会社や銀行、証券会社などのエンドユーザを抱え、プロジェクトチームの一員となって、IBM製OSやハードウェアなどの構築を担当している。<br /><br />コンピュータの基本ソフトやハードといった「インフラ」については、地味な印象をもたれることも多いが、実際は非常に奥が深い世界なのだと社員達は証言する。このレイヤーの安定性がシステム全体の安定稼動に直結してくるだけに、責任は重い。しかし、基盤の視点から、システム全体を見渡しながら行える作業は非常に面白いという。プロジェクトに参画するタイミングは色々あるが、システム構築から関わる場合、設計、要件定義など上流工程においても同席し、インフラ担当の立場からの意見を求められる。

日系大手生命保険会社のプロジェクトに参加しているメンバーが7人いる。その内の3人が話を聞かせてくれた。<br />中鉢氏はセキュリティ管理を担当している。前職ではアプリケーション開発を行っていたが、現在はOSの視点からシステムの安定稼動を見守る。「アプリケーション開発では、アプリそのものだけを見ているので、もっと深いところからシステムを知りたいと思った。」と、転職の理由を明らかにする。<br /><br />また、同社に転職して7年目のベテラン、伊藤氏は、データウェアハウスシステムの運用保守に携わる。これまでのクライスでのキャリアで、AIXやDB2、Sybaseなどの知識がしっかりと身に付いた。今後は、マネージメントもやってみたいと目標を語る。前職ではファクトリーオートメーション制御ソフトの開発運用を行っていたが、アプリケーションは視野が一部に限られてしまうと、転職を決意したという。<br /><br />「インフラを知ることが、ITエンジニアのキャリアのベースとしては欠かせないことだと思います。それがシステムの『根本』なのですから。そういう意味では、当社の仕事ではしっかりとした知識と経験を積むことができるはずです。」と漆畑氏は付け加える。<br /><br />金融においては、システムの安定稼動は絶対であり、顧客の要求も一般に非常に厳しく、ハードルは高い。しかし、同社はIBMと共に培った確かな技術を核に、インフラに特化した部分でそのニーズに応えているのだ。

Webなどに比べて地味な印象があるインフラでは、エンジニア層が少ないのも事実だと漆畑氏。この分野で第一人者としての実力を身につけることが、エンジニアとしてのキャリアにはプラスに働くだろう。<br /><br />サーバ管理を担当する加藤氏は、2年前に転職するまでは、ITとはまったく関係のない営業職だったという。ある程度、年齢を経てからの転職ではあったが、漆畑氏は同氏の可能性に注目し、仕事も実践を通して丁寧に教えていった。OJTできめ細かく指導を受けたため、習熟度は高く、スピードも速かったという。困ったことがあっても、ベテランの社員達がいつでも相談に乗ってくれるから心配はない。「技術力が高く、いい人ばかりなのです」と加藤氏は笑う。<br /><br />30代前半から半ばまでと、年齢の近い社員が多いため、ざっくばらんな雰囲気で、堅苦しさはない。先輩社員達は常に親身に後輩の指導にあたる。そんな会社でも、漆畑氏は「普通のことをきちんとやっていくのです。」と自然体だ。<br /><br />普段は神楽坂のオフィスに戻ってくることはないが、コミュニケーションを取るために、飲み会やイベント、社員旅行などを大切にしている。そんな温かい雰囲気の漂う同社では、長い目でITエンジニアとしてのキャリアを考えたい人との出会いを待っている。