サイバーエージェントグループのコンテンツ制作会社
株式会社Colorful Paletteは、「人生を彩るコンテンツ」をミッションに掲げるコンテンツ制作スタジオだ。サイバーエージェント関連会社で、スマートフォンゲーム『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』(以下、ガルパ)で知られる、株式会社Craft Eggから独立。2018年6月に設立された。
代表取締役社長の近藤裕一郎氏は、Craft Egg創業メンバーの一人で、『ガルパ』のプロデューサーを務めた人物だ。新卒でゲーム開発会社に入社。以後、一貫してディレクター・プロデューサーとしてスマートフォンゲームの開発に携わり、2014年にCraft Egg創業に参画した。
Colorful Paletteは、そんな近藤氏のたっての希望で設立された会社だ。Craft Eggで『ガルパ』の次のタイトルの立ち上げが決まった際に、プロデューサーを務めることになった近藤氏が、現状に甘えることなく、本気で取り組める環境を得たいと切望したからだ。その背景には、『ガルパ』の開発時のストーリーがある。
「本当にギリギリの状況で、何をするにも真剣さが違いました。だからゲームも良くなり大ヒットに繋がったと思います。次も同じくらいの真剣さでやりたい。第一に自分自身がもっと追い込まれる環境じゃないとダメだと思ったのです」(近藤氏は言う)
その新タイトルとは、既に発表もされ、公式サイトもオープンしている『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』。セガゲームスとCraft Eggが協業する新作スマートフォンゲームプロジェクトで、Colorful Paletteは開発全般を担当する。同社は、まずは新タイトルを成功させることに全力で取り組み、その後はスマートフォンゲームを中心に、様々な「人生を彩る」コンテンツを世に送り出すつもりだ。
これまでのノウハウや成功体験は活かしつつ、環境や資金は白紙に戻す。強い決意を持ってスタートしたColorful Paletteは、2018年6月の創業以来、着実に歩みを進めているところだ。
『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』
開発中の『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』は、タイトル通り、バーチャル・シンガーの「初音ミク」が登場する、リズムゲームをメインとしたスマートフォンゲームだ。
現代の日本が舞台の現実世界と、想いから生まれる不思議な場所「セカイ」の二つの舞台を行き来しながら物語は進んでいく。「セカイ」で初音ミクとオリジナルキャラクター達が出会い、一緒に音楽を紡いでいくゲームで、すでに五つの「セカイ」と、それぞれの「セカイ」の初音ミク、オリジナルキャラクター達による音楽ユニットのメンバーが公表されている。2020年1月にはWebラジオ番組の配信もスタート。物語の世界が、少しずつ明らかになっているところだ。
気になる公開時期はまだ発表されていない。「今年中にはリリースされます」と近藤氏。『ガルパ』のノウハウも活かしたリズムゲームだが、「『ガルパ』が出たのは3年前。少なくとも3年分は進化したゲーム体験にならなくてはいけません」と近藤氏は語る。現在、Colorful Paletteの全リソースを投下して開発中だ。
そんなColorful Paletteの社員数は約40名。Craft Eggから合流したメンバーはごく一部で、大半がColorful Palette設立後に参画した。マネージャー職は近藤氏を含めて4人。全員が30歳前後(2020年1月時点)と若く、いずれもゲーム開発各社のエースとして、開発の現場で経験を積んできた人物だ。プロフェッショナル達が、「いいものをつくりたい」という強い思いと、それが叶う環境を求めてColorful Paletteに集まった形だ。
今は『プロジェクトセカイ』に注力するが、成功すればもちろん次がある。「売れた後のことは、その時に考えますが…」と前置きした上で、近藤氏は「将来的には、僕らの手でIPをつくりたいと思っています。『プロジェクトセカイ』では、IPをお借りしている立場ですから。また、我々はご縁もあり、キャラクターゲームをつくることが多かったので、今後もキャラクターコンテンツには積極的に携わっていきたいと考えています。キャラクター、タイトル等の大きなIPをつくり、ファンの方々が喜んでくれるものを次々と展開していければ理想的です」と展望を語る。
多くの人に愛され、スマートフォンゲームの枠を超え、広がりを伴って成長していく。そんなコンテンツを、これからもつくり続ける決意だ。
「いいものを」&「チームでつくる」に徹底的にこだわる
Colorful Paletteには、大切にする四つの価値観がある。「ファンファースト」「チームワーク」「ベストクオリティ」「チャレンジ」だ。
「ゲームを会社でつくる以上、チームでつくることを大事にしたいと考えています。ゲームをつくるには、集中してこだわってつくることと、それを一歩引いて客観的に見ることの両方が必要です。客観視させてくれるのがチームのメンバー。みんなが自分の責任範囲にも、それ以外にも意見を言うことで気づきが生まれるからです」(近藤氏)
そのため、新たな仲間に対しては、良いものを生み出したいという気持ちとチームプレーへの理解を求めている。優秀な人材が集まっても、別々の方向を向いていたら、力は足し算にもならずに打ち消しあう。足し算、さらには掛け算の力を発揮できるようなチームを目指すという。
同社のオフィスは、2019年3月に竣工したばかりのAbema Towers(渋谷区宇田川町)にある。サイバーエージェントのグループ各社が入居するオフィスタワーの一角だ。ビル内は、インターネットテレビ局の番組出演者も行き交う等、個性豊かな空間で、設備も充実。打ち合わせスペースからは渋谷の街が一望できる。
Colorful Paletteがあるゾーンは、社員約40人のデスクが並び、各人のデスクには役割と名前を書いたPOP状のものがある。近藤氏のデスクには「プロデューサー 近藤」とあり、場所は、横一線に並ぶ島の真ん中だ。みんなの中に溶け込む様子は、フラットで風通しのいい同社を象徴している。近藤氏も含めてみんなが活発に意見を言い合い、休憩時間には、ゲーム、アニメ、漫画、ライブ等、互いに好きなことを語り合う。
「対象は様々ですが、何かしら好きなものを持つ人が多いですね」と話す近藤氏自身も、子どもの頃からゲームに夢中になり、大学時代はDTMを用いたボーカロイドの曲作りにも熱中。好きなことを極めてきた。
「経営トップからメンバーまで、みんなが『いいものをつくりたい』と思っていることが、当社の魅力だと思います。トップがゲームに興味がないと、メンバーもやっていて空しくなる瞬間があるでしょうから。僕自身、幼い頃からずっとゲームで遊んできましたし、本当に面白いゲームをつくりたい。それを一貫して追い求めています」(近藤氏)
まずは『プロジェクトセカイ』をヒットさせ、その次はまた新たな挑戦へ。Colorful Paletteでは、共に歩む仲間を待っている。