株式会社アイ・ティ・イノベーション

日本社会のIT化は高速・高度化の一途をたどる。そんな中、ITに携わる人の数は慢性的に不足している。技術者、プロジェクトマネジャーは常に「納期」「コスト」「ビジョンの不明確さ」に悩まされ、苦しみながら、「暗い、消化型の」仕事をしている。<br /><br />株式会社アイ・ティ・イノベーションの代表取締役社長　林氏は、そんな状況を目のあたりにし、IT革新を専門に行うコンサルティングの必要性を強く感じ、1998年に同社を設立した。以来8年3ヶ月、同社は順調に発展してきた。<br /><br />「アイ・ティ・イノベーション」という社名は、同社の目的をそのまま表している。つまり、日本のIT業界に革新を起こすということである。<br /><br />同社は、IT戦略策定およびIT組織変革支援に関するコンサルティング、プロジェクトマネジメント支援コンサルティング、プロジェクトマネジメント・トレーニングなど、企業のIT戦略に関わるコンサルティングを中心に事業を行っている。<br />　<br />取引先には、各業界のリーディングカンパニーから、官公庁・学校などが並ぶ。同社のコンサルタントは総勢２０名余り、プロジェクトの内容によって1社に1名もしくは数名のコンサルタントが出向き、コンサルティングを行っている。

ITコンサルタントの仕事で忘れてならないのは、「人」への視点である。ITを利用するのは常に「人」であり、業務を行っているのも、「人」だからだ。課題を抱える顧客とコンサルタントは、互いをよく知り、ビジョンを共有し、解決の道筋を探るコミュニケーションをとらなければならない。<br /><br />同社では、顧客に溶け込んでプロジェクトを推進することを最も重要と考えている。つまり、抽象的なコンセプトを描くだけで、実行を伴わないのでなく、具現化のための緻密な提言をし、顧客とともに、或いは顧客の代わりに実行していくのである。「パワーポイントで描いた問題解決プロセスをプレゼンテーションして終わり」ではないのだ。<br /><br />その分、現場の苦労を共有することになる。たとえば、人とコミュニケーションするより、一人で黙々とシステムを作ってみせるのが好きな技術者も多く、積極的なコミュニケーションを試みると疎ましがられることもあると、コンサルタントとして活躍中の竹内氏は語る。顧客の代わりに仕事をするには、現場の特性を十分に把握し、緻密な戦略をたてることが重要である。加えて、組織を円滑に動かすための「人」としての視点が最も重要と考えているところが同社の最大の特徴である。<br /><br />各担当者の心情を汲んで調整を図り、ルールを作り、時には諭し、潤滑油となる。人が嫌がることでも言わなければならない時もある。社員同士だと、しこりが残ることもあるが、外部の人間だからこそ、できる・やるべきこともあるのだ。<br /><br />「綺麗なことだけじゃないですよ。泥臭い仕事もたくさんあります。」と林氏。<br /><br />すなわち、机上の空論ではなく、実行を伴うことが最も大切なことなのだ。「現場担当者の立場・気持ち・苦労を理解した上で初めて、正しいコンサルティングができるのです。」同社のコンサルタント達は、それぞれ、前職でシステムの発注者もしくは受注者の立場を経験している。<br /><br />だから、自分のこととして、真に顧客の気持ちを理解することができる。「言い換えれば、なぜそう考えるのか、なぜそうするのかという問いに対して『頑張ります』ではなく、常に説明を与えられる、『説明可能な仕事』をすることが大切なのです。」と語った。

そこで求められる資質は、「人間力」である。誠実で、明るくて、嘘がないこと。人が好きで、相手に関心を持ち、心を開くことができること。そうでなければ、相手は、コンサルタントに対して心を開こうと思わない。人と人のつながりがあってこその、ITなのである。しかし、「人間力」を、日々の消費的な業務の中で身につけることは難しいことであり、身につけた「人間力」を擦り切らさず、維持し、高めていくことは更に大変なことである。こうした「人間力」をもった人材はなかなか得られない。<br /><br />このように「人間力」は大切な要素であるが、それだけでは務まらない。「アナリスト」のような精緻な分析、資料作成、報告までがコンサルタントの仕事だからだ。「人間力＋アナリスト」の資質を持つ人物が望ましい、と竹内氏。<br /><br />また、「芸術やスポーツなどを通して「美しさ」を知っている人が望ましい。ITアーキテクトは芸術品であり、美しくなければならないからです。」と林氏は追加した。<br /><br />今後の同社が目指すところは、IT業界にイノベーションを起こし、明るくすること。今のIT業界で働く人は、未来が見えないために、自信を失くしている。それを、「自信と誇りを持てる職業界」「輝く未来が見える、先が見える仕事」にしたいという。<br /><br />そのために、現場で顧客の代わりに仕事をする同社のコンサルタントを増員する必要がある。しかし、クオリティーを保つために、急激に会社を大きくすることはない。あくまでも「人間力」を備え、「ITの経験・関心があり」、「何をしたいかはっきりしている」人材が必要である。そうでなければ厳しい仕事の環境で淘汰されてしまうからだ。<br /><br />しかし、そんな厳しさの中でも、会社は心休まる環境であるようだ。同社のコンサルタント達は互いを重んじ、非常にフレンドリー。ナレッジ共有サイトもあり、壁にぶつかった時には相談をしながら、乗り越えている。社員旅行で海外に出かけ、一緒にショッピングなどしていると、旧知の友といるようだという。<br /><br />「小さな会社ですので、採算と責任を取れば、自分の思うように仕事ができます。大企業では曖昧な責任の所在や、緊張感の度合いが違います。『私がやらなければできない』、『失敗したら責めを負うのは自分であることが明確な反面、成功したら評価はダイレクト』など、正しい形の厳しさが、仕事のやりがいにつながるんです。」<br /><br />と、竹内氏は語った。プロジェクトが終了したとき、「また一緒に仕事したいね」と言われたり、思いもよらなかった人から「あの時、ああ言ってくれて本当に良かった」などと声をかけられたりした時に感じる喜びや達成感が、同社のコンサルタント達のひたむきな努力の原動力になっているのである。<br /><br />終始、笑みを顔に浮かべたまま、静かに語ってくれた両氏。「人間力」に自信があり、顧客の代わりに仕事をすることで感動したいという方は、ぜひ、挑戦してほしい。