ミカタ株式会社

ミカタ株式会社は、“いい不動産業界を作る”をミッションに掲げ、不動産会社向け追客代行サービスとメディア運営を手掛けているベンチャーである。
同社が手掛けているサービスの内容は、次のとおり。

●追客代行サービス

日本最大級の不動産会社向け追客代行サービス『追客のミカタ』を提供。主に一括査定サイトを利用している不動産会社を顧客として、当該サイトにアクセスした不動産売却を検討しているエンドユーザーの連絡先を預かり、初期対応としてのテレアポによる訪問査定獲得（短期追客）と、長期検討者にステップメールを自動送信してナーチャリングを代行する。
なお、対象ユーザーは不動産の購入検討者もカバーしている。
反響取得後から10分以内を目標とする即コールと、毎日2回×7日の最大14コール、不在時のSMS併用により、通電率70％・訪問査定率18％という高い成果を上げている。

ステップメールは、2年間に渡って120通を配信。文面は現場出身者が商談化率を上げるポイントを押さえて作成。開封状況に応じてテレアポを実施する。
「本サービスは2018年に当社が日本初でリリースし、その後大手など4～5社が追随していますが、導入企業数の累計800社・アクティブ400社、実施件数において倍以上の差を広げ、圧倒的なトップシェアを維持しています」と代表取締役の荒川竜介氏は胸を張る。

●メディア運営

不動産業界向け情報ポータルサイト『不動産会社のミカタ』をはじめ、多数の専門サイトを運営。
・『不動産会社のミカタ』：不動産売買仲介、賃貸、集客・マーケティング、転職/キャリア、業界ニュース、不動産業界での独立・開業といったカテゴリーで情報を提供。月間UU10万、月間PV15万、公開記事数3,000と、業界ポータルとしてNo.1の実績を誇る。
・『ミカタストア』：不動産業界向けサービスの資料ダウンロードなどを通じてマッチングを図る。月間UU1.2万、月間PV2.5万。

そのほか、『最新セミナー情報』『不動産会社のミカタ for 独立・開業』『不動産フランチャイズのミカタ』『役所調査のミカタ』『工務店のミカタ』『借地権のミカタ』『ミカタの不動産転職相談所』を展開。『不動産会社のミカタ』のカテゴリーを専門サイトに分けて深掘りする狙いがある。資料請求などの反響に課金する成果報酬型モデルで運営。
追客代行サービスとメディア運営の売上比率は3：1であるが、メディア運営は追客代行サービスより粗利益率が高いという特徴がある。

同社は、2018年12月に荒川氏が創業した。
荒川氏は、新卒で中堅不動産ディベロッパーに入社、投資用マンションの営業に携わる。1年半後に大手不動産仲介会社に転じ、売買仲介営業に従事。その後、“不動産×IT”で様々なサービスを提供するマンションリサーチ株式会社に移る。3年ほどの在籍期間では、主に全国の不動産会社向け営業に従事し、最後は役員として同社の経営にもタッチする。そして、同社のホールディングス体制構想と荒川氏の独立志向がマッチして、2018年12月に50％出資の子会社としてミカタ株式会社を設立する（もう50％は荒川氏が出資）。

その後、ホールディングス構想が後退したことを受け、全株を荒川氏が買い取って独資となった。
そのミカタが“いい不動産業界を作る”をミッションに掲げた経緯について、荒川氏は次のように説明する。
「中央の不動産業界に身を置く中で、情報の非対称性や、顧客よりも自らの利益を重視する傾向などに触れ、この業界を健全なものにしたいとの思いが募りました。一方、前職で地方の中小不動産会社を回る中、高い志で真摯にエンドユーザーに接し、事業に努力している多くの経営者の姿に接してカルチャーショックを受けたのです。そして、そういった地方の事業者は人材採用がままならず事業運営に苦しんでいました。こうした方々を支援し、地方からこの業界をよくしていこうと思い立ったのです」

そして、会社設立の翌月、追客自動化ステップメールをリリース。「前職時代からセミナーなどで追客業務の重要性を話し、サービスづくりも進めていた」と荒川氏は話す。
2019年4月、『不動産会社のミカタ』をオープン。ステップメールサービスの収益をメディアに投資して成長を図り、広告メディアとして収益化を図っていった。その後、初期テレアポ代行などサービスを拡充させ、今日に至る。

今後の成長戦略として、“いい不動産業界を作る”べく、まずは人材紹介サービスに力を入れていく。2025年6月に『ミカタの不動産転職相談所』をオープンしテストマーケティングを行っているが、他業界から不動産業界への流入促進を図る。
「業界をよくしていくため、未経験からの人材育成にしっかり取り組む不動産会社への紹介を徹底して行っていきます」（荒川氏）。

現在は”社員が幸せになる会社”を目指し、

・平均年収のアップ
・社員からの役員登用

を経営KPIとして、組織作りを強化している。

同社の体制は、役員2名、正社員8名、パート4名（2025年10月現在）。正社員の職制は、総合職、事務職、専門職に分かれている。

荒川氏の組織風土づくりのポイントは、「どこに行っても通用する人材を育成する」ことにある。その背景には、次のような思いがある。
「会社はいつ潰れるかわかりません。また、潰れないにしても、方針転換などで自身が思い描いていたキャリア像が描けなくなる場合もあります。そんな時に『ミカタでしか通用しない人材』だと、会社に主導権を握られ自立した人生を送ることができません。そうならないためにも、“どこに行っても通用する人材”になることで、会社と対等の関係になることができます。自らの人生に主体性を持つために、必要なことだと考えています」（荒川氏）。

このため、社員に事業づくりを任せる機会をつくるとともに、次の11項目の行動指針を掲げている。

・他責思考でなく、すべて自責で考える
・常に自己成長をするため努力する
・常に「与えること」ができる
・評論家にならず、常に行動ができる
・「質」も「量」も大事にできる
・給料を「時間」でなく「成長」の対価として考えられる
・期待を常に上回る
・感情論だけで仕事をしない人
・同意後に文句を言わない
・伝え方と受け方のどちらにも責任がある
・相手の前提を理解しての議論

この行動指針は、採用面接の段階で詳細を説明し同意を求めるほか、毎週行われる全体ミーティングで事あるごとに引き合いに出して話し、意識づくりを図っている。また、管理職に昇格する際の評価基準としても周知している。

同社では、人事考課を四半期ごとに行い、その都度昇給・昇格、および賞与の支給が行われている。人事考課は職制ごとに等級が設けられ、評価基準が明示されているテーブル制。ちなみに、決算賞与も制度として設け、最大利益の20%を社員に分配している。

人材育成の取り組みとしては、現在の課題や自分自身の問題点を把握するための１on1を定期的に実施。また、業務に関わる書籍購入はコーポレートカードでの決済が可能なほか、業務上必要な資格の取得費用は会社が負担。外部セミナー参加は事前申請不要としている。

働き方としては、フレックスタイム制を採用（コアタイムは11時から）。プライベートの事情がある時などはリモートワークも可能だ。
社内コミュニケーション活性化策としては、会社主催のQに1回のランチ会や目標達成会、締め会等のほか、社員同士で主体的に懇親会を行っている。

荒川氏はカルチャーづくりについて、次のように話す。
「規律重視3割、フラットさ7割、という感じです。ルールや礼儀は当然守る一方、役職は役割責任に過ぎず、人としてはフラットな関係でありたいと思っています。社員ともよく飲みに行きますよ」

そんな同社が求める人材像は、11項目の行動指針に共感し実践できる人であること。
不動産業界を良くすることは、人々の幸せな生活に直結する。やりがいのある仕事と言えるだろう。