COO 田村 敏郎氏 2005年大学卒業後、楽天グループ株式会社に入社し、人材メディア事業に従事。2012年にネットスーパー事業の立ち上げに参画。2014年、監査法人に移り、農産物輸出促進プロジェクトに携わる。2017年に楽天グループへ再入社し、トラベル事業やスタートアップのPMIを担当。2019年、飲食店等の情報提供サービスを手掛ける株式会社ぐるなびの執行役員、2021年、常務執行役員を歴任。2025年2月、YUIME執行役員兼事業本部長に就任し、同年9月よりCOOとして事業全体を統括。

YUIME株式会社に参画する決断をした背景は？

実家が北海道で農業を営んでいます。父が2代目なのですが、私は幼い頃から農作業を手伝って「自分は向いていない」と決め、大学進学を機に東京へ出ました。 新卒で楽天グループ株式会社に入社し、キャリアを積み重ねる中で、最終的には資本業務提携した株式会社ぐるなびの常務執行役員を務めました。提携交渉では楽天側の窓口を務め、そのままぐるなび社の経営に参加しました。コロナ禍で大きな打撃を受けた企業でしたが、黒字化の目途が立ち、私自身も楽天を卒業するタイミングだと感じ、転職活動を始めました。 転職活動が佳境に差し掛かったタイミングで、VCから「YUIME」を紹介されました。農業を継ぐことはありませんでしたが、農業に育ててもらい、大学まで出してもらったという意識はずっと心の片隅にありました。いつか何らかの形で農業に恩返しがしたい。そんな思いが、当社との出会いで動き始めました。 話を聞くと、当社は農家への特定技能外国人派遣において、既に実績を持つパイオニア的な存在。農業関係のスタートアップの多くの会社が顧客開拓と収益化に挑戦しているなかで、当社は顧客開拓を軌道に乗せ、農業顧客支援を着実に進めていました。現場に根ざした事業モデルと、社会課題への実効性あるアプローチに強く惹かれ、ジョインを決めました。

YUIMEで事業本部長として、IPO準備でどんな取り組みをしましたか？

入社と同時に事業本部長に就任し、まず取り組んだのは営業体制の整備でした。これまで業務フローが定まっておらず、社員がそれぞれの裁量で属人的に動いていたため、マネジメントを意識した組織への変革を進めています。計画に沿って成果を出せる営業体制の確立が、現在の最優先課題です。 それと並行して、地方拠点の整備にも着手しています。これまでは出張ベースで営業活動を行ってきましたが、クライアントの多くが地方に拠点を持つ企業であることから、営業拠点も東京ではなく地方に構える方針に切り替えています。現地で営業人材を採用し、東京本社で支援する体制へと移行する計画です。 当社は現在、IPOに向けた準備を進めているフェーズにあります。組織変革を進めるには絶好のタイミングであり、私が当社を選んだ理由の一つでもあります。前職の楽天では、IPOを経験した先輩から当時の様子を聞いており、私自身もIPOに向かって邁進する勢いのある組織で働く経験をしてみたいと考えていました。当社では、まさにその願いが叶えられそうです。

YUIMEのCOOとして、一次産業支援に向けて、どのような経営基盤づくりに取り組んでいますか？

当社を、強い会社にしたいと考えています。現在はIPOを目指している段階ですが、上場はゴールではなく、むしろスタート地点。「日本の一次産業を世界の一流産業にアップデートする。」というビジョンを、地に足の着いた事業として実現する会社にならなければなりません。そのために重要だと考えているのは、事業が持続的に成長できる企業へと進化させていきたいと考えています。 当社のビジョンの実現には、短期的な成果ではなく、長期的な取り組みが必要です。継続的に成果を発揮し続ける会社であるために、まずは既存の特定技能外国人派遣事業で安定したキャッシュフローを生み出し、それをスマート農業など、農業生産現場の生産性向上に寄与するITテクノロジーへと投資していく流れを想像しています。 一次産業の現場に根ざした地に足の着いた事業と、テクノロジーによる未来づくり。その両輪を回しながら、当社を社会に必要とされる企業へと育てていきたいと思っています。

YUIMEの事業全般において、エンジニアにはどのような役割や貢献を期待していますか？

まずは、既存事業である特定技能外国人派遣において、ソフトウェアの力で業務の効率化を図ることが最優先だと考えています。現在、社内システムの開発を進めており、それに伴ってエンジニアチームの組織化も進行中です。既存事業で安定したキャッシュフローを生み出せるようになれば、そのネットワークを活用して、スマート農業や農業DXにも挑戦できる考えています。 当社の強みは、既に農家との深い関係性を築いている点にあります。この点においては、他社にはない優位性があると感じています。だからこそ、まずは既存事業で当社も農家もキャッシュをしっかりと生み出し、その後にテクノロジーへ投資するという順序が、最も現実的で持続可能な道だと信じています。 当社は、本当に現場を大切にする会社です。農業の現場との繋がりは、短期間で築けるものではなく、時間と信頼の積み重ねが必要です。その関係性は今後も大切にしていきたいと思っています。ただし、現場に寄り添いすぎて近視眼的になってしまっては、「日本の一次産業を守る」という壮大なビジョンの達成は難しくなります。現場への敬意と未来への視点、その両方のバランスを取りながら、農家からの信頼を着実に積み上げていきたいと考えています。

仕事をする上で大切にしていることは？

「正直は最大の戦略」これは私のモットーです。 正直に自分の意見を伝えること。素直に他人の話を聞いて情報を得ること。この二つを大切にしています。そして、自分自身に対しても正直であること。見栄を張らず、強がらず、できることはできる、できないことはできないと認める。そこをスタート地点にして、できることを一つずつ増やしていく。すると、人材としても成長できると確信しています。 体力と気力がセットで揃わないと、高く飛べず、遠くへ行けません。人生も事業もマラソンと同じです。全速力で駆け続ければ、体力を消耗し、気力も失われていく。そうなれば、モチベーションは続かず、ミッションもビジョンも実現できません。何かを成し遂げるには、焦る必要はありません。最適なペースを守りながら、攻めの姿勢を貫いていれば、結果は必ず付いてきます。 IPOを実現し、資金調達に成功し、事業が順調にグロースする局面では、組織が浮足立つタイミングが必ず訪れます。その時に「正直であり続けよう」とメッセージを発するのが、自分の役割と思っています。オーナー経営者は、孤独な存在です。だからこそ、彼らの右腕となる私達が、正直に議論できることが、会社の成長や強さを決めると信じています。