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インタビュー画像代表取締役CEO Chief Well-being Designer 作業療法士 大阪大学医学部保健学科 招聘教員 鎌田 大啓氏 世の中に「well-being」を広めるために、介護業界の業務改善・組織開発に情熱を持って取り組む経営者。大学卒業後、夜間専門学校に通い、作業療法士免許を取得。病院勤務を経て、医療法人が展開する介護事業所のセンター長として、自立支援を軸とした介護サービスを展開。吹田市介護保険事業者連絡会会長としても多くの介護事業者、行政、住民と交わるなかで、業界の課題を痛感し、2015年に株式会社TRAPEを設立。

介護業界で働き始めた理由は?

高校生の頃、新聞記者になりたいと思っていました。人間味のある仕事に憧れ、ヒューマニティーを大切にする職業に強く惹かれていました。大学1年生の時に新聞の朝刊制作に関わるアシスタント業務のアルバイトを始め、大学3年生まで続けていました。学生時代に新聞社で働く経験を積むと就職活動で有利になることもあり、一緒に働いていた先輩の多くが、そのまま新聞記者として就職していきました。しかし、新聞記者の仕事には憧れつつも、家庭を顧みる時間が限られる働き方に疑問を抱き、記者の道を断念。大学卒業後は夜間専門学校に入学し、作業療法士の資格取得を目指しました。 昼間は働き、夜は学校に通いながら、週に2日、地域のリハビリ施設や訪問看護施設、デイサービス施設等で、無償ボランティアとして現場での実践経験を積みました。資格取得後は急性期病院で患者さんのリハビリを支援する業務に携わりました。また、専門学校の同期が国家公務員共済組合連合会の病院で作業療法室を立ち上げた際、その運営をサポートする役割も果たしました。

介護業界では、どんなキャリアを歩んできましたか?

通所リハビリの職員として入った医療法人で、訪問看護ステーション部門の看護師が一斉に退職するという事態が発生しました。その影響で訪問看護ステーションの継続が困難となり、法人の経営にも大きな打撃が及びました。そんな中、私は利用者へより良いサービスを提供するための課題や改善策を積極的に提案していたことから、事業の再建を任されることになりました。 私は、法人内の各部署が個別に業務を進めるのではなく、統合し、連携を強化することが、地域全体の介護環境を改善する鍵だと考えました。そこで、訪問看護ステーション、通所リハビリ、ケアプランセンターの部署が連携を強めるために「地域事業部」を立ち上げ、その部長として業務を開始。後に組織は「地域事業センター」へと格上げされ、私もセンター長に昇格しました。 訪問看護事業の立て直しに取り組んでいた際、介護現場では慢性的な人手不足が問題になっていることを痛感しました。作業療法士として、利用者の起こし方、車椅子への移動、食事介助の方法等、現場で困っている点について無料研修を実施し、支援を行いました。その活動が地元のケアマネジャーの間で評価され、事業者連絡会の会長を引き受けてほしいとの依頼を受けることになりました。

株式会社TRAPEを設立した背景は?

事業者連絡会は、施設部会(特養・老健)、ケアマネ部会、通所部会(通所介護・通所リハビリ)、訪問介護部会、訪問看護・リハビリ・入浴部会、福祉用具貸与部会、グループホーム・特定施設部会、小規模多機能・サービス付き高齢者住宅部会等、各分野のトップが集まり、介護事業所の課題解決や地域と行政の連携に取り組む会です。市の行政と政策について議論する中で、グランドデザインの把握や課題の深掘りに苦戦する担当者が多くいることも実感しました。そこで、厚生労働省の担当者と直接対話する機会をつくるため、厚生労働省主催のセミナーに積極的に参加し、終了後は必ず名刺交換を行い、自身の考える地域づくりや介護について意見を伝えることを続けました。 こうした活動を続けるうちに、厚生労働省の担当者やセミナー参加者とディスカッションする機会が増え、業界の裏話を知ることもできるようになりました。そして、私自身の存在も認識されるようになり、介護業界の構造や課題をより深く理解することができました。 従来の介護事業のやり方では、これからの時代に対応するのが難しくなると感じ、地域の人々を主語に据えた視点で、保険内サービスの在り方や新たな付加価値の創出、さらには保険外サービスを含めた包括的な介護の在り方を考える必要があると確信しました。その思いから、当社の設立に踏み切りました。

山崎CSOを共同経営者に迎えた経緯は?

地域資源を「Reデザイン」し、介護事業をより価値のあるものにするコンサルティング会社として当社を立ち上げました。しかし、当初は自分のビジネススキルが不足していることを痛感し、事業の成長に十分な推進力を持たせることができませんでした。介護事業所の改善に関するコンサルティングには自信がありましたが、市場を開拓し、事業を広めていくことは苦手だと気付きました。そこで、ビジネスサイドを任せられるパートナーを探し始めました。 そんな折、現在のCSOである山崎の記事をネットで読みました。公認会計士として監査法人でキャリアを積んだ後、金融分野で活躍し、アメリカにある大学の経営大学院でビジネスを学んだ人物です。記事の中で、彼がヘルスケア分野に強い関心を持っていることを知り、「ぜひお近づきになって、学ばせてもらいたい」と思い、SNSのアプリを通じてメッセージを送りました。驚くことに、彼から返事がありました。 彼が日本に帰国した際、東京駅近くのカフェで初めて会話を交わし、その後も当社の事業に関する情報を定期的に共有しました。そして、約2年が過ぎた頃、思い切って「パートナーになっていただけませんか」とお願いしたところ、幸運にも快諾を得ることができました。彼は資本を投じ、共同経営者として当社のビジネスサイドを担当することになりました。

「well-being」に着目し、それをミッションに掲げている理由は?

昔から、人の可能性を広げ、自らの活動に意味を持たせることが大切だと考えてきました。当社を立ち上げた直後に「well-being」という概念を知り、その重要性をより深く認識しました。WHO(世界保健機関)は、well-beingを「個人や社会の良好な状態」と定義し、身体の健康と同じく日常生活の重要な要素であり、社会的・経済的・環境的な状況によって決定されると述べています。日本の厚生労働省も、「個人の権利や自己実現が保障され、身体的・精神的・社会的に良好な状態にあること」と定義しており、精神と肉体の健康、そして社会的満足が組み合わさった状態こそが、真のwell-beingだと考えています。 厚生労働省も、就業環境におけるwell-beingの向上が、労働者一人ひとりの能力発揮を促し、企業の生産性向上に繋がると提言しています。その結果、就業環境全体のwell-being向上へと発展するとされています。私自身も、仕事の生産性向上によって働く人々の心と身体に余裕が生まれ、それがwell-beingの実現へと繋がると考えています。 生産性の向上を通じて、意図的に非効率な時間を確保できる環境を整えることで、人は本当に大切なものを見つけ、充実した人生を築くことができる。そんな信念を持って、事業に取り組んでいます。

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