株式会社カジトル

株式会社カジトルは、クライアントの課題に向き合い、コンサルティングとプロジェクトマネジメントを軸にインフラ構築やシステム開発、BPOまで、一貫して支援する企業である。人材提供のみにとどまらず、提案から実行、運用に至るまでを担う「伴走型支援」の体制を整えている点に特徴がある。

代表取締役の田中慎二氏は、もともと「人と同じ道を歩むより、自分なりの選択をしてみたい」という気持ちを抱いていた。とはいえ、社会人としてのキャリアをスタートさせた当初から独立や起業を強く意識していたわけではない。むしろ、サラリーマンとして収入や役職を高めていくことを当然と考え、家を買う、出世する、家庭を持つといった社会的に「正しい」とされる人生設計を意識していた。

そんな価値観を大きく変えるきっかけとなったのが、私生活での変化だった。家庭という責任から解き放たれたとき、「荷を下ろしたら、こんなに自由な世界が広がっていたのか」と気づいた。思いがけず訪れた解放感とともに、心がわくわくする感覚を味わった。「自分はこんなに自由でいいのか」と実感したことが、起業へと一気に動き出す原動力になったという。

その頃、同世代の多くは会社で着実にキャリアを積み、役職に就き始める時期を迎えていた。順調に見えるその姿に対し、田中氏は「本当にそれが望んでいた道なのか」という違和感を抱いた。重い荷物を一生背負うことが人生の目的ではないはずだ。少し背中を押してくれる人がいれば、誰でももっと自由に違う道を選べるのではないか――そう考えるようになった。
「人はもっと自由に生きていい。働き方やキャリアも、自分で選び、自分で舵をとるものだ」そんな田中氏の思想は、社名「カジトル」に込められている。

起業にあたり、まず着目したのはIT人材のマッチングであった。かつて大手人材企業で派遣事業に関わった経験があり、エンジニア派遣の仕組みには親しみがあったことが背景にある。しかし田中氏が見据えていたのは単なる人材ビジネスではない。
「マッチングはスキルやタイミングで決まる世界。でもそれだけでは、人が変化するきっかけにはならない。キャリアプランがすべてではなく、自分の強みややりたいことをシンプルに考えればいいのに、多くの人が社格や既成概念に縛られてしまっている」（田中氏）。

田中氏にとっての最終的な目的は、人が幸せに生きることである。会社で働くことがその目的に直結する人もいるだろう。しかし、そうでない人も多い。だからこそ「気づきを与え、ロードマップを描き、一緒に伴走する」存在としてカジトルを立ち上げた。「既成概念を打ち破り、自由な選択を後押しすることが社会的価値になる」と確信している。

同社の事業の軸は、IT/DXコンサルティングとプロジェクトマネジメントである。経営課題を上流からとらえ、戦略立案や業務改善を進める中で、必要に応じてシステム開発、BPO、CRM、研修、クラウド構築といったITソリューションへと派生させている。
強みは、質の高い人材を適正なコストでアサインできる点にある。コンサルティングファーム出身者も多く、大手に依頼した場合の半分程度のコストで同等の質を提供できるケースもある。必要な期間にハイスキルの人材を必要なタイミングで投入できる機動力は、クライアントにとって大きな魅力だ。さらに、フリーランス人材を柔軟に組み合わせ、社員がクオリティを担保する体制を整えていることも安心感に繋がっている。

同社にハイスキルな人材が集まる背景について、田中氏は次の見解を示す。
「30代では『このまま大企業でキャリアを積むのか、それとも別の働き方を選ぶのか』という問いが生まれる。50代では『残りのキャリアで何をするか』を考える時期に差し掛かる。そうしたとき、カジトルの案件供給力やビジョン提示力は、個人にとって現実的かつ魅力的な選択肢となります」

また、社員の発案から生まれた結婚情報サービス『カジトル縁結び』のように、法人向け事業に加えて個人向け事業にも挑戦している点も特徴的である。「社員には頭の中の20％ぐらいでいいので、転職よりも起業や独立への意欲を持っていてほしい」という。田中氏のこの言葉には、自らの意志と決断で自由なキャリアを築いてほしいという。これは、“自分のキャリアの舵を自分で取ってほしい”という創業時からの想いの表れだ。

将来像としては「どこにいても、どの国からでも働ける世界」を掲げ、日本の仕事の質や誠実さを世界に広めることを目指している。すでにマレーシアやドバイに拠点を設け、若手社員の海外派遣や語学研修を進めており、田中氏自身もクアラルンプールに拠点を移す予定だ。こうしたグローバル展開に加えて、同社が注力する技術領域はパブリッククラウド、AI、CRMの3分野である。クラウド構築やアーキテクト設計の知見を基盤に、AIを取り込んだ新しいシステムの形を追求し、Salesforceを中心とするCRMビジネスでもケイパビリティを強化していく方針だ。
「海外から日本、日本から海外、さらには海外同士。場所に縛られない働き方を実現していきたい」と田中氏は語る。創業時からの「自由に生き、自ら舵をとる」という思想は、グローバルかつ技術的な挑戦へと繋がっている。

カジトルの働き方の特徴は、「自由」と「自律」が共存している点にある。
出社したい社員には出社を、集中して在宅で働きたい社員にはリモートを――。
その時々の目的やライフスタイルに合わせ、自分の働き方を自分で選ぶことができる。

実際に、地方からフルリモートで働くエンジニアも多い。
自分の生活やリズムに合わせて働き方を設計しながら、Slackやオンライン勉強会、社内ラジオなどを通じて常に意見を交わし合う。距離があっても連携は密で、誰かの指示を待つのではなく、自ら考え動く姿勢が組織全体の推進力になっている。

「自由は与えられるものではなく、自ら選び取るもの。その選択に責任を持つことで、人も組織も強くなっていく」
代表の田中氏はそう語る。
自由度の高さは“結果を出すための裁量”を意味し、社員一人ひとりの判断力と意思を尊重する文化の表れだ。

互いの“内なる羅針盤”を感じ合えるように――それがカジトルの考える一体感だ。
象徴的なのが「カジトルラジオ」。社員が代表をインタビューし、少年時代の夢や影響を受けた本など、仕事を離れたテーマを自由に語り合う。肩書を越えて“人としての物語”を知る時間が、自然と信頼を育んでいる。

互いを理解し合うことで、自律と共創が生まれる。
そんなカルチャーの根底には、明確なビジョンが息づいている。
カジトルは今後5〜10年で社員100名規模を目指しているが、「投資家の意向に縛られてまで急拡大することは考えていない」と田中氏は言う。資金調達はあくまで銀行借入のみ。外部の評価軸ではなく、“社員と顧客に価値を届けること”を最優先にする――それがカジトルの信念だ。

「自由に生き、自由に働くことを多くの人が体現できれば、企業も社会も変わっていく。その仕組みをつくることが、私たちの挑戦です。」

与えられた航路ではなく、自分の手で舵をとる。
その覚悟と好奇心を持つ人であれば、フリーランスとして、あるいは正社員として、カジトルでの新しい挑戦を歓迎している。

自分のキャリアの舵を取り、自由を形にする第一歩を――
その航路を、カジトルで描いてみてはいかがだろうか。