inaho株式会社

作物の収穫や葉かきを自動で行う『マルチ台車ロボット』等を開発・提供するinaho株式会社。自社プロダクトをはじめ、農業参入支援コンサルティングも行うなど、農業にまつわる課題にテクノロジーで向き合うベンチャー企業だ。

代表取締役CEOの菱木豊氏はこれまで、不動産投資コンサルティングやイベント運営といった事業で活躍。その中でAI関連のセミナーに関わり、AIやロボティクスに興味を持つように。さらに地元・鎌倉の農家と出会ったことで農業にも着目しはじめる。「AI×農業で何かできないか」と、自らの足でAIやロボティクスの専門家、そして数々の農家や農業関連団体へ会いに行き、両分野の知見を高めた。まだアグリテックへの注目がそこまで高まっていなかった頃から続けてきた事だ。

菱木氏はこのように語る。

「農業は自然相手の仕事であり、春夏秋冬といった季節や地域などで育てる作物も多様に変わります。AIが学習するには、膨大な時間がかかる領域なのです。農家の方々と力を合わせ、その研究を根気強く続けて培ってきた我々の知見は、アグリテック市場でもかなりの強みだと自負しています」

現在同社では、大きく分けて3本の軸で事業が進められている。

一つ目は、『マルチ台車ロボット』『トマト収穫ロボット』『高畝アスパラガス収穫ロボット』といった自社プロダクトの開発・運用事業。二つ目は、クライアントのニーズに応じたAIロボティクスの共同開発。また三つ目として、営農計画の立案から担う農業参入コンサルティングも行う。「AI×農業」をテーマに、農業に関わるクライアントを総合的に支援しているのだ。

複数の自社プロダクト開発を着々と進めながら、ここまで手を広げられるのも、確かな知見が社内に蓄積されているからだろう。

同社の事業は、技術面だけでなくサービス面でも大きな特徴を持つ。その代表は「導入ハードルの低さ」と「伴走体制」だ。ここでは例として、自社プロダクトについて取り上げたい。

まず、導入ハードルの低さについて。

一般的に、農業ロボットは機能が豊富で高単価なプロダクトが目立ちます。しかし、例えばスマホでも使用したことのない機能は多いのではないでしょうか。農業ロボも同じで、農家の規模や育てる作物によって使う機能は異なります。使わない機能が付いてプロダクトがリッチになる分、価格も上がってしまい、ますます農家にとって手の出せないものになってしまいます。

そこで同社は、シンプルさを重視したプロダクトを提供。一台あたりのコストを押さえ、複数台を導入することで効率も上がり、費用対効果も期待できる。

また、購入型だけでなくレンタル型も選べる事で、さらなるコスト削減を実現。

そして同社のもう一つの特徴が、伴走体制だ。

先述のレンタル型サービスは、プロダクト導入後の現場のオペレーション構築も支援している。それぞれのファームに適したプロダクトの使用方法を共に考え、実践してもらう事で、より高い費用対効果を実現している。

自社プロダクトはもちろん、受託開発やコンサルティングにおいても、同社の知見と姿勢は高く評価されている。紹介を受けて、続々と新たなプロジェクトが始まっている。

しかし、同社の追求はまだまだ終わらない。

近年、同社はオランダにも研究・開発拠点を設立。農業ロボティクスの需要が高いオランダで研究開発を重ね、日本向けのプロダクトやサービスへの展開はもちろん、各国にローカライズされた支援にも役立てる狙いだ。

また、国内では自社圃場の運営もスタート。「農業を支援する自分たちも、一つのファームをきちんと運営できる立場でなければ」という真摯なマインドから生まれた事業だ。

オランダでの研究開発や自社圃場での経験も味方につけながら、世界の農業界で支援できる領域を広げていく。

菱木氏をはじめ、この市場でトップを本気で勝ち取りに行こうとしているメンバーたちに注目したい。

執行役員COOの久米田晶亮氏はこれまでに、在籍企業の子会社立ち上げや新規事業のグロースに貢献し、IPOも実現させている。CTOの松尾雄希氏は国内大手自動車メーカーを経て、ロボティクス企業を起業。累計20種類以上のロボットアーム・モバイルマニピュレータ・ヒューマノイドロボットを開発・販売してきたスペシャリストだ。ビジネス面でも技術面でも、ここまで確かな実力を積んだ経営陣がいるのだ。

他のメンバーも、“自分の手でビジネスを成功させたい”“本気でものづくりに携わりたい”という熱い思いを持ってジョインしてきた人が多い。

例えばとある制御エンジニアは、同社の『トマト収穫ロボット』等の収穫の仕組みを独自に開発。複数の手法を何度も試した結果、野菜をキレイに収穫しながらスピードも担保して業務効率アップできるプロダクトの開発に貢献した。業界に答えがない中、トライ＆エラーを繰り返し、一つの正解を導き出す同社を象徴するメンバーだ。

今後ジョインするメンバーも、「日本、そして世界の農業を変える」という野心を持った人を迎えたいという。農業やアグリテックへの知見は、熟練のメンバーや農家の現場から学べばOK。ジョイン前の知見よりも、持ち前の自走心と探求心が活躍のカギとなりそうだ。

なお自走という点では、オンオフのメリハリも自分次第。社内では子育てと両立するメンバーが8割に上る（2025年6月現在）。フレックスタイム制も活用しながら、自分自身でバランスを調整して活躍する社員が多く、その点も大きな安心ポイントだ。

農業の未来を懸念するニュースが多い世の中に、同社はテクノロジーを味方に立ち向かっている。もし今後農家が半減したとしても、現在と同じ価格帯で作物が世にわたり、かつ農家のビジネスや生活が潤っていく――。そんな持続可能な世界の引き金を、同社が握っている。想像するだけでワクワクしないだろうか。これから大きく世界を変えるinahoに、ぜひ仲間入りしてほしい。