卒業後から創業までの経歴を教えてください。
2005年、宮城県にある大学の大学院博士課程を修了後、国立研究開発法人の研究所に入所し、AIを活用した数理解析やエネルギーシステム解析、環境影響評価の研究に従事しました。2011年からはアメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)に客員研究員として出向し、AIを用いた先進的な研究に取り組み、2019年から2020年にはOECDにて環境評価やデータ解析業務に携わりました。 国立研究開発法人の研究所に入所する際、「45歳までに起業」「最先端の海外研究機関での経験」「環境分野での専門性確立」の三つを目標に掲げました。その上でMITではビジネス人材との交流を通じて起業に向けたスキルを習得。2014年には株式会社ビットソーラー(現・エイゾス)を設立し、AI技術を活用した解析ツール『Multi-Sigma』の開発に着手。2018年に社名を現在のものに変更し、より実践的な技術支援を行う体制を整えました。
目指す会社像やビジョンを教えてください。
私達は、AIの力を活用することで、人間による非効率な試行錯誤を効率化し、必要最小限の労力で、誰でも簡易に最適な解を導き出せる未来を実現したいと考えています。 『Multi-Sigma』の開発の原点は、私が博士課程で行っていた研究にあります。当時は巨大なプラズマ装置を用いてナノ微粒子を生成する実験をしており、1回の実験に半日から丸一日かかることも珍しくありませんでした。そのため、効率良く実験条件を最適化する手法を研究していました。当時研究していた知見をもとに、同じように試行錯誤に悩む研究者をサポートしたいという思いが芽生え、『Multi-Sigma』の開発をスタートしました。そして、2021年1月に正式リリース。現在では上場企業や国立研究機関、公的機関等にも導入され、200社を超える実績を積み上げています。
河尻様にとって“仕事”とは何でしょうか。
私にとっては「趣味」のようなものです。元々研究が好きでこの道に進みましたし、データを眺めたり、コードを書いたりするのが純粋に楽しいんですよね。人生の大部分の時間を仕事に使うわけですから、その時間を楽しめることは、すごく大切だと思います。 技術や開発の世界では、一朝一夕に成果が出ることはなくて、コツコツ積み上げていくことで結果に繋がります。そういう意味では、自分が最も信頼できる開発パートナーは「過去の自分」かもしれませんね。多くのプロジェクトを手掛ける中で、正直、自分が書いたコードの全てを覚えているわけではありません。しかし、過去のコードを見返すと、「過去の自分もちゃんと考えていたんだな」と感じるんです。会社の意思決定もしかりですが、過去の自分が丁寧に考えて残してくれたものが、今の自分を支えてくれている。だからこそ、今の仕事も未来の自分を支えるために、丁寧に積み重ねていきたいと思っています。
社員に求める仕事への取り組み方は何ですか。
まず、大事にしているのは「プロフェッショナルであること」です。自分の仕事に対してちゃんと興味を持って、責任感を持って関わっていく姿勢が大切だと思っています。当社は裁量が大きいので、自分で作ったものがそのまま世の中に出ていくこともあるんですよ。だからこそ面白いし、同時にプレッシャーもある。こうした環境で、信頼できる仲間達と楽しみながら働いてほしいと思っています。 当社はまだまだ成長中の会社ですので、日々やるべきことが変わっていきます。その変化に対して柔軟であってほしいですし、変化を楽しみながら付いてきてくれると嬉しいですね。 また、海外とのやりとりも増えてきているので、グローバルな環境も楽しめると良いなと思います。将来的には、いろいろな国にオフィスを持つのが夢です。そんな未来を、社員のみんなにもワクワクしながら一緒に描いていってほしいですね。
社員のモチベーションアップのために意識・工夫していることはありますか。
お客様からの評価を、意識的にチーム全体で共有するようにしています。自分達の手掛けた製品やサービスが実際にどう使われ、どんなふうに役立っているのかを知ることは、ものすごく大きなモチベーションになります。「自分の仕事が人の役に立っている」と実感できることで、次の仕事への意欲にも繋がっていくのです。 それから、誰かが間違った時にはきちんと指摘し合える環境を大事にしています。時には、私自身が結構鋭く突っ込まれることもありますね。しかし、それは良いディスカッションができている証拠でもあって、フラットに意見を出し合える文化を育てたいと思っているんです。社歴や肩書に関係なく、互いにリスペクトしながら誰でも自由に意見を言える。そういう空気があるからこそ、モチベーションも上がりますし、企業としても成長できると感じています。