株式会社エイゾス

「データに価値を、すべての人々にAIの力を。」を掲げ、最先端の技術で社会課題に挑むベンチャー企業――それが株式会社エイゾスである。

工学博士・河尻耕太郎氏と商学博士・河尻理恵子氏によって設立された同社は、「研究を通じて得られた知見を、社会的な課題の解決に役立てる」ことを使命に掲げ、学術的知見と技術力を融合させた最先端のAIソリューションを提供している。耕太郎氏が開発に携わった『Multi-Sigma（マルチシグマ）』を軸に、最先端のAIの知見をもとに、お客様のデータ解析を支援するコンサルティングサービスを展開。国の研究事業も含め、多様な業界からのニーズに応え続けている。

現在、同社の事業は大きく三本柱に分かれている。一つは、自社開発ツール『Multi-Sigma』の提供である。このツールは研究者を中心に広く活用されており、少量のデータからでも高精度な解析を可能にする点が特長である。二つ目は、そのツールを生かしたAI活用のコンサルティング事業だ。AIの導入が進む中で、「人間がAIをどう使いこなすか」という新たな課題に対し、知見とノウハウで応えている。三つ目は、お客様のニーズに応じた、受託型の研究開発である。既存のアプリケーションでは対応できないようなビッグデータの解析や、企業独自のアプリ開発等、オーダーメイドでの技術提供を行っている。

同社の核となるツール『Multi-Sigma』は、他にはない三つの大きな特長を持つ。第一に「少ないデータでも活用可能」である点。一般的なAIではビッグデータが前提となるが、本ツールは20個程度、場合によっては5個程度のデータからでも学習・予測が可能である。

第二に「多目的な解析と最適化を同時に実現できる」という点が挙げられる。一般的な機械学習ツールは、単一の予測結果を出力するのが限界であるが、『Multi-Sigma』は最大で100個ものパラメータが出力できる。さらに、単なる予測に留まらず、AIがその予測結果を基に最適な条件を導き出す「最適化」まで実行。すなわち、最適化アルゴリズムが予測AIを活用しながら、複数の目的を同時に満たす、最適なパターンを自ら導き出してくれるのである。

そして第三に挙げられるのが、「世界最高クラスの予測精度」だ。同社は深層学習における二つの手法に特化し、それらを独自のコア技術によりオートチューニング。深く使いこなすことで、少ないデータでも極めて高い予測精度を実現している。この技術力は国際特許としても認められており、同社の強みの一つとなっている。

『Muilti-Sigma』は、数値解析を対象とした汎用的な解析プラットフォームだが、現在はさらに特定の分野に特化した専門的なツールの開発や、新たなソリューションの開発を行っている。

『Multi-Sigma』の開発原点は、耕太郎氏が博士課程で直面した問題に起因している。約20年前の当時、耕太郎氏は巨大プラズマ装置を用いてナノ微粒子の生成実験を行っていたが、一つのデータを得るのに半日から1日を要する過酷な作業であった。

「少ないデータで多入力・多目的な研究をどう進めれば良いのか。どうすればもっと効率的に成果を出せるのか。そんな問いを日々自分自身に投げかけていました。同じような課題に直面している研究者は他にもいるはずだ――そう考えたことが、『Multi-Sigma』開発の原動力となったのです」と、耕太郎氏は語る。

『Multi-Sigma』は、あらゆる業界・分野で応用可能な汎用性の高いAIツールである。売上予測、機械工学、ヘルスケア、農学、マーケティング等、数字データさえあればどんなテーマにも対応可能だ。導入実績は既に200社を超え、上場企業や国立研究機関、公的機関との取引も多い。民間と公的機関の割合はほぼ半々であり、日本の研究開発領域に広く貢献していることは言うまでもない。

社名の「エイゾス（AIZOTH）」には、「AIは現代の錬金術である」という思想が込められている。由来となったのは「Azoth」という錬金術に登場する万能の石。眠っているデータに価値を見出し、社会の役に立てるという思いを、この名前に託した。

直近4年間で売上は20倍、社員数は直近1年で2倍に拡大した同社。だが、ゴールを100%とするならば、今はまだ1～10%の段階に過ぎないと耕太郎氏は語る。

「日本には上場企業が約3,000社、大学や公的研究機関も800以上存在しています。現時点で当社がリーチできているのはほんの一部に過ぎません。国内市場だけでも成長余地が十分にありますが、世界に目を向ければ、顧客対象はさらに広がります。当社も海外展開を視野に入れており、既に米国では『エイゾスアメリカ』を設立。現地のダイレクターが事業を推進しています」（耕太郎氏）。

データの可能性を信じ、その力を誰もが引き出せる世界を目指す同社。科学と社会の架け橋として、世界中の研究者や開発者を支えながら、同社はさらなる高みを目指して走り続けている。

社員の数は少数精鋭でありながら、上場企業から国立研究機関に至るまで200社以上への導入実績を誇る同社。平均年齢は35～40歳で、各業界で経験を積んできたメンバーが集まっている。女性のエンジニアや海外出身の研究者等も在籍しており、多様な価値観が共存する職場環境だ。

「開発者会議」「プロジェクト推進会議」「AI活用研究会」等の場を定期的に設け、情報共有と学びの機会を豊富に用意している。最先端の技術事例や実装ノウハウに触れることで、常にスキルアップできる環境と言えるだろう。

基本的に残業はほとんどなく、フルリモートも可能。フルリモートを希望する場合は、入社後は短期間（1～2週間程度）の出社期間を設けており、その際の交通費・宿泊費等は会社が全額負担する。これは、実際に顔を合わせて共に働くことで、チームメンバーの努力や強みを体感し、組織としての一体感を高めることを目的としている。

「当社には、世界最先端の技術に触れてきた優秀なメンバーが揃っています。私自身も現役でコードを書いていますが、以前、ある開発タスクをメンバーの一人に任せたところ、わずか30分で仕上げてきたのです。それも、私の期待を大きく超えるクオリティーでした。当社では、それぞれが得意分野を持ち、その領域では誰もがスペシャリストです。だからこそ、互いの力を尊重し合い、信頼して任せ合える関係が築かれています」（耕太郎氏）。

また、社内の人間関係は良好で、離職率も低い。「穏やかで優しい性格のメンバーしかいません。できるだけ仲良く、楽しく、持続可能な形で働けるように給与面や柔軟な働き方等は整えています」と耕太郎氏は話す。

同社が目指すのは「AIの民主化」だ。かつては限られた人だけが使いこなせたAI技術を、誰もが自由に扱える時代に変えていく。さらには、通常のデータサイエンティストでも出来ないようなことが、ツールを使うことで誰でも出来る世界を目指す。その第一歩として、「取りっぱなし」になっていたデータに光を当て、誰でも簡単に活用できるツールを提供している。AIに興味さえあれば、専門性は入社時点では必要ない。チーム制での開発体制を採用しているため、安心してチャレンジできる環境だ。

世界最先端の技術を用い、優秀な人々が肩を並べて仕事に取り組む同社。AIで世界を変えたい、社会に貢献したい。自分の技術を武器に、新しい価値を生み出したい──そんな志を持つ人を、同社は心から歓迎する。