株式会社ユー・エス・イー

自らを「ITコンシェルジュ」と称し、クラウドシステム開発をはじめとしたDX支援を手掛ける株式会社ユー・エス・イー。設立は1970年。世界を代表するIT企業もまだ誕生していない時代だ。そこから同社は、数々の大手企業のIT環境を支えてきた。

創業者は、代表取締役会長の吉弘京子氏。コンピュータというとてつもなく未来的で大きな存在に出会い、「こんな革命的なものを味方にすれば、何か素晴らしいものを生み出せるかもしれない」――そう考え、20歳で一念発起。まずはキーパンチャー事業から同社の歴史を始めた。

そんな老舗企業でありながら、「挑戦と行動」を経営理念に掲げてきた同社。「今、世界で求められていることは何か」と、時代に即したニーズを追い求めてきたのだ。現在注目のクラウドシステム開発を既に看板事業にしていることからも、あくなき挑戦心がうかがえる。

例えば、国内のIT・通信関連企業が新たなサービスを始める。例えば、海外の有名企業が日本進出を決める。そのたびに同社はいち早くその技術をキャッチ。時にはその企業の社長へ直談判し、勉強させてもらったという。その熱意を買われ、業務提携を結んだクライアントも多い。

「これまでにNTTグループや日本オラクル株式会社、株式会社セールスフォース・ジャパンといった企業のパートナーになれているのも、会長の吉弘が世界へアンテナを張り続け、“今、求められるサービス”を見極めてきたからだと考えています」そう話すのは、執行役員であり、事業サポート本部人事統括部の統括部長も務める宮﨑正樹氏。

「“ITコンシェルジュ”という位置付けにも、しっかりと意味を込めています。私達が提供しているのは、システムではなく、サービスなんです」（宮﨑氏）。

単にクライアントからの指示をこなすのではない。そのシステムがどんな目的で使われるか、どんな場面で使われるか。そのシステムがクライアントの何を変えるか、そしてどこまで満足してもらえるか。――そこまで考えた上で開発し、提供しなければ意味がない。だからこそ、IT領域をトータルに提案できる“ITコンシェルジュ”として自社を発信しているのだ。

同社の手掛けたシステムは、私達の暮らしに深く根差している。

例えば、リアルタイムで道路の交通状況を確認できるサービスや、航空機チケットの発券システム。これらのサービスやシステムに、知らないうちに触れている人も多いかもしれない。

NTTグループをはじめとしたIT・通信関連企業はもちろんのこと、旅行代理店や鉄道会社、自動車メーカーといった大手企業の直接取引も盛ん。また官公庁や医療機関のシステム開発も数多く手掛けている。業種を絞らず、ニーズのある企業にとことん向き合うのがユー・エス・イー流だ。

「長い歴史の中で、吉弘の鋭いアンテナはリスクヘッジにも繋がりました。リーマン・ショックやコロナ禍等の様々な社会情勢と直面しましたが、サービスの形やクライアントの業種を多角化させることで、当社は成長し続けられたのではないでしょうか」（宮﨑氏）。

この姿勢は自社を守るだけでなく、時代に翻弄されるクライアントも窮地から救ってきた。コロナ禍の公共部門では、全国の自治体と連携し、各医療機関の病床の空き状況や医療従事者の稼働状況等を取りまとめる大規模なシステムにも協力したのだ。

また、同社の公共部門を紹介するのに避けて通れないのが、汎用電子申請導入サービスだ。

役所へ行かずにオンラインで書類手続きを完了できる仕組み、電子申請。国が2001年に決めた方針「e-Japan戦略」の開始当初から、同社もサポートを続けてきたという。しかし同じ官公庁という枠組みでも、手掛ける行政サービスや手続きの種類は千差万別。そこで同社は、各官公庁に適応した電子申請システムを提供するサービスを手掛けた。

さらに同社では、自社ソリューションも展開。

その代表格が『Charlotte』。企業版・電子申請システムともいえるだろう。社会保険や給付金、入退社等の手続きをオンラインでできるサービスだ。元々は保険手続きが対象だったが、現在は続々と派生し、従業員の“働く”に関わる様々な手続きに対応するサービスができている。しかもこのサービスは、同社の社員がお客様から聞いた「困りごと」について、他にも困っている人がいるのであればとの気づきから、自社へ提案したことをきっかけに生まれたとのこと。

まだまだ、社会で活躍する同社のサービスはいくらでも挙げられる。

数々のクライアントと取引する中で、同社はよく“最後の砦”として頼られる。高い技術が必要な案件や、納期がタイトな案件等は「もうユー・エス・イーにしか頼めない」とお願いされることも多い。

ここには、「盤石な基盤、豊富な人材を持つ老舗企業としての信頼」と、「挑戦と行動を繰り返してきたベンチャー気質」という、相反する要素がにじみ出ている。自社エンジニアを十分に揃えつつ、そのエンジニア達は高い専門技術を持ち、日々新たな技術も習得している。これは頼りがいがある。

ただ、「タイトな納期で依頼される」と聞くと、経験豊富なエンジニアは「無理して納品しているのではないか」と心配かもしれない。しかしご安心を。

「私達は、限られた納期で最大のパフォーマンスを出すために、『今、どこまで完成させるべきか』をクライアントに提案します。期日までに必要な機能はしっかりと完成させれば、リリース後に機能追加や微調整をすることはできます。あまりに急いで開発しても、良いものなんてできませんから」宮﨑氏はそう補足した。

「今後も、“挑戦と行動”を止めるつもりはありません」――宮﨑氏に今後の展望を聞くと、同社らしい答えが返ってきた。

「“挑戦と行動”について、私はよく武道や芸道の“守破離”に例えて伝えています」と、宮﨑氏はこう続けた。

まずは“守”――技術や業務ノウハウ、既存クライアント等、当然今まで築き上げてきたものは大切にしなければならない。次に“破”――AI等の最新技術を使って今までのサービスを進化させ、クライアントに新たな価値を届ける。最後に“離”――独自に培ってきた技術やノウハウをどんどん新サービスに落とし込み、より多くの人々へ貢献する。

当然このような企業のアップデートには、社員一人ひとりの“挑戦と行動”が欠かせない。

実際に、社員の“挑戦と行動”から生まれた事業や社内制度もある。例えば前述の汎用電子申請導入サービスは、公共事業に長年従事してきた社員の知見から編み出されたものだ。

また同社の特徴の一つである、社内外広報も例外ではない。オフィスに設けた本格的なスタジオでの動画配信や、SNSを使ったリレー式社内報。盛り上がりを見せるこれらの活動は、広報部メンバーの意見を基に誕生した。

社員からのアイデアで期待しているのは、斬新なアイデアや化学反応だけに止まらない。

「やはり自分で『やりたい』と思って挑戦したことは、熱量もこだわりも格段に変わるんです。そしてそれが社会や誰かの未来に繋がれば、やりがいもひとしおでしょう。もちろん研修や面談等で成長を支えますし、評価制度も整えてメンバーに還元しています」（宮﨑氏）。

企業と共に、社員も“挑戦と行動”を続ける。そんな同社で活躍できるのは、“will（意思）”を持つ人だ。

「キャリア採用の場合でも、『この領域しか経験していない』『前職ではその言語、技術を使わなかった』と不安な方がいるかもしれません。ですが技術面においては、当社ジョイン後にいくらでもキャッチアップできると考えています。それくらい、社員教育やメンバーの技術力には自信がありますね」と話す宮﨑氏。

そう、スキルよりも大切なのは「次のキャリアではこんなことを実現したい」「この経験をこんなことに活かしたい」といった、自分なりの未来予想図。面談等を通して、一人ひとりのwillや適性にマッチした事業やポジションを任せたいという。

長い歴史の中で多数の事業を抱え、それでもなお、たゆまぬ挑戦を続ける同社。ここには想像以上の可能性が広がっている。