株式会社TO.S-Works

株式会社TO.S-Works（トゥーズワークス）は、SES事業を手掛ける会社だ。創業経緯が極めてユニークで、それが同社の大きな魅力にもなっている。創業者で代表取締役社長の山口拓海氏は、大手SIer2社を経て、フリーランスのエンジニアとして活躍していた人物。SIer時代、現場の仕事にプラスして社員ならではの、例えば社内の業務効率化プロジェクト的な業務があり、ただただ疲弊していた。現場に集中したいが、ままならない。給与もそうは上がらない。転職してみたが2社目も状況は変わらなかった。そんなとき、不慮のケガで1か月間現場を離れ、プロジェクトに居づらくなったことをきっかけにフリーランスになった。

「社員時代に現場で初めてフリーランスの人に出会い、そういう働き方があるのだと驚きました。フリーランスなら現場業務に集中できる。よいなと思いつつ、それまではきっかけがありませんでした」と山口氏。フリーランスに転じるとき、付き合いのあった現場の会社の人に挨拶がてら連絡をすると、案件に誘ってくれる会社が幾つもあった。間に入る会社がなくなって手取りの報酬は3倍に。「これは、すごくよいと思いました。現場に集中できるし、生活は豊かになった。実はフリーランスに興味のあるエンジニアは多くて、色々な人に『どうなの、フリーランスって』と聞かれました。『今までと何も変わらない。すごくよいよ』と答えていました」（山口氏）。

聞かれて話すうちに相談者が増え、しかも山口氏は取引先の会社に聞いて、案件まで取り次いだ。「いつの間にか、僕に相談するとフリーランスになれると評判が広がって、友だちの友だちレベルまでどんどん来ました」と笑う。気が付けば結構な数を紹介しているうちに、あるとき取引先の一つから「なんでお金をとらないの。それSESでしょ」と言われる。山口氏はそこで初めて「これが事業になるのか」と気付いた。そして紹介する以上、事業としてきちんとやったほうがよいと考え、2020年に同社を設立したという経緯だ。

それから3年。山口氏は今もボランティアでやっていたときの気持ちのまま、一人一人の相談に乗るスタンスで案件をアサインする。「自分自身がフリーランスだったから、その人を見れば現場に合う、合わないが分かるし、その会社や案件が求めている人材像も分かる。だから適切な現場に紹介できるし、本人に『こうなりたい』という意思があれば『なら、この現場がよい』とアドバイスもできます」と山口氏は言う。

とかくスキルマッチになりがちなSESにおいて、このきめ細かさは貴重だ。取引先にもエンジニアにも好評で、一人で始めた会社が、今では社員約15名、外部パートナーも含めると約60人の規模に拡大した。

取引先は、山口氏の大手SIer時代の人脈や、現場で知り合った優秀なフリーランスエンジニアからの紹介などで、大手電機メーカー、大手自動車メーカー、総合商社等、優良な会社・案件が中心だ。「無限といったら言い過ぎですが、案件は幾らでもあります」と山口氏。それは、エンジニア不足という業界の構造的な問題に加え、取引先の同社への信頼が厚いからだ。取引先が、前述のような丁寧なアサインにより、やる気を持って働き、パフォーマンスを上げる人材が来てくれる同社に信頼を置き、何かと頼りにすることは想像に難くない。評判と実績がさらなる案件を呼ぶ形で、優良な取引先・案件のネットワークは広がる一方だ。

「例えば主要な取引先の一つである大手総合商社さんは、付き合いのあるフリーランスの方から紹介を受けたものです。当社の人材、思考にピタリとフィットして、今では『もっと紹介してほしい』と言われる関係になりました」と山口氏。ここだけではなく、取引先はいずれも「TO.S-Worksの紹介してくれる人なら幾らでもほしい」と信頼を寄せてくれるという。紹介した人材がプロジェクトの中で活躍し、どんどん重要な役回りを任せられるケースも多い。

一般的にSESには悪いイメージがあるが、同社は違う。山口氏は誇りを持ってSES事業に取り組んでいる。「悪いイメージを持たれてしまう状況は理解できます。確かに、スキルだけでマッチングをしている会社が多いのも事実です。それに対してエンジニアの側も『仕事だから我慢しよう』という感覚の人が多いです。結果、フラストレーションが溜まり、SESの悪イメージが蔓延してしまっています」（山口氏）。同社はそうならない案件、アサインを徹底している。

本来、SESとはビジョンを持って計画的に案件の経験を重ねていけば、スキルを上げたり視野を広げたりできるはず。同社ではアサインの際、エンジニアとじっくり話をして、将来の展望を擦りあわせた上で実施している。エンジニアは安心して、意欲高く働く。さらに定期的な面談で寄り添いながら、キャリアを積んでいく。こうして取引先、エンジニアの双方に満足度の高いアサインとなるため、ますますパフォーマンスが上がり、会社が発展する好循環となっているのだ。

会社設立時、山口氏は自身がエンジニアとして疲弊した経験を反面教師に、エンジニアが搾取されない会社を目指すことを誓った。その誓いを忘れることはなく、今の良き状況を作り上げてきた。

一方で、会社のさらなる発展を考えたとき、SES一本ではなく受託開発や、いずれは自社サービスという展望も持っている。実際、受託開発は取引先からの打診も多く、体制を整え次第、早々に始めるつもりだ。そのための仲間を募る。SESで規模を拡大し、盤石な収益を確保しながら、一定の資金と人的リソースを受託開発へと投資できる体制作りを目指す。「既に案件の打診は、大小様々なものを頂いています」と山口氏。だが、SESと違ってリスクもある。できるところから確実にスタートして、大きく育てていく。このような展望を持ってさらに成長していくために、即戦力となる仲間との新しい出会いを求めている。

ちなみに勤務はフルリモート。取引先の理解も得ている。働き方の自由度は大きく、かつ一人ひとりに寄り添う温かい会社である。ともすると緩くもなりそうだが、そこでしっかり成長してきたのは、会社とメンバーの間に、互いの期待に応えようとする信頼関係と、ある種の厳しさもあるからだ。その厳しさの象徴が単価の公開だ。取引先からの受注単価をフルオープンにし、給与にも一定の単価連動分を上乗せする報酬体系をとっている。

「単価と手取りがあまりに違うという不透明さも、会社員時代に不満に思っていたことの一つでした」と山口氏。狙い通り、可視化が納得感と「もっと頑張ろう」という原動力になり、会社によい効果をもたらしている。反面、もし成長意欲に乏しく、なあなあな志向の人にとっては、苦しいシステムでもあるだろう。そのような厳しさも込みで「なりたい姿のイメージを持って、だから転職したいという人に来てほしいです。イメージは漠然としていて構いません。大きな案件の部品の一つになることをよしとせず、ここで仲間と同じ船に乗ってやっていこうという思いを持った人と出会いたいです」と山口氏は言う。

とはいえ、つい誰の相談にも乗ってしまう山口氏の人の好さは健在だ。「人を見る目がないのかもしれません」と笑う。そこは、人事を担当する鳥尾麗氏がしっかり見極めた上で採用する。前向きな意欲があり、会社と共に成長したい人は一度訪ねてみるとよいだろう。よくあるSESの会社とは全く違うことが分かるはずだ。

フルリモートなので、社員は全国に散らばっている。オフィスはシェアオフィスだけ。固定費が掛からない分、一人ひとりへの報酬と、パソコンや周辺機器等、それぞれの環境を整えるための経費を惜しまない。メンバー間のコミュニケーションは、普段はリモートベースだが、決起会、新年会、歓迎会等、折々に集まる機会も設けている。ときには家族ぐるみの行事も。そんな適度で心地よい距離感も魅力だ。「全都道府県から来てくれたら楽しいですね」と山口氏。新たな出会いを待っている。