代表取締役社長 成松 淳氏 公認会計士として有限責任監査法人トーマツ勤務、東京証券取引所出向などを経て、2007年1月よりクックパッド株式会社の取締役CFO（委員会設置会社移行後には執行役CFO）に就任。同社の草創期において従業員10名弱の時代から経営陣として成長に貢献する。同社の東証一部昇格を機に執行役CFOを退任し、身の回りの大切なモノとの生活をもっと楽しみにすることを次のミッションに、ミューゼオ株式会社を設立する。

仕事をする上で大切していることは何ですか。

基本的には、自分がやりたいと思えること、強いと思う領域で勝負することです。子供の時に思っていたのですが、勉強が得意な友人はやっぱり喜々として勉強しているんですね。私自身も得意な科目は良かったのですが、不得意な科目はひどい感じでした。だから何かやるならば、その中心は、自分のやりたいこと、得意なことに置くようにしています。これが結局、最大の力の源になる継続につながると思っています。 そういう意味では、常に学習し続けることも大切にしています。探索と実行を積み重ねることで、それ以前よりもできることが増え、人生を楽しめるようになるといった意味です。これは実は仕事以外でも当てはまります。例えば最近私は産地ごとのコーヒーの区別が以前よりもわかるようになってきました。味覚自体は少しずつ退化しているらしいのでたくさんの種類のコーヒーを体験することで峻別したり差分を認識できるようになったからだと思います。 これからも一つひとつの行動を蓄積して、ミルクレープのようにどんどん会社としても人間としても厚みを増していきたいですね。

御社のサービス『ミューゼオ』『ミューゼオ・スクエア』が目指しているのは？

「モノ」を通じて様々な知識や新しい文化に触れたり、世代や国境を超えて人と人とがつながったりする機会を提供することです。最近は本や服をネットで買うことが多くなって、街の本屋や洋服店で買う機会が減ってきていますよね。以前は本屋でふと目に止めた見たこともないジャンルの本で、新しい智の扉が開くことがありました。同じように、たまたま通りかかった街の洋服店のショーウィンドウで見かけた洋服が、自分のファッションを大きく変えるといった体験もあります。 しかしネットで買う場合は、マスデータか、自分の過去の購入実績などがレコメンドされるようになっていた、新しい扉と出会う機会が少なくなってきていると感じています。『ミューゼオ』や『ミューゼオ・スクエア』が、それまで知らなかった文化に触れるきっかけになり、また人と人とのつながりへと発展すると嬉しいですね。

「いいモノ」とはどんな存在ですか？

これまでの生活を拡張して新しい世界に連れていってくれる存在ですね。例えばコーヒーを飲むカップ一つとっても、紙コップで飲むのとヴィンテージカップで味わうのとでは、気分が違いますよね。また、ちょっといいジャケットを着たり、お気に入りの靴をはいたりすると、外出することや歩くこと自体が楽しくなったりします。 今はミニマリストという言葉が生まれるなど、できるだけモノを持たず、ほかの人とシェアすることがエコにつながるという考え方もあります。しかし果たしてシェアリングで使われるモノは大切にされているでしょうか。ある海外の都市では、シェアリングによって自転車の廃棄が大量に増えたというニュースを耳にしました。私は「いいモノ」を長く大切に楽しみながら使うことこそ一番美しく、エコにつながるという考えです。モノをもっと慈しむカルチャーを広げていくことが、私たちのミッションの一つだと思っています。

御社で働く魅力・メリットはどんなことですか。

当社はまだまだ規模が小さいスタートアップ企業ですが、いろいろな経験をされた方にアドバイザーに就任していただき、各分野でいろいろなアドバイスをいただいています。元ミクシィの開発部長やクックパッド出身のエンジニア、広告賞を何度も取られているクリエイティブディレクターや世界的ブランドのチーフデザイナーなど多岐に渡ります。 そして社内はなるべくこれからの時代を作っていく若手で構成するようにしています。どんどん世の中が変わり、これまでの経験だけでは突破できない領域が増えてきたと強く感じるからです。 若い力と経験の融合、それによって変化の激しい社会の中を渡りきる本当の力がつくのではないかと考えています。 そういう意味では社内の若手は自ら考え仮説を立てて、経験豊かなアドバイザーに全力でぶつかることで新しい経験と本当の戦友を手に入れられると考えています。それが当社で働く一番のメリットではないでしょうか。

御社の社員の皆様のこと、社長様の趣味などについて教えてください。

現在当社で中心となって活躍しているのは、20～30代の若手社員です。大手Webサービスで新規サービスを開発していた人、大手電機メーカーで生産管理を担当していた人、大手食品会社でマーケティングに携わっていた人など前職は様々ですが、共通するのはみんなモノが好きなことです。そして仕事の上では、技術やコンテンツに対するこだわりがあって、便利さよりも美しさや楽しさを追求しようとする人が集まっていますね。 私自身は、子どもの頃から様々なモノに惹かれ続け、中でも革靴のコレクションは300足を超え、スーツやジャケット、コートなども多数所有しています。また自分の部屋には様々なミニチュアが並び、銀製品なども愛好しています。そして、これら分野の専門書を読んだり、スペシャリストに話を聞いたりすることが大好きで、それぞれの世界を深く理解していくことを生活の一部にしています。