株式会社データスプリング

株式会社データスプリングは、市場調査・マーケティングリサーチ国内No.1のインテージグループの企業として、アジア各国における調査モニターを提供しているサンプルサプライヤーである。アジアでビジネスを展開したいと考えている日本企業が市場調査を行う際に、求める属性（性別、年齢層、職業、収入レベル等）のモニターを揃え、アンケート等の調査を行い、有効なサンプルデータを提供することが同社のビジネスだ。基本的にクライアントからアンケート内容の支給を受け、オンラインによる調査票の作成、翻訳、アンケート調査実施、回答データ処理、集計および必要なアドバイスも行う。同社の強みは、大きく次の2点。

1点目は、海外調査に特化していること。同社は、日本本社（東京）のほかに、中国（上海）、韓国（ソウル）、シンガポール、フィリピン（マニラ）、アメリカ（ロサンゼルス）、イギリス（ロンドン）に現地法人や事業拠点を展開。調査パネルは、中国、香港、台湾、韓国、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムといったアジア各国で広範に構築。パネル構築プラットフォームとしても、『surveyon』（東南アジア、台湾、香港）、『PanelNow』（韓国）、『Zanli』（中国）という独自開発のプロダクトを運用している。
2点目は、クライアントのニーズに柔軟かつきめ細かくカスタマイズ対応できること。大手では、パッケージ化されているケースや、特定の都会限定といった細かいニーズを受け付けないケースが多い。それに対し、同社は海外調査特化により蓄積してきたノウハウや、現地パートナーネットワークを活用して対応している。
「クライアントに対し、それぞれの国情に応じた調査方法のアドバイスも行える強みを発揮しています」と代表取締役CEOの細野智裕氏は胸を張る。

同社は、2社の企業をルーツに持つ。
その1社は、2006年にスタートしたリサーチプラットフォーム会社である株式会社マーケティングアプリケーションズ（旧・株式会社ボーダーズ）。サーベイツールの「MApps for Survey」は、リサーチ業界でトップシェアを誇る。

もう1社は、2009年にスタートした株式会社リサーチパネルエイジア。事業開発会社の株式会社VOYAGE GROUP（現・株式会社CARTA HOLDINGS）で行っていた海外サービスの会員基盤をマネタイズ化すべく、調査パネル提供ビジネスを行う会社として設立された。

2015年にマーケティングアプリケーションズの海外事業部がリサーチパネルエイジアと事業統合し、スピンアウトして設立されたのがデータスプリングである。

そして、2020年に株式会社インテージホールディングスによって子会社化され、同グループの一員となった。同じアジアでの調査に強い両社であるが、インテージはオフライン調査に強く、データスプリングはオンライン調査に強いという違いがある。そこでインテージはデータスプリングをグループ化することでシナジーを発揮し、アジアにおける調査能力を強化した形だ。

データスプリングの掲げるミッションは、「最先端のテクノロジーを通じてブランドをターゲットとする消費者と結びつけ、製品と人々との間の真の関係を育むこと」。このミッションを通じて描くビジョンについて、細野氏は次のように説明する。
「まずは、目の前にある“アジアNo.1のサンプルサプライヤー”を目指します。クライアントの求めるニーズに100%応える調査サンプル数を提供するサプライヤーとなることです。その先としては、サービスのクオリティーを限りなく高め、クライアントにもっと信頼されるサンプルサプライヤーを目指します」

グローバルにおける市場調査業界には、広告業界におけるアドフレイル同様、不正なパネル回答を行う「クリックファーム」と呼ばれる集団が、特に中国やインドには多く存在しているという問題がある。こうした問題に対し、CAPTCHA「Completely Automated Public Turing test to tell Computers and Humans Apart（完全に自動化された、コンピュータと人間を区別する公開チューリングテスト）」や重複登録防止ツールをはじめとする不正対策を多重的に行うことはもちろん、さらに最新レベルの不正防止対策を講じて調査品質の信頼性を高めていく。
「クライアントに『データスプリングならば、安心して海外調査を任せられる』と信頼される存在になることが大きなテーマです」（細野氏）。

同社の社員数は、海外現地法人含むグループ全体で110名（2023年5月現在）。日本本社は21名（男性8名、女性13名）、平均年齢31歳という組織だ。職種別では、セールスが半数を占めるほか、バックオフィス、パネル管理、エンジニア、デザイナーで構成されている。

グループ全体では、次のコアバリューを掲げている。

Think Independently, Ask Deep Questions
Act as One, Execute 'Til It's Done
When Reality Says “No”, Passion Rules
Build Great Things Together
Invite Challenges

こうしたコアバリューを基に、フィリピン法人に置かれたグループ人事本部が基本的な人事評価基準等の制度を設け、それに基づいて各現地法人がそれぞれの国情に応じて調整、運営している。
「ルールはあっても最低限のもので、それ以上のルールに縛られず柔軟に働ける風土があります」と経営統括マネージャーの津野知子氏は言う。

日本本社での働き方は、リモートワークとオフィスワークを部署ごとの業務内容に応じて適宜ハイブリッド。また、リモートワークは在宅が基本であるが、「ワーケーション制度」も導入し、例えば飛び石連休の合間にリゾート地等の出先で業務を行うことも認めている。

カルチャーとしては、上下関係がフラットで経営層との距離が近い点は特徴的。その一つの象徴として、社長も「細野さん」と呼ぶ等、役職名は使われていない。「メンバーもファーストネームやニックネームで呼び合うカルチャーがある」と津野氏。

こうしたフランクな風土の中、ワンフロアの本社オフィスの片隅にバーカウンターやソファが置かれたスペースがあり、19時の終業後は自由にアルコールを入れてのコミュニケーションを楽しんでいる。さらに、月1回、部署を超えたシャッフルランチも行っている。
加えて、グループ全体で年1回、社員旅行を実施。コロナ禍前の2020年1月はフィリピンに全拠点から110名が集まって親睦を深めた。コロナが落ち着いた2023年度に再開する予定だ。

2020年にインテージグループ入り後は、退職金制度が上乗せされる等、福利厚生面が充実。人材育成においても、e-ラーニングやオンラインセミナー等、業務に必要な学びの機会が拡充されている。また英語を使う機会の多い同社では、英会話スクール受講の補助も行っている。

そんな同社が求める人材像について、経営管理部の齋藤裕史氏は次のように話す。
「フレンドリーにコミュニケーションを取りながら働ける方がフィットすると思います。また、英語ができなくても、抵抗感がなければ問題ありません」

日本本社にも、フランス人やタイ人といった外国人社員が在籍している。グローバルかつ自由な環境で仕事をしたい人には要チェックの企業と言えるだろう。