DeepApex株式会社

企業へのITコンサルティングを展開するDeepApex株式会社は、2020年2月に設立された。世界中でコロナ禍が始まった大変な時期だ。しかし、「迷わずに突き進むこと以外、考えませんでした」設立者である代表取締役の市川駿氏は、そう語る。

同社の看板サービス『情シスフォース』では、上流工程のコンサルティングから、実際のシステム開発やセキュリティ対策まで行う。一部のシステムの見直しに携わることもあれば、社内IT環境全体を担うことも。とあるクライアントでは、PC初期設定の自動化から、バーチャルオフィスの構想まで支援。中小企業でなかなか手の回らないIT環境整備を、プロの目線で幅広くサポートするのだ。

事業の形や従業員数、業務スタイル等、クライアントの在り方は千差万別。つまり、ITシステムに決まり切った正解はない。だからこそ同社は、各クライアントの課題や方向性をしっかりヒアリング。そしてそれぞれに合ったIT環境を考え、多角的にアドバイスして実行するスタイルを貫いている。アドバイスするだけでなく、「実行する」というところにこだわりを持っていると市川氏は語る。

元々は、中小企業の支援を目指してスタートしたというが、現在では大企業や上場企業との取引も多い。例えば、セゾン自動車火災保険株式会社。オフィスのITツールで最重要といえる基幹システムの社内連携をサポートし、業務フローをより効率化できたという。

そして同社は、自社SaaSの開発・提供も手掛ける。その一例が、霊園業界向けに開発された『hakamory』だ。老舗企業の多い霊園業界では、顧客情報や請求書等の対応に苦労することが多いという。それをクラウド上で一括管理できると、クライアントから大きな支持を得ている。

情シス支援から自社SaaSの提供まで、こうした幅広い事業を成功させるカギは、社員のキャリアにある。なんと同社にいるのは、全員エンジニア経験者。開発者としての技術を持った上でコンサルティングもできることは、競合他社と比べても大きな武器だ。そういった点が評価され、依頼はどんどん増えているという。

クライアントからよく喜ばれるのは、「プロとしての第三者の目線」だという。特に大企業では、社内に情報システム部を設けているのが一般的だ。しかし、「たとえITに詳しい部署でも、社員同士では強く意見しにくいこともある」と悩むクライアントが多い。そこで同社が、専門家かつ社外の第三者として間に立つ。他部署が納得するような的確なアドバイスは、IT担当者にとってかなり心強いようだ。IT支援の結果として、同社はクライアントの社内コミュニケーションの潤滑油となっている。「企業をITの力でアップデートする」というコンセプトを、見事に有言実行していると言えるだろう。

設立わずか3年の同社だが、既に独自のビジネスモデルを確立している。

いまや、ITは業界を問わず必要とされる社内インフラだが、一部の業界に特化するIT企業もある。一方で同社のクライアントは、ゲーム開発企業から出版、保険、医療関連まで多岐にわたる。

市川氏は、業界を絞らずマルチに支援する理由を三つ挙げた。「まず単純に、様々なことに挑戦する方が面白いからです。クライアントの数だけビジネスモデルがあります。そういった多様な企業の形を、自分達も見て勉強したいですね。二つ目の理由としては、自社のポジショニング。あらゆることに対応できる企業の方が、クライアントの安心感も高いですよね。三つ目としてはリスクヘッジ。時代の流れや景気に振り回されることなく当社が成長するには、クライアントの業種も広い方が良いと考えています」

挑戦を楽しむマインドと、リスクヘッジへの意識。コロナ禍でスタートして生き残ってきた同社だからこそ、説得力のある姿勢だ。

同社のビジネスモデルはもう一つ。IT企業の中でも目立つのは、情報発信力だ。市川氏をはじめ、社内全体でも、普段から発信はアクティブに行っている。ニュースリリースはもちろん、SNS等も積極的に更新。また、ITの力で街づくりを進める“スーパーシティ”構想を啓発する『スーパーシティメディア』という自社メディアも持つ。これらのコンテンツで、サービスについての紹介だけでなく、社風や理念を分かりやすく伝えているのだ。

実際にこうした発信は、外部との関係構築に繋がっている。とある全国規模のイベントでは、大企業が名を連ねる中、同社のコンテンツを見た主催者からの招待を受けて出展が決まったという。なんとここでは、IT企業の代表として講演も実施。また新聞等の取材依頼も、コンテンツを見たメディア側が連絡してくるという。どんな会社で、どんな人が働いているかがイメージしやすい内容は、社外からのアプローチのハードルを下げたのだろう。

「IT支援に加えて、情報発信も当社の強みにしようと考えていました。私個人のSNS等は自分で書いていますが、会社からのSNS等の発信は社員と協力していますね。業務の合間を縫ってコンテンツを作るのは大変ですが、結果に繋がっているのではないでしょうか」市川氏の狙いは、大成功しているようだ。

短期間でここまで成功してきた同社には、 “情報”を取り扱うIT企業の鑑ともいえる社風がある。

「徹底しているのは、社内のナレッジ共有です」と話す市川氏。同社の情報共有のスマート化はかなり進んでいる。社内連絡ツールはチャットを中心としている。情報共有のwikiツールはNotionに絞り、仕事の仕方やナレッジは、誰でもそこを見れば全て分かるように整理。

「何かあれば、すぐに共有するというルールも作っています。例えば、プロジェクトで壁にぶつかった社員が『これって他のプロジェクトでも生きるのでは？』と思ったことは、他の社員が同じ躓きをしないよう、すぐにツール内で共有。これが、業界での競争力の源泉になっていると自負しています」（市川氏）。

仕事のチームワークも抜群だ。各プロジェクトは2～3人のメンバーで進行し、一人に背負わせることはない。先にも述べたように、クライアントのニーズは様々だ。「困ったことだけプロに相談したい」という企業もあれば、「情シスの全てを一緒に管理してほしい」という企業もある。業界や企業の規模、組織の年代等でもニーズは変わるだろう。そこでは、コンサルタント一人ひとりの知識やこれまでの経験がものをいう。だからこそ、チームを組んで協力するのだ。

そして、経営陣のフォローもぬかりない。企画書や実際のプログラミング等は必ず、市川氏か取締役の畠山氏がチェックする。経営者目線でアドバイスし、各コンサルタントが自信を持ってクライアントに提供できるものを作るのだ。こうしたサポートがあるからこそ、開発もコンサルティングもできる強い人材が育つのだろう。

また、意見交換の環境も整えている。2022年8月に移転したオフィスでは、独立した会議室と、スタンディング式の気軽な会議スペースの両方を完備。リモートワークが自由にできる社内で、あえてオフィス作りに力を入れたのは、市川氏の思いがある。

「オフィスは作業しに来る場ではなく、コミュニケーションの場にしたいと考えています。仕事の方向性や認識を合わせるためには、やはりリアルに顔を合わせる空間は外せません。会議に限らず普段の会話でも、上下関係で遠慮することなく『こうしたい』という声が飛び交っています。仕事も会社作りも一人ひとりが積極的に行える、そんな組織にしていきたいですね」（市川氏）。

あらゆる業種へのコンサルやシステム開発から、自社の組織作りまで。一つの仕事に凝り固まらない面白さが、同社には詰まっている。エンジニア経験を生かし、ワンランクもツーランクも成長したい人には見逃せない会社だ。