株式会社チームボックス

株式会社チームボックスは、リーダーシップ開発・組織開発に主軸を置いたサービスを提供している企業である。
提供しているプログラムは、『Teambox LEAGUE』。そして、現在は、新たなサービス『Teambox DIALOGUE』も開発が進んでいる。

同社がプログラムを通じて提供しているのは、“大人が素直に学び合える場”。このことについて、取締役の山本伸一氏は次のように説明する。
「当社が対象としているのは、主に大手企業の課長といったミドルマネジメント層。いわばエリート層で、元々優秀ではあるものの、ここに至るまで数々の努力や苦労を重ね、いくつもの壁を乗り越えてきた方々。したがって、プライドが高い側面があるのです。自らに誇りを持つのはいいのですが、それ故に自ら変化できない場合が多く、組織が硬直化してしまいがち。高度経済成長期の決まったやり方を続けていれば良かった時代と違い、“VUCA”の現在は常にリーダー自身がアップデートする必要があります。そのためには、アンラーニング、「学び直し」が不可欠。だからこそ、“素直に学び合う”ことが求められていると考えています」

同社は、サービスを通じてアンラーンし続けられるビジネスリーダーを数多く輩出することを目指しているのだ。その中で、次の五つのスタンスを持つことに導く。
①自己開示：自分自身に不都合なことでも、組織や部下のためならばさらけ出せる
②アンラーン：常に知識や価値観を見直し、古いモノは捨てて新しいモノを吸収する
③自責：目の前の問題を“自分ごと”として捉え、責任感を持って対処する
④人の成長を信じる：部下に問題があっても切り捨てるのではなく、粘り強く関わる
⑤習慣化：一時的な実践ではなく、恒常的に実践し続ける

プログラムの内容は、次のとおりだ。

●『Teambox LEAGUE』
・Locker Room：月に一度の集合研修を5回行う。試合前のロッカールームでチームが一丸となって最終調整を行うように、日々のマネジメントに向かうリーダー達が集まり、不安や恐れをさらけ出してアドバイスし合ったり、問題点を議論。参加リーダーがともに学びあい、成長していく場の一つだ。
「監督（登壇講師）が一方的に話すのではなく、監督から投げかけられる問いを起点にディカッションする時間が数多く設けられる。普段考えないこともアウトプットが求められ、終了時は毎回ヘトヘト状態になる」と山本氏。

・Half Time：月に一度のGrowth Trainerと受講者の1on1トレーニング。Locker Roomでは共通的なマターが扱われるが、ここでは個別の課題についてじっくり話し合い、目標設定および実践の振り返りを行う。

・Feeba：トレーニングで設定した目標に関するアクションの振り返りや、日々の振り返りができるWebツール。振り返りは、トレーニングに参加している他受講者とも共有されており、ここにも、ともに学び合う空間がある。
「普段見せない苦悩や喜びが表れ、受講者同士が刺激し合えたり、リーダーシップの在り様を考え続けられる場になっている」（山本氏）。

同社は、2014年5月、代表取締役の中竹竜二氏によって設立された。

1973年生まれの中竹氏は、小学1年からラグビーを始める。大学在籍時もラグビー部に入部し、3年生までレギュラーではなかったものの、4年時に主将に選出され、大学選手権で準優勝する。早稲田大学卒業後はレスター大学大学院へと進学し人類学に傾倒。大学院を修了し帰国後は、2001年にコンサルティング等を手掛ける会社に入社し働いていたが、2006年、母校でもある大学のラグビー部監督を請われて就任。2007・2008年、全国大学選手権連覇を果たす。2010年の退任後は日本ラグビーフットボール協会初代コーチングディレクターに就任。その後、U20日本代表監督も務めたという人物だ。

「早稲田大学ラグビー部での監督経験後、中竹は企業等からリーダーシップやチームづくりについて講演を依頼されましたが、毎年のように同じ企業から依頼されるのを訝しがって先方に理由を尋ねたことがありました。すると、『浸透していないから』との回答がありました。これをきっかけに、中竹とチームボックスの共同創業者は、単発で行う講演や研修の限界を強く認識します。そこで、スポーツの世界の実践を生かし"研修ではなくトレーニング"という発想に基づく企業のミドル層にリーダーシップを確実に浸透させるサービスを作ることを決めたのです。これがチームボックスの始まりです。」と山本氏は説明する。

そして、トップレベルでのラグビーチームのリーダーやコーチを通じて培った独自のメソッドをベースに、心理学や経営学等の知見を加え、企業のリーダー向けに『Teambox LEAGUE』を開発、2015年から提供を始めた。2022年8月まで、伊藤忠商事やオムロン、リクルートマーケティングパートナーズ等、20社強の企業に導入実績がある。

今後のビジョンについて、山本氏は次のように説明する。
「規模の拡大を目的にするといった考えはありません。それよりも、提供するサービスの質を最重視し、誇りを持って提供できる品質を担保しつつ、徐々に広げていきたいと考えています」
今の40代のミドル層は、バブル期を経験した上司とバブルを知らないZ世代を部下に持ち、そのギャップに苦しい思いをしている人は多い。
「そのような人達をエンカレッジし、所属する組織の活性化を通じてお客様の成長に中長期間、伴走できればと考えています」（山本氏）。

2022年9月現在、同社は業務委託含めて10名ほどの陣容。メンバーの間で大切にしている考え方として、次の「Teamboxer Standard（基準）」を共有している。

▼Teambox 「らしさ」として持ち続けたいStandard
・ミッションドリブン・・・組織のミッションを理解し同じ方向に進んでいる
・アンラーン・・・成功体験に囚われることなく次のステージを探究する
・学ぶ・・・領域問わずインプットを続けよう
▼2021年11月にアップデートしたStandard
・視野を広げる・・・社内外のモノサシで考え行動しよう
・自律・・・言い訳しないプロフェッショナルであろう
▼これから取り入れるStandard
・チームワーク・・・個の力とチームの力両輪で社会に価値を届けよう
・アサーション（社内外）・・・対立の意見から新たな解決策と価値を導き出そう
・冒険・・・自らリスクを取り、かつリスクを取る仲間を応援しよう

「受講者にアンラーンを求める以上、自らも当然のようにアンラーンしていく組織でありたいとです。このように、当社のサービスを提供していく上で不可欠なスタンスを重視しています。また、このStandardも常にアップデートしていきます」（山本氏）。

組織運営の方法としては、「ロール（役割）」という考え方を採る。「新規サービス開発ロール」「営業ロール」「デリバリーロール」等があり、複数のロールを兼務することを標準として本人の希望を取り入れ決めている。つまり、言い換えると、自ら顧客を開拓し、提案・案件獲得し、Growth Trainerとなってサービスそのものの提供までに、一貫して関わることができるのだ。
「少人数ということもありますが、入社後のオンボーディングの後は各自が主体的に仕事の獲得に動くという風土があります。評価は、業績だけでなく能力の向上度合いといった私たちにとって重要な""学ぶ姿勢"を重視しています」（山本氏）。

働き方としては、毎朝8時45分からのオンライン朝会は原則全員参加。それ以外はフルフレックスで自由に働ける。基本的にフルリモートワークで、月1回程度、リアルに集まる定例会があるほか、四半期ごとに1泊2日のハイキング等を兼ねた合宿を行い、メンバー間のコミュニケーションを深めている。

そんな同社が求める人材像は、「人の成長にポジティブな関心を持ち、自分自身の失敗談も自分の言葉でさらけ出せるようなオープンマインドの持ち主」と山本氏。
ビジネスとスポーツの両分野における実践にもとづくメソッドによって価値提供できるユニークな仕事は、大きな手応えが得られるに違いないだろう。