創業59周年を迎えるDACグループが新たに仕掛けたチャレンジ。
2021年10月に創業59周年を迎えるDAC(ダック)グループ。総合広告事業/人材ソリューション事業/観光ソリューション事業/グローバル広告事業という、4つの領域を手がける総合広告代理店である。さらに同グループでは、広告事業に加え、地方創生事業・農業、社会貢献事業と幅広く手がけている。持ち株会社である株式会社DACホールディングスのもと、全国に広告事業を手がける9社の事業会社と、農業法人・一般社団法人4団体によって構成されている。売上高は136億6,600万円(2019年度DACホールディングス連結実績)、従業員数はDACグループ全体で673名(2021年1月現在)にのぼる。
その一大グループの中で、株式会社デイリースポーツ案内広告社は、マスメディア及びデジタルを活用した統合的なプロモーションを取り扱い、広告戦略からデザインまでトータルにプロデュース。その他電車内のつり革の広告ジャック、日本経済新聞折込みタブロイド紙『Biz Life Style』などのオリジナル企画・メディアも活用しながら、顧客の課題に最適なソリューションを提案・実行するエキスパート集団だ。
しかし、ここまでの道のりは平坦なものではなかった。1977年、同社は一時経営困難に陥り、誰も引き受け手がないところまで追いつめられる。そのときに三代目の代表取締役社長に就任したのが、石川和則氏である。約120名いた社員は次々に退職、残ったのはわずか16名。当時29歳だった石川氏は「やめていった社員を恨むより、残った16名を大切にしよう」と決意。社員の将来を考え、社員の育成に軸足を置き、立て直しを図った。そのときの奮起がなければ、競争の激しい広告業界において、同社は早々に淘汰され、現在のDACグループは存在していなかったかもしれない。
経営の根幹に“人”を置く石川氏が、社員に約束している3つのことがある。「どんな状況になっても、リストラは行わない」「出来うる限り最高の教育機会を社員に与える」「社員に輝かしい未来を保障するためにも、事業拡大へのチャレンジを続けていく」だ。
そして、現在の同社を語る上で重要な約束が、3つめの「社員に輝かしい未来を保障するためにも、事業拡大へのチャレンジを続けていく」ということである。交通広告や新聞・雑誌広告などいわゆるオフラインのソリューションで顧客の信頼を得てきた同社は、これまでホールディングスに頼っていたデジタル領域を2017年からデジタル領域専門のセクションを設立。インターネット広告やデジタルコンテンツなど、オンラインでのソリューション提案も行う総合広告会社として、毎年110%以上の売上成長を続けている。
デジタル領域への進出によって強化される“総合提案力”。
デジタル領域のソリューションについてはコミュニケーションデザイン本部が推進役を担っている。同部はデジタルソリューション室・プロモーション室・プランニング室・メディア室で構成され、営業部から持ち込まれた顧客の課題により専門スキルを持ったメンバーをアサイン。プロジェクトを組成し、ソリューションの企画・提案から納品・実行までを行っている。
例えば、広告運用が課題であれば、デジタルソリューション室のデジタルマーケティングチームが中心となり、営業〜Webプランナー〜広告運用者というプロジェクトで解決にあたる。イベントの開催やオリジナルキャラクターの開発、タレントのアサインなどでプロモーション全体を盛りあげていくのであれば、プロモーション室がフロントに立つ。メディアのバイイングなどのニーズがある場合には、メディア室が乗り出す…という具合である。
なお、持ち株会社である株式会社DACホールディングスには、デジタルマーケティング本部が設置されている。そして傘下の各事業会社のニーズに合わせてサポートを行っているが、案件数・売上から見た場合、飛び抜けてニーズが多いのが株式会社デイリースポーツ案内広告社なのだ。実際、デジタルソリューション室に在籍出向中のWebプランナーも存在している。スタート当初はスポットの案件がメインだったが、現在はゼロベースでデジタルマーケティングのコンサルティングを求められる案件が増加しているという。
広告事業の中でも特にデジタルマーケティングにおいては、すでに数多くの専業会社が存在している。その環境下で、同社にはどのような強み・優位性があるのか。同社の取締役としてコミュニケーションデザイン本部を立ち上げ、現在統括責任者を務めている佐藤美由紀氏は「総合提案力こそが強み」と語る。
「顧客が求めているのは、デジタル領域のみのソリューション提案にとどまりません。マス広告“も”打ちたいという要望は、当然出てくるのです。そのときに、オフラインでのソリューションで実績を積んできた当社にはアドバンテージがあります。テレビCM・ラジオCM、交通広告、フリーペーパーから、イベント、映画タイアップ、キャラクターやタレントのキャスティングまで、当社には総合的な提案が可能です。そこで大切になってくるのは、顧客の課題をトータルで捉え、どのソリューションを提案するか。プロジェクトメンバーは日々、職域や社歴にとらわれずに議論を重ねています」。(佐藤氏)
やりたいことが明確にある人材にはきわめて寛容な風土。
オンライン・オフライン両面での総合的な提案を必要としている顧客は急増中だ。議論はもちろん大切だが、実務に必要なスキルを実装した即戦力の人材が、同社には欠かせない。しかし一方で、過去のキャリアの延長線上で、ミッションを忠実にこなすだけの人材は同社には合わない。それは、佐藤氏をはじめ、前述で紹介した各室のリーダーの共通認識である。まだまだ新しいデジタル領域では、これから仕組みやレギュレーションを整えていく必要がある。受け身ではなく、全員が当事者となって臨まなければならないからだ。
言い換えれば、やりたいことが明確にある人材にはきわめて寛容だ。例えば、デジタルソリューション室の前身であるコンテンツ開発室は、現在デジタルソリューション室の部長・三浦優介氏が立ち上げた。当時、マーケティングソリューション部門でメディアプランニングに携わっていた三浦氏の提案により、同社のデジタル領域進出が本格化したのだ。
また、現在広告運用を担当しているK氏は、一時期Webプランナーとして顧客接点を持っていた。その経験から、広告運用を専門に手がける部隊が必要だと感じ、上司に進言。同社の広告運用のスペシャリストとなり、顧客のデジタルマーケティングの最適化に取り組んでいる。
社員の“やりたいこと”に寛容な風土は、仕事にとどまらない。“No.1手当”がその一例だ。これはスポーツ、芸術などにおいて社内でNo.1であることが認定された社員に、年間6万円の特別手当を支給する制度である。マラソン、書道、柔道、声楽…同社にはさまざまな分野の“社内No.1”がいる。取締役の佐藤氏も、学生時代から続けてきたチアダンスで“No.1手当”の支給対象となっていた(課長職まで)
今あるスキルで、小手先でやっていくのではなく、“やりたいこと”を見つけ、実践していく。競争の激しい広告業界において、デジタル領域でも確固たるポジションを確立しようとする同社には、そんな人材がふさわしいのかもしれない。
「当社は、ほんとうに良い人たちが集まり、毎日楽しく仕事をしています。それは自信を持って言えますね。議論をしていると心の温度が上がり、みんなで真心を込めて提案にまとめています。これから入社してくれる方には、そういう仲間たちを動かす“渦”の一人になってほしいです。そして、デジタル領域の可能性に一緒にチャレンジしてもらえたら嬉しいですね」。(佐藤氏)