株式会社SecondGame

株式会社SecondGameは、AIの力で保育業界の課題解決を目指すTech企業。人材紹介会社向け求人データベースサービス『AgentOne』と、保育事業者向け離職防止アンケートツール『EngageOne』を開発・提供している。

『AgentOne』は、保育士の求人情報に特化したデータベースサービス。利用者である人材紹介会社は、『AgentOne』を活用することで効率的な求人検索が実現する。複数法人の求人を、エリアや希望条件で横断的、かつ効率的に求人を見つけることができる。必要な情報が正しくまとまっており、質の高い求人提案も可能となる。

一方で、保育園を運営する事業所にとって、『AgentOne』へ登録するメリットがある。採用ページ等に『AgentOne』の電話番号だけを記載することで、人材紹介会社からの新規営業電話の窓口をスムーズに一本化できる。

「保育事業所が採用する保育士の条件は200パターン以上の組み合わせがあるとされており、人材紹介会社は求職者の希望条件にマッチする保育園を探して架電します。保育園サイドから見た時、その保育園の条件にマッチしない保育士を紹介する電話に対応していることになります。人材会社からの電話で、通常業務がストップしてしまい、保育園の運営が非効率になってしまいます。人材紹介会社との繋がりを『AgentOne』にまとめることで、業務効率化に繋がります」（執行役員・山本史也氏）。

同社が提供するもう一つのサービス『EngageOne』は、月1回のアンケートにより保育士と保育園の状態を可視化する。短期的な退職と関係する「コンディション」と長期的な定着に関わる「思考行動特性」を分析。AIによる退職リスクスコアで、離職懸念の高い職員を抽出し、ランキング形式で表示することで、優先的に面談すべき職員が一目で分かる。

「保育園に特化した従業員サーベイを開発しています。保育業界は離職率が10%以上と高く、採用もさることながら、保育士の定着も業界の喫緊の課題とされています。『EngageOne』を導入して、保育士のコンディションや価値観の変化を詳細に分析し、正確な現状把握を行うことで、保育士が離職する前にそれを食い止める施策を実施することができます」（山本氏）。

2025年5月にストレスチェックの義務化が従業員50人未満の事業所にも適用されることが決定した。これにより小規模な保育園でも年に一度のストレスチェックを行う必要が生じる。『EngageOne』は、厚労省準拠の項目・レポートでストレスチェック制度に対応しており、ストレスチェックにも活用できる。『AgentOne』との併用で、原則無料で利用できる。

人材紹介会社向け求人データベースサービス『AgentOne』と、保育事業者向け離職防止アンケートツール『EngageOne』の開発・提供に加え、同社では人材紹介事業も展開している。就業先を探す保育士の希望を丁寧にヒアリングし、その希望にフィットする保育園を探して紹介することに重きを置いている点が特徴だ。

保育業界に限った話ではないが、人材紹介の世界には“成果偏重”の会社が少なからず存在する。自社の利益を優先するあまり、求職者の希望を後回しにして企業側の都合で就業先を斡旋するケースもある。そうした業界の中で、同社は「求職者ファースト」の姿勢を徹底することで、保育園と保育士の双方が抱える課題の解決を目指している。

「当社の人材紹介は、求職者ファーストを徹底しています。求職者の希望をできる限り詳細にヒアリングし、それにマッチする保育園を探します。転職エージェントとして当然の姿勢ですが、保育士にとって引く手あまたの保育業界では、紹介先がすぐに見つかることもあり、求職者の希望を丁寧に叶えようとするエージェントは多くありません。私達は、求職者の希望を実現するために、一切の妥協をしません」（山本氏）。

一般的に転職エージェントの仕事は、求職者の希望条件に合わせて企業を探し、紹介することだが、実際には既に候補となる企業があり、その中から条件に近いものを斡旋するケースも多い。

「保育園の数には限りがありますので、求職者が通える範囲に保育園があれば、そこに紹介するのが一般的です。しかし当社では、求職者の希望条件にフィットする保育園がないかどうか、通勤可能な全ての保育園にアプローチします。その中から提案することで、求職者の希望を叶えることができます。手間はかかりますし、効率的とは言えないかもしれませんが、求職者の希望を実現することで、人手不足という保育園側の課題も同時に解決されます」（山本氏）。

保育業界での人材紹介をキャリアとしてきたメンバーが立ち上げた会社だけに、現場の課題を肌感覚で理解している。保育園の人手不足の背景には、人材の流動性の高さがあり、離職率の高い業界とされている。同社では、求職者ファーストの姿勢を貫くことで、短期間で離職しない人材を保育園に供給できると考えている。

「当社が紹介する保育士は、離職率が低いと言われています。希望条件に沿った職場へ紹介することで、離職のリスクは軽減されます。保育園と保育士を繋ぎ、双方が満足する人材紹介を継続することで、保育業界の人材流動性を抑え、保育園が安定した経営を実現できるようにしていきたいと考えています。そうして、社会に貢献する企業であり続けることが、当社のミッションです」（山本氏）。

2020年11月、同社は「社会への持続的な貢献を提供し、社員とその家族が誇りと幸福を感じる会社に。」というビジョンを掲げてスタートした。保育業界における歪んだ人材マーケットを正すという、少々無謀とも言える課題に挑戦してきた歴史がある。

保育士の有効求人倍率は2019年度をピークに頭打ちとなり、以降は減少傾向にある。それにもかかわらず、保育士の人材紹介料率は20%から25%、さらに30%へと上昇しているという。

「適切なマーケットであれば、求人倍率の低下に伴って紹介料率は下がるべきです。ところが、転職エージェントの数が増えすぎたこともあり、利益を担保するために料率は依然として高止まりしているのが現状です。当社の目標は、ITやAIを活用することで、保育士の人材紹介に新しいやり方をつくり上げることです。紹介会社の営業担当者は効率的な求人検索が可能になり、保育園の採用担当者への不要な問い合わせが減ります。園長先生も職員もそれぞれの本来の仕事に集中でき、その結果、より質の高い保育が実現します」（山本氏）。

保育士の人材紹介マーケットを最適化しようとする同社は、「大胆に、丁寧に、迅速に、適当に社会と向き合い、社会への持続的な貢献に挑戦し続ける」というミッションの下、五つのバリューを大切にしている。

•Right At Right=適当な時に適当な事に向き合う
•Grip On Results=最高の成果に最大の執念を燃やす
•Follow Principles=従うべき原理原則に従い、本質を知る
•Fair & Honest=公平かつ誠実にあり続ける
•Be Positive=前向きに生きよう

「当社は人柄重視の採用を続けてきました。一緒に働きたいと思える人物であれば、未経験の人材でも積極的に採用し、育成してきました。人材紹介事業はキャリアアドバイザーの数が売上に直結するため、増員は不可欠ですが、五つのバリューに共感してくれる人材だけを採用してきました。保育業界の新しいスタンダードを一緒につくるメンバーを広く募っています」（山本氏）。

キャリアアドバイザーの仕事にはインセンティブがあり、実力を付ければ年収アップも可能。業務の都合で作業がない時間帯に帰宅し、その後自宅で作業を続ける等、働き方にも柔軟性を持たせている。

「五つのバリューの一つである『Right At Right』を実践するメンバーばかりなので、マイクロマネジメントをする必要がありません。働き方はある程度、メンバーの自由に任せています。最高の成果に最大の執念を燃やす人達なので、みんな自然と成長していきます。結果を大切にしていますが、結果だけを追うことはしません。失敗してもプロセスを見つめ直し、次に繋げることを重視します。人材育成では、マネージャー陣が若手の人材を懸命に育てています。ここでも徹底的に人材と向き合い、成長を成し遂げるまでとことん付き合います」（山本氏）。

2024年にはベストベンチャー100にも選出され、急成長を遂げている同社。5年以内の上場を目指し、新しいメンバーを募集している。