エスペック株式会社

2007年に60周年を迎えたエスペック株式会社。「環境」をキーワードに、縁の下の力持ちとして日本のメーカーを長く支え、貢献してきた企業だ。

同社の事業の柱となる製品が、高度な技術を搭載した「環境試験器」。これは、温度・湿度・圧力・振動などの「環境因子」が製品や部品に及ぼす影響を分析・評価するための装置だ。私たちが、普段、何気なく使っている電気製品や自動車などは、上記のような環境因子によって性能が劣化すると言われている。これらが製品に与える影響を分析・評価することで、モノづくりにおける信頼性の向上に貢献しているのが、同社の「環境試験器」なのだ。

例えば、灼熱の砂漠で車が走行できるのも、極寒のゲレンデや暖房の効いた湿気の多い室内でも携帯電話が使えるのも、想定した環境を「環境試験器」で人工的に創り出し、そこで製品の耐久性・信頼性のテストを行っているからなのだ。

耐久性・信頼性は、その製品が最高のパフォーマンスを発揮するための大切な土台だ。私たち消費者は、製品が「普通に動いて当然」と考えて使っている。しかし、この「当然」を実現するための努力が、エスペックとメーカーとの間で日々繰り広げられているのだ。その意味で、同社の事業は、社会の安全性・快適性を向上するために必要不可欠な役割を担っていると言えるだろう。

同社の提供する環境試験器は、エレクトロニクス、半導体、自動車、食品、医薬品などの幅広い分野で使われているが、このほかにも様々な分野の製品や部品に必要不可欠な高精細化・高精度化しているため、環境試験の頻度はますます増えると言われている。それに対応して、同社では、より多くの顧客の要望に応えられるように製品群を拡大しており、たとえば大きな製品に対応する「ビルドインチャンバー」や、環境試験の時間を大幅に短縮する「高度加速寿命試験装置」なども開発している。

エスペックの主力製品の生産拠点である福知山工場内の豊富な製品群の中でも、恒温恒湿器「プラチナスKシリーズ」は世界中のデファクトスタンダードになっている。また、製品の販売のほかに受託環境試験サービスやアフターサービスなどを行っており、それらの環境試験事業を総合して、同社の国内でのシェアは6割に上る。また、海外でも3割を獲得しているという競争力の高さだ。

環境試験事業のほかにも、「半導体計測システム事業」および「FPD（フラットパネルディスプレイ）装置事業」を行っている。半導体計測システム事業では、デバイスのできばえをチェックする評価システムを環境試験器と組み合わせて提供し、デバイスの信頼性評価をより高い次元に引き上げている。また、FPD装置事業では、高度な温度制御・クリーン化技術を融合させた「FPD用クリーンオーブン」を提供しており、どちらの事業においても世界トップクラスのシェアを誇っている。

同社の強みについて、総務人事部 木股氏は次のように語る。
「環境試験器などの装置を製造して販売するだけでなく、受託試験サービスやアフターサービスなどをトータルで手がける企業は少ないと思います。製品のラインアップも豊富で、個々のお客様のニーズに合致した製品を提供できますし、すべての面で行き届いたサービスを利用することができる、トータル・ソリューション・プロバイダーであるところが、エスペックグループの何よりの強みと言えます。」
今後も同社では、環境ストレス下の製品パフォーマンス測定やテスト・解析などのコア技術に各種の技術を掛け合わせることで、独自の技術をさらに生み出していく。例えば、環境×メカニカル技術で実現する「高低温搬送技術」や、環境×計測技術で「高低温、圧力下での信号伝達技術」、環境試験器と周辺機器を結んでさらに試験器のパフォーマンスを上げる「環境試験器ネットワーク化技術」などが研究・開発されている。同社の活躍するフィールドは拡大を続け、世界中の多くのお客様に対して、さらなる価値を提供していく。

世界を舞台にした同社の事業活動の基礎となっているのが、「THE ESPEC MIND（企業理念）」だ。その中でも以下の「4つのスタイル」が重要視されている。
１． Progressive（進取的な）・・・ひと味違うことをひと足早く、チャレンジ精神を持って取り組んでいく
２． Reliable（誠実な）・・・ステークホルダーの視点に立った経営活動を行い、ステークホルダーの信頼と満足の向上を追求する
３． Open（開放的な）・・・グローバル社会において、法令を遵守し、社会的責任を持って経営活動を進める
４． Fair（公正な）・・・すべてのステークホルダーに対して、適切な情報提供を行い、公正な経営活動を進める

社員は、これら「4つのスタイル」を常に念頭において仕事に取組んでいくことが求められる。
また、同社は、利害関係者（ステークホルダー）である社員、お客様、株主、取引先を中核に据えた「ステークホルダー・オリエンテッド」の考え方を持ち、これらステークホルダーの幸せを実現する社会的な存在であると自らを定義づけている。この姿勢は、早くから自然環境保全に配慮した活動を行ってきた企業姿勢にも表れている。環境に配慮した製品の研究やリサイクルシステムの構築のほか、環境保全の研究者を支援する公益信託「エスペック地球環境研究・技術基金」の設置や啓発活動など、数々の取組みは社外から評価されている。

そんな同社で責任と誇りを持って働ける人材とは、どんな人だろうか。
「1つは、柔軟性があること。何かにこだわりすぎて硬直化することなく、外部要因や組織・方針の変化などにも柔軟に対応し、行動できることが大切です。また、新しい考えを提案し、実際に形にしていくためのイニシアチブが取れることも重要です。指示待ちをしていては、市場のスピードに追いつけず、ステークホルダーの要望に応えることができません。失敗してもいいのです。主体的に行動する力が必要です。」と木股氏。

同社には、「チャレンジャー制度」という独特な人事制度がある。これは、社員が個人、またはチームを組んで、業務において挑戦すべき事項を設定し、会社に申請するという仕組みだ。例えば、業務の効率化や売上・利益率の向上、省エネ・コストダウンなど、項目は何でも良い。成果目標を数値化して、それに対して120％、150％の達成をした社員が、報奨金をもって表彰されるのだという。1年に300ほどのエントリーがあり、ほとんどの社員が参加するというこの制度。同社の社員の積極性や行動力、目標に対するアグレッシブさなどを示しているのかもしれない。しかし、これらのチャレンジは生半可なものではない。300の目標があったら、おおよそ180ほどが最後の審査で制度を通して成果を報告する。このような制度を通して、同社は社員のチャレンジ精神は行動力を伸ばし、企業力を向上・高度化しているのだ。チームワークが重視されることも言うまでもない。そんな同社で待っている仕事はきっと、やりがいにと達成感満ちたものだろう。