天馬株式会社

収納ケース『Fits』シリーズをはじめとした家庭用品の企画開発・製造・販売、また各メーカー向けのプラスチック素材の受託製造・受注開発を手掛ける、天馬株式会社。1949年設立と長い歴史を誇るが、常に“進化”し続けている。

「会社の歴史は長いですが、私は当社を“老舗企業”と思ったことは一度もありません。なぜなら、日々自分達で道を開拓しながら突き進んでいる組織だからです」本社で総務部人事課長を務める鈴木達夫氏は、このように話す。

同社は2049年の設立100周年に向けて、動き出している。常に時代に応じて変化し、むしろ時代をリードする100年企業になろうと模索しているのだ。

そのことを前提に、まずは同社が長年のビジネスで築き上げてきた功績に触れたい。

収納ブランドとして高い知名度を誇る『Fits』シリーズで同社を知る人も多いかもしれない。だが同社は、OAメーカーや自動車メーカー等に向けたプラスチック素材の製造も手掛ける。このように、設立間もない頃から「自社製品」「受託製造・受注開発」の両輪で成長を遂げてきた。

また同社は国内だけでなく、中国やベトナム、タイ、インドネシアといったアジア圏にもグループ会社を持ち、複数の生産拠点を構える。さらに自動車部品事業においては、アメリカの企業に対しM&Aを行い、現地に拠点を展開。日系企業の海外進出をプラスチック素材の受託製造で支え、また自社ブランドも海外に広めている。

そして同社はこれまでの“歴史”を強みにしながら、“進化”を続ける。

2025年3月期からの第4次中期経営計画では、「サステナブル経営の推進」と「成長基盤の構築」をうたっている。

その進化を遂げるためにも、現在同社は全社的にDXを推進。「デジタル戦略部」を設け、海外拠点を含めた全社・全グループのIT環境を整えている。

「製造業界はDXが進みづらいというイメージがあると思いますし、かつては当社も例外ではありませんでした。しかし2020年頃から、当社は本格的にDXに乗り出しています。以降、各部門の業務効率化、ひいてはメンバーの働きやすさも格段にレベルアップしています」（鈴木氏）。

例えば、国内拠点ではM 365等のクラウドサービスを導入。それまで各拠点が独自に管理していたデータシステムを集約し、一括管理できるように。どこにいてもストレスなく情報共有できる環境になり、営業や管理を担う本社も、製造を担う工場も、ますますスピードアップして業務に取り組めるようになったのだ。現在はこの体制を海外拠点にも広めている。

海外拠点を含む全ての工場で厳しい品質基準を設け、プラスチック製品の総合メーカーとしての「天馬品質」を守り抜いてきた同社。その姿勢はM&Aによってジョインしたグループ企業に対しても怠ることはない。

「プラスチック素材のメーカーって、今の時代厳しいのでは……？」と思う人もいるかもしれないが、“歴史”を強みに“進化”し続ける同社において、その心配は無用だ。

同社は環境に配慮したプラスチック製品・素材に挑戦するプログラム『TSPP（Tenma Sustainable Products Program）』を展開。

プラスチック使用原料の10%を再生素材にし、包装素材やラベルにも環境配慮を施す。それでいて、これまでの「天馬品質」を貫きながら、消費者が納得する「適正価格」で販売。そして「安定供給」できる環境を整える。ここまでを全てクリアした製品が初めて、『TSPP』の称号を得て世に送り出される。まずは代表ブランドである『Fits』シリーズを筆頭に、『TSPP』の製品が生まれている。

戦後間もない頃からプラスチックの可能性に着目し、暮らしや産業を支えてきた同社。「正しい扱い方をすれば、プラスチックは人々の味方であり続ける」ということを、行動で示しているのだ。

「再生プラスチックって、『再利用素材だから原価も低いのでは？』と思いがちですが、実はその逆なんです。近年様々な再生プラスチック製品が注目を集めていますが、企業体力がなければなかなか難しい取り組みです」取材に同席した人事担当者は語る。

さらに同社は2024年9月に、千葉県の野田工場内でリサイクルセンターを稼働させた。「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」（新プラ法）に掲げる排出事業者自らが排出するプラスチック使用製品産業廃棄物等の回収と再資源化に対し、事業計画を行った最初の企業として、環境省・経産省両大臣により認定され、国内メーカーとして先駆けとなる取り組みである。

『TSPP』も、リサイクルセンターの稼働も、容易にできるものではない。長年にわたり培ってきたプラスチックの製造ノウハウと、海外拠点や取引先企業とのネットワークを駆使できる同社だからこそ、成し得ることなのだ。

会社が今後も活躍するために、そしてプラスチックで社会を支えるために、今後も同社は、業界をけん引していくだろう。

100年企業を目指し、大きな転換期を迎えている同社。現在活躍するメンバーにも、そしてこれから迎えるメンバーにも、その変革を共につくり、共に楽しんでほしいと鈴木氏は語る。

しかし、変化を生み出しながら第一線で活躍するメンバーにも、ブレない軸がある。それが同社の「大切にする価値観 (Values)」だ。

＜大切にする価値観 (Values)＞
■誠実に行動する
■人を大切にする
■挑戦を誇りにする
■「なぜ」「どうして」の好奇心を大切にする
■限りある資源を大切にする

この価値観を体現するメンバーは、会社の基盤を支えるだけでなく、将来のキャリアアップにつなげリーダーシップを発揮していくことも珍しくない。

例えば、営業として新卒入社したとあるメンバーは、わずか3年目にして海外拠点（タイ）へ異動。現在は、海を越えて自社ブランドを広める存在として活躍している。新卒メンバーも早期にこのようなキャリアを歩める同社。経験を積んだキャリア入社なら、尚のことそのチャンスは多い。

「新たなことに挑戦するメンバーの意見を、会社は喜んで採用します。ぜひ、周りを巻き込んで突き進んでいってほしいですね」と鈴木氏。

そしてこのようなメンバーの活躍を支えているのも、同社のDX推進だ。

また「働きやすさ」という点では、業務効率化だけでなく、心理的安全性等の“心理的な働きやすさ”もますます高まっているという。eラーニングの体制が整ったことで、スキルアップ研修はもちろん、コンプライアンス研修も積極的にできる環境になったのだ。これも、DXを担うデジタル戦略部が生み出した功績の一つだ。


“歴史”と“進化”を誇る同社が、いわば「新たな創業期」を迎えている。設立100周年を迎えた時、同社はどのような姿になっているだろうか。そんな同社の新しい時代を、共に創り上げてほしい。