合同会社TOIRO

合同会社TOIROは、総合人材サービスを手掛ける2019年9月設立のスタートアップである。同社は、SES事業で活躍するITエンジニアを求めている。
同社の主な事業内容は、次のとおりだ。

●SES事業

2023年9月からスタートした新規事業であるが、人材紹介事業など他事業における顧客との繋がりを、SESとしての案件獲得に積極的に活用している点が特徴的。
例えば、顧客であるコンサルティングファームからは、獲得案件のヒアリングや要件定義といった上流工程からの参画を求められたり、設計・開発以降のデリバリーを任されるといったケースがある。また、自社アプリサービスを提供している事業会社とは、直取引でサービス開発における技術支援を手掛けている。

そのほか、SES案件の元請会社など約300社とのネットワークを構築。
「エンドユーザーはサービス業や製造業、通信、EC等多様ですが、従業員数1,000名以上の大手が多く、案件の領域としてはインフラと開発が半々です。基本的に、エンジニアの希望や技術レベルなどに応じた案件にアサインできるネットワークを構築しています」とSES事業を管掌する金田明氏は説明する。

直取引の売上比率が40％と比較的高く、エンドユーザーと直接やり取りしながら開発に取り組み、実際の利用シーンを確認できる案件や、2次請けとして上流工程から加われるチャンスがあることは、同社の魅力だろう。

●人材紹介事業

同社の主力事業。20～30代の若手からミドル層を中心とした人材を、大手からスタートアップまでの幅広い求人企業とマッチングさせる高精度のサービスが強み。ピンポイントのヘッドハンティングも手掛ける。

同社では、求職者データベースを持つ大手人材サービス会社と提携し、独自に獲得した求人企業の人材ニーズとマッチングさせている。その点において、人の行動心理を分析し、信頼されるスカウトメールなどのトークスクリプトを開発。
「同業他社の最大6倍の返信率を得たケースもあります。企業や人材が本質的に聞きたい部分にフォーカスしたメッセージを作成することで納得感のあるマッチングを実現し、入社後1年間の定着率が98％という実績を上げています」とCEOの永山太陽氏は胸を張る。

●人材派遣事業

2024年8月に免許を取得したばかりであるが、役員のネットワークを活用して製造業やホテル、鉄道会社といった大手企業の顧客を獲得し、好待遇の派遣先を確保している。

●『TOIRO Career』

副業可能な企業に特化した人材紹介サービス。自社独自のサービスサイトを2025年1月にローンチ予定。
「私自身が会社経営と会社員という二足の草鞋を履く副業生活を続けてきました。副業は、人の視野や幅を広げて環境変化をもたらし、起業を含め次のステップに進める大きな契機となるものです。この意義を社会に広めていくために、ほかにない独自の人材紹介サービスを立ち上げていきます」と永山氏は意気込む。

同社を創業した永山氏は、2017年に新卒で就職・転職サイト運営大手に入社し、営業職として2年間取り組む。学生時代に起業するなど経営者志向のあった永山氏は、2019年3月に退職し、前職時代の上席など5名によるキャスティングPR会社の創業に加わる。そこで起業を経験し、同年9月、TOIROを創業する。なお、TOIRO創業前にSI事業やオフィス用品ECを運営する大手に入社し副業を経験する。

「元々起業志向がありましたが、何をするか考えた時、人と人、人と企業の出会いといった機会を提供することで人が変わることを支援したいとの思いがありました。キャスティングPR会社の創業メンバーから、自分には人と人を繋げる力があると言われたことも自信になっています。そこで、多様性のある社会と言われている昨今、人が個性を発揮して活躍できるサービスをつくろうと思い立ち、社名を“十人十色”から取ってTOIROに決めました」と永山氏は経緯を説明する。

同社が掲げるVision、Missionは次のとおり。

●Vision：世界中に新たな出会いを
●Mission：多様性が尊重される社会の実現

こうした思いについて、永山氏は次のように話す。
「人や企業が変化する契機を世界中に提供する存在になりたいと思っています。人材サービスを基軸として、結婚などのライフイベントにも領域を広げていきます。そして、2029年には300名規模までの成長を目指します」

総合人材サービス業として、価値創出の基軸には人口不足・労働力不足という課題の解決を置いている。事業としての方策は、次の3方向。
副業支援による個人の選択肢・就業機会の創出
SESを通じてのDXによる省人化・生産性の向上
海外人材の供給や恋愛・結婚等のライフイベント支援による出生率改善というフィジカルな人口増加

明確なビジョンを持つスタートアップとして、今後の動向は要注目だ。

2024年11月現在、同社のメンバーは役員2名、社員4名（2025年1月に2名の社員SESエンジニアが加わる予定）。平均年齢は30歳という組織だ。
その全体を束ねるValueはまだ言語化されていないが、「“自由と規律”にしたい」と永山氏は話す。

一人ひとりのキャリアビジョンを尊重し、その実現に向けて最大限の機会を提供すべく裁量を与える一方で、会社組織としての一定の規律を重く見るという考え方だ。
例えば、同社では週2回のフレックスタイム勤務を認めているが、その行使の際は会社の共有カレンダーに事前に記入するルールを定めている。また、月に1回、就業時間中に理美容室に行くことも認めているが、「2時間以内」をルールとする等。
「こうした制度は社員の希望を聞いてのことですが、すべてにおいてメンバーとともに細かくルールを決めています。ルールが明確でなければどこまで許されるのか、どこから許されないのかがわからず、組織としての統制が取れなくなるからです。こうした“自由と規律”のバランスを取って運営していきたいと考えています」（永山氏）。

人材育成においては、未経験者も採用している同社では基本的に2か月間の導入研修を実施。カリキュラムを決め、その進捗をチェックしながら進めている。
働き方としては、客先常駐やリモートワークが多いSESエンジニア以外、密なコミュニケーションがしやすいオフィスワークが基本。勤務時間は、先述のとおり週2回のフレックスタイムが利用できる。

社内コミュニケーション促進策としては、年に数回は全員が集まってレクリエーションなどを楽しむ機会を設けている。そのうち1回は社員旅行を実施。2024年は、近郊でのBBQを楽しんだ。
「基本的にオープンなコミュニケーションを重視し、その一環として会社の経営状況なども社員が自由にアクセスできるようにしています」（永山氏）。

そんな同社が求める人材像について、永山氏は次のように期待を寄せる。
「新しいこと、必要なことを吸収できる素直さと、人に関わるサービスを手掛ける上でも、人を思いやることができる方にぜひ加わっていただきたいと願っています！」

SESエンジニアとしても、このような総合人材サービス企業の一員として、ビジョンを共有する意義が感じられることだろう。