株式会社Opt Fit

株式会社Opt Fitは、フィットネスジム向けAI監視サービス『GYM DX』を独自開発・提供しているスタートアップ。2022年1月に本格展開をスタートして以来、1年半ほどで1,400店舗まで急拡大しており、業界最大手のパーソナルジムグループをはじめ、総合型フィットネス・24時間型のコンパクトジムなど幅広い業態に採用されている。

導入するコンビニサイズのフィットネスジム店舗内には10～15台の監視カメラが設置され、撮影されている動画はクラウド上の『GYM DX』に送信、AIがリアルタイムで分析し、異常があれば検知して店舗運営者にアラートを飛ばす。監視カメラは店舗に入った人を継続的に追い、倒れる等して一定時間以上動かないといった場合や犯罪行動等の異常を自動的に検知し、通報する。これにより監視員を置く必要をなくし、24時間無人営業を実現させた。

また、マシンごとの利用率を可視化し、混雑状況を会員にリアルタイム配信することで顧客満足度の向上を図ることができる。加えて、時間帯別の利用率といったデータを提供することで、店舗運営のデータに基づく経営判断も可能にしている。

さらに、マイク付きカメラが普及し始めているのを受け、今後は音声も分析しカスタマーハラスメント行為等を検知できる機能や、特定の個人の店舗内行動を追跡し、退会者や高頻度利用者の行動特徴を分析して退会抑止や利用度向上の施策、マーケティングにも活用できる機能を追加していく予定だ。

今後の成長戦略としては、140億円ほどの規模で競合が参入しづらいフィットネス市場を固めた後、800億円ほどの介護等ヘルスケア関連市場、さらに8,000億円と大規模な工場や物流施設市場を狙っていくために、介護施設と食品加工工場、金属加工工場でPoCを開始している。
さらにその先では、データドリブンな経営のコンサルティング業務までも視野に入れている。
こうした実績と可能性の広がる『GYM DX』はVCからも高く評価され、シリーズAで累計5億4,000万円を調達。2028年までのIPOを計画している。

同社は2020年3月、代表取締役CEOの渡邉昂希氏、取締役CTOの荒川準也氏、取締役CROの森田尚也氏の3名が共同で設立した。

渡邉氏は4歳から大学4年まで水泳競技を続け、卒業後はSaaSベンダーに入社し、メディア事業やSaaS事業に幅広く従事。それまでの経験を基に24歳で独立、スイミングスクール向けのメディア事業会社を起業する。
荒川氏は、新卒で入社した自動車メーカー系のシステム開発会社でのデータ解析業務等を経て、23歳で独立し、AIの受託開発会社を起業する。
森田氏も、新卒で入社した自動車メーカー系のシステム開発会社でデータサイエンティストを務めた後、26歳で独立し、AIの受託開発会社を起業していた。

渡邉氏の会社と荒川氏の会社で兼務していたインターン生がいて、その存在を介して両名は知り合う。森田氏も人を介して渡邉氏と知り合った。渡邉氏は、顧客であるスイミングスクールの利用者が溺れてしまう事故を防ぐための監視に頭を悩ませていることを知り、そのソリューションを荒川氏に相談。検討の結果、プールでは難しいものの、ジムならば監視（動画の解析とアラート発出）が可能と分かり、PoCを実施。その結果、ビジネス化が見通せて同社を設立した。
「当初はオンプレミスのサーバーで動かす設計を行っていましたが、ジムごとにサーバーを設置して保守運用まで行うのではスケールが難しいと、クラウドに移行することにしました。そのあたりの開発に苦労し、『GYM DX』のローンチまで2年弱を擁してしまいました」と、開発を担った荒川氏は振り返る。

同社のMISSION、VISIONは次のとおり。

MISSION：AIと人間が共存する仕組みを構築する
VISION：AIで人にしか成し得ない事を増やし続ける組織

これらについての思いを、荒川氏は次のように説明する。
「ジムの監視員は、平時はそこにいるだけで、その分の人件費が問題視されてきました。これを機械化することでムダなコストをカットできるとともに、人は人にしかできないことに専念できるようになります。そして、AIは人の仕事を奪うのではなく、共存する。そんな世界をつくりたいと思っています」

2024年2月現在、同社のメンバーは役員3名、社員16名、業務委託9名、インターン2名。総勢30名が、東京と名古屋のオフィスにほぼ半々に分かれて仕事をしている。

その全体を束ねるVALUEとして、次の「3つのドリブン」を共有、大切にしている。

・当事者意識ドリブン：常に、自分だったらこうするを意識しよう。また、周りが困っている時も、他人事ではなく、自分ごととして手を差し伸べる心をもつ。
・助け合いドリブン：いかなる時も、尊敬と感謝の気持ちを持って接する。
・本質ドリブン：「なぜ」を深ぼろう。自分がこうだと思うからでなく、相手と共通認識を持って、本質的な課題解決を行う。

「自分達がつくったサービスを少人数で回し、価値を提供し続けるためには、自分の責任外のことであっても、サービスの不具合に気付けば指摘し、より良くする施策を提案するといった姿勢が不可欠です。そんな姿勢の根底には、メンバー同士がリスペクトし合い助け合う精神や、なぜそれが必要なのかを掘り下げて、より的確な改善策を考える精神が必要です」（荒川氏）。

そこで同社では、隔週で営業と開発の合同ミーティングを開き、ユーザーの声やお互いの意見を共有し改善に繋げる場を設け、日常的に「3つのドリブン」を実践する機会をつくっている。さらに、メンバー各自の実践状況は人事考課にも反映し徹底を図る。

また、そのために必要なフランクなカルチャーづくりのため、「社員同士飲み会手当」を支給。自チームメンバーの場合は月1回、他チームメンバーの場合は上限なしだ。加えて、東京と名古屋のメンバー同士では、日常的なオンライン会議だけでなく、中間地点である静岡県などで4半期に1度はオフサイトミーティングを開催し、交流を深めている。

スキルアップ策としては、エンジニアの場合はAWSの個人アカウント費用を会社が負担し、プライベート時間でも自由に触って研鑽できるようにしているほか、テック系のイベント参加や書籍購入費用を会社が負担。また、全員に対して月7,000円のフィットネス手当を支給している。「顧客の現場をユーザーとして体験し、あわよくば問題点を見つけてくることを期待している」と荒川氏。もちろん、社員の健康づくりのための福利厚生の一環でもある。
福利厚生では、社員の誕生日に会社が「e-GIFT」をプレゼント。ストックオプション制度も導入している。

そんな同社が求める人材像について、荒川氏は次のように期待を寄せる。
「まずは自らの業務はやり抜く責任感がある上で、『3つのドリブン』に共鳴していること。そして、問題解決が好きであること。できれば、フィットネスが好きであるとなおいいですね」
コアテクノロジーの動画解析技術で大きな可能性が広がる同社。その募集は見逃せないだろう。