株式会社ASA

株式会社ASAは、仙台市にあるWeb制作会社。クライアントのサービスやコミュニケーションに関する課題を、クリエイティブで解決する。Web制作を中心に映像、スマートフォンアプリ等、幅広く対応できるのが特徴となっている。

同社の強みは、クライアントの課題をワンストップで解決できる制作体制。企画からデザイン、開発、コーディングまで自社で完結させ、制作進行におけるコミュニケーションロスを最小限にとどめる。加えて、Webサイトだけでなく、映像の制作も手掛けているため、複数のメディアでテーマやデザイン、コンセプト等を共通化させることもでき、窓口も一本化されてキャンペーンやプロジェクトを進めやすい。

「Webサイト、デジタルコンテンツやデジタル体験の開発ソリューションの提供が当社の事業。Webサイトに関しては、公開後の運用も手掛けています。外部のパートナー企業と連携し、動画制作やアプリ開発も行っています。専門性の高い人材が各ポジションを担うことで、チームでレベルの高いデザインや開発を行うことが可能となっています」（制作事業本部 副本部長・鈴木拓磨氏）。

Webサイトやデジタルコンテンツの制作のほか、同社ではWebサイトやデジタルコンテンツの「QA(Quality Assurance)」も事業展開している。長年のデジタルコンテンツ制作経験を生かし、UI/UXテストを強みとした検証で機能性・デザイン・ユーザビリティを徹底的にチェックする。

「1,000ページを超える大規模なWebサイトのバグ取りをして、レイアウトが崩れていないか、システムが正しく動いているか検証します。スマートフォンは機種によって異なるため、様々な機種で検証する必要があり作業は大変です。さらに当社では、VR/ARコンテンツに特化したQAサービスも展開しています。Unity開発者およびトレーニングを受けた社内の専門テスターが、多様なVR/ARコンテンツの検証を担当します」（鈴木氏）。

QAはリリース前の製品やサービスを内容とするケースも多いため、厳重な注意が必要だ。同社では、検証するための専門ルームを設置。他部署の人間は立ち入り禁止。どんなプロジェクトが動いているか、チームのメンバーと経営陣しか知らないという徹底した管理体制を敷いている。

「情報が漏洩しないように、徹底した管理体制を敷いています。監視カメラを設置して、専用ルームへの人の出入りをチェック。入室時にカメラ認証して、作業中はスマホを預かります。そこまでの徹底した管理体制をとっているため、クライアントからも安心してデータを預かることができます」（鈴木氏）。

2019年、同社はソネット・メディア・ネットワークス株式会社（現 SMN株式会社）の連結子会社となり、ソニーグループの一員となった。それまでも仙台のクライアントだけでなく、東京の大手企業の案件も手掛けてきた同社。ソニーグループの一員となったことで、これまで以上に大型案件にチャレンジする機会が増えた。

案件の大型化に伴い、同社では外部パートナーとの協業も加速させている。東北エリアを盛り上げたいという思いも重なって、外部パートナーを東北のIT・Web系の企業を選んでいる。

「外注する際は、可能な限り東北のWeb制作会社や、システム開発会社に依頼するようにしています。東北は九州や北海道に比べ、IT企業が少ないのが実情。当社がハブになることで、東京や全国のクライアントの仕事を東北のパートナー企業と一緒に手掛けます。クオリティーの高い仕事をすることによって、東北の地にデジタルの花を咲かせたいと考えています。東北でITの勉強をしても、みんな首都圏の会社に就職します。それは、東北にやりがいのある仕事が少ないからです。当社が東京とのコネクションを生かして、やりがいのある仕事を東北に持ってくることで、東北で活躍するデジタル人材を増やしたいです」（鈴木氏）。

東北のIT業界を盛り上げるために、自社がハブとなって東京と東北のコネクションを作ろうとしている同社。その目は世界に向いている。海外の案件を同社が受け、東北のIT企業やフリーランスのデジタル人材と「メイド・イン・ジャパン」の高品質な生産体制を構え、低価格ながらも拡張性のあるリソースと開発物の提供を考えている。

「私達のチームは『メイド・イン・ジャパン』の高品質なアウトプットをアメリカ企業に提供していきます。サンフランシスコのオフィスに加え、近々ロサンゼルスにもオフィスを置く予定です。QAのプロジェクトは海外のクライアントが多く、当社には外国籍9名を含めたバイリンガルのメンバーが17名在籍しています」（鈴木氏）。

海外の日本企業への信頼は高い。「メイド・イン・ジャパン」の高品質なアウトプットへのニーズに同社が応えていくことで、仙台と世界をダイレクトに繋ぐ。しかも、近年は円安の影響で日本企業への発注のコストパフォーマンスがアップしている。

「インドやフィリピンに発注すると、クオリティーが安定しないと感じます。日本企業はクオリティーの高いパフォーマンスが安定的に提供でき、しかも円安の影響でアジア各国の制作会社に依頼するのと変わらない価格になっており、日本の制作会社へのニーズは高まっています。当社代表は、仙台を中心に活躍してきたクリエイター。東北一円の制作会社とネットワークを形成し、東北とアメリカを繋ぐビジネスラインを創造していきます」（鈴木氏）。

2001年の創業からスペシャリスト集団として活動している同社。アウトプット重視の自由な働き方をしてきた過去を持ち、現在もそのDNAは受け継がれている。加えて、ソニーグループに入ったことで、会社として制度面が充実。東北の小さなWeb制作会社が世界へ向けて飛躍する土台は固まった。

「徹底した実力主義で、結果さえ出せば、いつ出社しても、いつ退社しても良いような自由な気風の会社でした。自由すぎる会社だったから、ソニーグループの一員となって適度な規律がもたらされ、働き心地は良くなりました。とはいえ、今も昔の自由を尊ぶカルチャーは残っています。クライアントの要望に対して、仕事の進め方も自由。やることをやれば、あとは自由。そんな会社です」（鈴木氏）。

同社のフルタイムのメンバーは約70名。プロデューサー・ディレクター・プロジェクトマネージャーが24名、クリエイティブディレクター・プランナーが3名、デザイナー9名、エンジニア14名。その他、QAマネージャー・スペシャリストが12名、管理部門のメンバー4名が在籍している。

「制作や開発は、外部パートナーにお願いするケースもある関係で、上流を手掛ける人材が多いのを特徴としています。今後も上流の人材を手厚くしていきたいと考えているので、上流のポジションへステップアップを狙いたい人材を歓迎します。マネジメントだけでなく、スペシャリストの道も用意して、本人の希望に沿ってキャリアが構築できる環境を整えています」（鈴木氏）。

元々スキルの高い社員ばかりのスペシャリスト集団だったが、ソニーグループに入り、会社として成長を目指すため、属人性が高く再現性が低いワークスタイルからチームワークで効率的に高いパフォーマンスを発揮する会社に進化する。そのためには、若手の人材を中心に新しいメンバーを求めている。

「他社でステップアップできない人材でも、当社なら大いに活躍するフィールドがあります。小さな組織の肩肘張らない社風と、大手グループのしっかりした制度が混在しているハイブリッドなカルチャーで、働き心地も抜群です。」（鈴木氏）。

年俸制を採用しており、1年間の目標達成度合いで翌年度の年俸が決まる。頑張っている人が埋もれないように、会社は社員の働きをしっかりと把握するように工夫を凝らしている。

「年度の初めに上長と面談。四半期ごとにもミーティングの機会を設けて、目標達成への進捗を話し合います。努力が収入に結び付くようにしていますので、結果を出せば年俸は上がります。産休育休の取得実績も高く、男性社員の育休事例もあります。女性の社員比率は4割。管理職も12名のうち2名が女性です。制作部は、ここ数年、仕事や会社が原因で離職した社員はゼロ。働きやすい会社だと自負しています」（鈴木氏）。