株式会社Graham Solution

株式会社Graham Solutionは関西・関東に拠点を置くSES企業である。
同社の主な取引先は、独立系SIer・大手電気メーカー系SIer・大手ISP事業者が中心となっている。
手掛ける領域としては、金融業や製造業のシステム開発支援や、クラウドを含むインフラ領域の構築・運用管理が大半を占める。

「開発においてはプロジェクト統括や要件定義や設計といった上流工程などを得意とするメンバーが揃っています。そしてインフラではサーバー構築・運用管理においてのPMを担えるメンバーが揃っています。当社はこうした比較的ハイレベルな業務を得意としており、入社してからステップアップしていく人がほとんどです。」と代表取締役の藤田海渡氏は胸を張る。

同社のこうした強みは、「第一に従業員満足。第二にお客様満足。第三に会社満足。三方善しの法則、忘れるべからず。」という理念による処遇が支えている。

藤田氏は次のように説明する。
「SES事業はエンジニアが存在して初めて成立します。したがって、エンジニアファーストの案件選びや育成、報酬体系を構築しています。何よりも若いからこそ上を目指せるキャリア作りを心掛けています。」

育成に関しては、未経験者の場合、Java・C♯・JavaScriptという同社における主力言語を一から指導。データベースやWeb画面を実際に触る機会や、研修用にあえてバグを散在させ、使いにくく構築したシステムを改修するという実践的なプログラムを用意している。

報酬体系としては「どれだけの売上でどれだけの給与が支給されるか。そしてその給与にはどれくらいの社会保険料が必要になるのか。」を1円単位で明示した給与テーブルを作成し、全員に公開している。

「それだけでなく、年に1度の総会を開催し、会社の利益や納税額まで明らかにし決算内容の振り返りを行います。そこで次年度はどんな方針や戦略で臨むかを共有する機会としています」（藤田氏）。

さらに社員のキャリアを現場レベルで理解していけるよう、藤田氏も現場に出続けることを考えているようだ。

こうした経営方針の背景には、藤田氏の次のような考え方がある。

「当社は、SES企業としてのあるべき姿にこだわっています。MISSIONにおいて“シンカ”を追求する。と表現していますが、“進化”であったり、“深化”や“真価”であったりします。こうした取り組み姿勢で、SES業界を変革する存在を目指します。なぜ、大阪府の田舎に本社を構えているのか？それは家賃の高い都会に置く必要がないからです。このような地道な取り組みを色んなところにちりばめています。」

同社は2019年7月、藤田氏とその仲間達によって設立された。藤田氏は以前、社員数600名ほどのSES企業でエンジニアとして働いていた。その会社は営業部門の意向が優先され、エンジニアは片道2時間という遠方の現場や、炎上して長時間労働が強いられるような現場にアサインされることが少なくなかったという。
「SESとはもっとエンジニアに寄り添うべき事業ではないのか、という疑問や不満が募っていました。そこで、エンジニアが報われる、自分が働きたいと思えるような会社をつくろうと思い立ちました。」

そこで、こうした問題意識を共有するエンジニア仲間を誘って同社を設立する。その当初から、藤田氏は堅実経営に徹する。
「父親と叔父が経営者で、父親は堅実派でしたが、叔父は真逆だったのです。叔父の会社の最大瞬間風速は凄いものがありましたが、振れ幅が大き過ぎ、厳しい時は本当に苦しそうでした。一方、父親は着実、順調に業績を上げている。そんな教科書が目の前にあったことが大きかったと思います」
「石橋を叩くどころか、壊して自分で作り直すぐらい」と自称する藤田氏は、創業以来リスクを避けるべく着実に内部留保をつくり、無借金経営を貫いている。そんな財務状況を社員にも共有し、安心して働いてもらうことにも努めている。
「ただし、いずれ事業拡大を図る上で金融機関に頼る可能性はあると考えています」（藤田氏）。

そんな同社のビジョンは、前述のとおりSES業界を変革し、地位を向上させることだ。
「“IT土方”等とよく揶揄されているとおり、長時間労働が蔓延しているブラックな業界というイメージが残っていると思います。当社は2021年の平均で月8時間という実績がありますが、これはクライアントに対して、長時間稼働となる場合はお断りする前提で契約しているからです。また、エンジニアへの還元率は74～92%という高いレベルを実現しています。こうしたスタンスを打ち出し続け、規模を拡大して影響力を発揮することで、業界を変える触媒になれればと思っています」と藤田氏は意気込む。

還元率だけに留まらず、SESという概念についても常に考えているという。
「エンジニア派遣などと揶揄されがちなSESですが、我々はプロジェクト支援事業だと認識していて、エンジニア派遣とは明確に分けて考えています。」と藤田氏。
聞くと、手を広げすぎずに顧客を絞り込んで厚い信頼関係を作ることで持ち帰り開発を実現したり、エンジニアのキャリアアップを考慮した配置を顧客と相談できる環境を作ったりと独自の展開方法を見せている。

それだけではない。同社の既婚率も衝撃だ。
現在所属している社員の半数は既婚者で、その9割にお子さんがいるという。
平均年齢26.4歳であることを考慮すると、驚くべき数字だろう。
「結婚が全てじゃないと思うんです。でもその選択をできる環境っていうのはきちんと会社で用意しなきゃいけないかなと考えてます。」（藤田氏）

2022年12月現在、同社の社員数は20名ほど。その特徴は“平均年齢26.4歳”であることで、最年長でも33歳だ。
「我々平成生まれは“ゆとり世代”“さとり世代”とも言われますが、そんな世代でも本気を出せばそこそこやれるところを日本の皆さんに見せていきたい。若い会社でありながらも全員がプロフェッショナル集団であることでアピール材料にしたいという思惑もあります。」（藤田氏）。

もちろん、社員間の年齢が近いことで、和気あいあいとした風土形成にも繋がっている。同社は、大阪府高石市の本社オフィス近くにあるBARの運営会社に出資しているが、そのBARを若いメンバーが交流する拠点として活用している。
東京拠点でも社員数が増えてきたら、BARを出したいと考えているようだ。

そんな同社では、「逆指名制度」というユニークな取り組みも行っている。半年に一度、メンバーが上司を“逆指名”するという試みだ。
「会社は選べても、なぜ上司は選べないのかとの疑問がありました。そこで、この制度を導入してみると、大好評となりました」（藤田氏）。
「逆指名制度」では、マネージャーが一人ひとり自らのチームビルディングやマネジメントの方針等についてメンバーにプレゼンテーションし、メンバーが「この人に付きたい」という上司を選ぶという仕組みである。当然、偏りが生じるが、調整することなくメンバーの投票は100%受け付けられる。「投票されない役職者は、その事実を受け止めて反省材料にしてほしいという狙いもある」と藤田氏。この結果は、人事考課にも反映し、マネジメント力向上に繋げている。

このように、人材育成に関しては同社のMISSIONにも掲げている“因果応報”という方針で臨んでいる。「未来の自分は現在の努力が決める」という法則の下、自分のキャリアは自分が責任を持って自由に構築していくべきという考え方だ。
「もちろん、会社は協力を惜しまず、私や経営幹部が技術等の情報提供やサポートを通じて全力で支援します」（藤田氏）。

藤田氏の風土づくりの根底には、人生の歩き方として、会社や仕事のことだけでなく、私生活の充実や満足を大事にする思いがあるという。そこから、「勉強や仕事はほどほどに」という“やり過ぎず、ユル過ぎない”バランスで臨んでいる。

そんな同社が求める人材像について、藤田氏は次のように期待を寄せる。

「この『Green』では、一緒に会社を創っていく想いのあるエンジニアを採用したいと考えています。エンジニアとしての成長もサポートしながら一緒にキャリアを作っていきたいなと考えています」