株式会社ステップワールド

健康食品やスキンケア製品のメーカーである、株式会社ステップワールド。同社は現在、10種類以上の自社開発商品を、自社ECサイトやショッピングモールを通じての通信販売、および大手ドラッグストアや量販店等への卸売チャネルを通じて提供している。
代表的な商品は、次の2品目。いずれも、台湾や香港、中国といった中華圏でよく売れているのが特徴的だ。

●『潤姫桃子』
肌の潤い補給のためのサプリメント。100%国産米由来のセラミドやコラーゲン、ビタミンを配合。日本の「特定保健用食品」（トクホ）の成分も含む。桃味のおいしい“粉雪パウダー”で、水なしで飲める。

●『KAMINOWA』
薬用育毛剤（医薬部外品）。センブリエキス、グリチルリチン酸ジカリウム、ゲンチアナエキス等の有効成分を配合し、無香料・無着色で鉱物油や界面活性剤等は無添加。

中華圏で売れている要因は、商品企画段階から現地出身のスタッフが加わり、試食や試用を何度も繰り返して仕上げているマーケットインのアプローチがある。
「当地のお客様は商品選びにはシビア。かつてのように日本製というだけでは売れなくなっています。比較検討に耐えられるようなエビデンスや味の追求と、プロモーションの工夫が不可欠であり、そこにノウハウを蓄積しています」と代表取締役の風間元氏は話す。
さらに、台湾の有名女優や香港の人気歌手と契約し、現地にCMを流してのブランディングにも取り組んでいる。

●その他
上記以外では、内臓脂肪を減らすのを助ける機能性表示食品『HELASLIM』、植物発酵エキスが主成分の『ベジライフ酵素液』、美のミネラルであるケイ素を主成分としたスキンケア『Shiny SILICA』、六つの役割を持たせたオールインワンジェル『雪の上』、GABA＋ラフマ葉抽出物＋有胞子乳酸菌配合サプリメント『ゆるる夢』等がある。

製品づくりのポリシーやこだわりについて、風間氏は次のように説明する。
「人の口に入り、肌に直接付けるものとして、当然のことですが安全性や機能性のエビデンスを最重視しています。データで納得いただくよう、安全性試験や臨床試験のデータを示すといったことも行っています」
同社の販売力の源泉は、インハウスによるWeb広告の運用。社内で広告の企画からクリエイティブ、配信、データ分析までを一貫して行い、ノウハウを蓄積しているのが強みだ。

●太陽光発電事業
さらに同社では太陽光発電事業も手掛けており、現在茨城県と千葉県で4設備を稼働。安定的な売電収入に繋げている。

同社の事実上のスタートは、2003年11月。大手住宅メーカーで営業職を務めていた風間氏が、父親が経営する漢方系健康食品ショップに手伝いに入り、当時発展し始めていたECをスタートさせたことにさかのぼる。
「起業当初はPCが不得意で一本指でキーを押すようなリテラシーでしたが、隆盛し始めていたECに関心を持ち、見よう見まねで始めてみたのです。すると、思った以上に売れ始め、漢方系だけでなく一般受けする商品に広げればいけるのではないかと、本腰を入れようと独立を決めました」

当初は、既存の健康食品や入浴グッズ等の雑貨を仕入れて販売する小売業のスタイル。自らメルマガを発信し、受注や仕入管理をし、梱包・発送するという個人ネットショップの標準的な業務をこなしていった。
「5年目に資金的余裕ができたこともあり、オリジナル商品にチャレンジしようと思い立ちました。仕入れ商品の販売にはメーカーの制約があって、もっと自由にやりたかったし、商品を右から左に流すことに飽き足らなくなったからです」

第1号のオリジナル商品は『プライムベジタブル』というサプリメント。「あまり売れなかったが、沢山のことを学べた」と風間氏は言う。仕入れ販売よりも利幅が大きいこと、販売の自由度が格段に高まること、そして在庫リスクの中味。これらを押さえながら、徐々に商品開発を進めていった。すると、モバイル通販の急拡大に乗る形でサプリメントがヒット。「女性向けの美容系市場のECに可能性を見出した」と言う。そして、これまで100アイテム以上を開発・リリースし、ノウハウを蓄積してきた。

今後のビジョンは、同社の商品が当たり前のように各国で買えるスタンダードになること。風間氏は次のように話す。
「日本の当社で働いた外国人スタッフが母国に帰国した時、街のドラッグストアで当社の商品が売られていて、そのことを家族や友人に自慢できる。そんな状況を目指したいですね」

ここ数年で台湾や香港、中国で売れ始めているが、現地では日本の大手化粧品が著名ブランドとなっている。そんな存在を目指して、現地の著名女優や歌手との契約にも成功した。
「本人のイメージを重視する上で契約先は吟味されます。その点で、当社の商品が評価されたと受け止めています」と風間氏は胸を張る。

そして、今後は既進出国への未発売商品の投入や、シンガポール等東南アジア諸国への展開を進めている。「さらに、欧米等へのグローバル展開も目指したい」と風間氏は意気込む。

2023年2月現在、同社の社員数は25名。男女比は1対2で、台湾やベトナム等4カ国からの外国人が36%を占めるという多様化が進んでいる。なお、社内公用語は日本語で、全員が日本語堪能だ。

文化的背景や価値観が異なるメンバーをまとめていくマネジメントポリシーや施策について、風間氏は次のように説明する。
「誰もが納得できるように合理的な判断を最重視し、できるだけ数字で可視化することに努めています。また、情報共有を進めるために、私を含めた全員のスケジュールとメールをオープンにしています」
文化的な常識の違いを埋めることは難しい一方、やる・やらないの合理的判断やスピード感といった共有し合えるビジネス上の価値観を重視している形だ。

そして、社員の処遇や福利厚生に大きな力を入れているところが特長的と言える。
まず、資格取得の支援。IT系や経理系、語学系等、業務に密接な幅広い資格を30ほど設定し、その講習や試験等の費用は会社が全面的に負担。さらに、取得者には毎月資格手当まで支給している。
次に、社員コミュニケーションや健康への支援。全社的な飲み会は自由参加の歓送迎会や忘年会しかない代わりに、社員同士の食事等の費用を会社が補助。また、ジムやマッサージ等の費用も補助している（いずれも上限あり）。
ワークライフバランスも重視し、残業はほぼゼロを維持している。
給与面では、賞与において評価軸を細分化・点数化し、活躍に応じてメリハリを付けた処遇を行うと共に、全社的に一定以上の売上を達成すると「大入袋」を支給。さらに、家賃の半額（最大5万円）を補助する住宅手当も支給している。

なお、働き方はテレワークが60～70%を占めている。東京・渋谷にあるオフィスはフリーアドレスで、全社員を収容できるスペースはあえて設けていない。全体ミーティングは、オンラインにて隔週で行われている。

そんな同社の求める人材像について、風間氏は次のように話す。
「ミスした時等、ごまかさず正直に申告できるような誠実さと、担当業務は最後まで遂行する責任感、そして自分の仕事の結果が他部署にどんな影響を与えるかを俯瞰できる視野の持ち主に期待したいです」
国内にいながらグローバルな社内環境をつくり、これから事業を世界にスケールさせていく同社。大きなやりがいが得られるに違いないだろう。