ポーラは、化粧品業界で国内トップ5に入る企業の一つ。訪問販売を主軸とした国内事業、さらに中国、北米などをはじめとする海外事業と幅広く事業を展開している。<br />箱根にあるポーラ美術館をはじめとした幅広い文化活動でも名高い。<br />簡単にポーラのビジネスを紹介するならば、次のようになるだろう。1929年、創業者鈴木忍氏が、自らの手で開発したクリームから、事業がスタートする。「最上のものを一人ひとりにあったお手入れとともに直接お手渡ししたい」という同氏の思いを連綿と受け継ぎ、同社はお客さまが求める美しさに応じた価値の提供にこだわり事業を展開。現在は、化粧品にとどまらず健康食品・アパレル・ボディファッション・呉服・ジュエリーと、女性の「外側」と「内側」双方から、トータルな美を提案し、具体的な商品を提供している。企画から開発、製造、販売まですべてをグループ内で手がける体制を整えるのも、カウンセリングを通して肌状態、年齢、生活環境、季節など個々の肌に応じた化粧品を提供するのも、この創業者の想いを共有してのことなのだろう。「One to one」の化粧品が、何よりも強い同社のアイデンティティーといえよう。<br /><br />しかし、女性の社会進出で訪問販売のビジネスチャンスが減少し、美しさの基準も時代と共に移ろっていく。そんな市場の変化に敏感に反応した同社は、2002年より、ブランドイメージの再構築に向け、さまざまな取り組みを始めているのだ。「新創業」と呼ぶこの取り組みの基礎として、企業理念「ポーラバリュー」を明文化。ポーラというブランドがお客様に対し、どのような価値を提供できるのか、ポーラならではの価値とは何かを問い直した。1000名強の社員が一丸となってひた走る強い組織へ変わりつつあるのだ。
ポーラバリュー実現に向け、一大変革のさなかにあるポーラ
「ポーラバリュー」とは、『私たちは一人ひとりの「もっと美しくありたい」を知り、まごころと技術でお客さまを生涯サポートします』。これを実現するために、エステティック、化粧品、カウンセリング、3つのスペースを備えた最上の空間「POLA THE BEAUTY(写真右)」を各地にオープン、一人ひとりにカウンセリングを施しながら、求められる「美」を提供していくという誘客型のスタイルショップ戦略を打ち出した。ポーラレディによるカウンセリング販売を同社の基礎としながら、今後はこの新業態に国内はもとより海外に向けても果敢にチャレンジし、より時代のニーズに合った形で、お客さまへのベストのサービスを提供していく。<br />このようなビジネスモデルの大きな変革を成し遂げるためには、組織内でのブランド価値の共有も必要だった。そのために、同社では2002年から数年をかけて、携帯用クレド、ブランドガイドブック等を制作。また、社内イントラネットでは経営会議の内容や経営トップ層からの頻繁なメッセージ発信など「会社がどの方向に向かって進んでいるのか」を明確にオンタイムに全社員へ伝え、あらためてポーラの目指すバリューを一人ひとりが強く意識しながら仕事をする環境となっている。<br />こういった改革は現在も続いており、今後さらにポーラのブランド価値を向上させていくため、バックオフィスを始めとした多方面からアプローチしていく予定だという。
人の成長こそが企業の成長
同社では、「人の成長こそが企業の成長」との考え方を経営の基礎に据えている。<br />社員がポーラという場で成長していくために、社員に求めることが3つある。それは、Believe、Only One 、Challengeだ。Believeとは、ビジネスの成功のために必要な信頼関係を意味する。同社には、社員だけでなく多くのポーラレディというセールスパートナーがいる。自分だけでなく他者との信頼関係を何よりも大切に重んじるということ。Challengeとは、同社が「新創業」を掲げて大きく変革した事実に象徴されるよう、変化の波が押し寄せたときに臆することなくその波に乗る精神を意味する。最後のOnly Oneとは、組織の中にあって、自らが成し遂げたいことを心に持ち続け、その実現を通してポーラの中でのOnly Oneの存在となることを目指してほしいということだ。<br /><br />これからポーラに加わろうとする人にも、既に活躍中の社員にも、このことは共通している。これを実現するための具体的なアクションとして、早期経営幹部育成を目的にポーラ・オルビス グループ内の20代社員たちが参加する未来研究会を実施している。ここでは意欲ある若手社員がロジカルシンキング、ビジネススキル、英語力などを1年間を通して学んでいる。さらに、30代~40代社員が経営者としての能力を高めるための経営幹部養成講座などもあり、性別や新卒、キャリア問わず意欲ある社員が集う若手幹部候補の研修も充実しているのだ。<br />また、社員個々が仕事を通して行動・思考を高め開発していくための新しい評価制度を導入するという。