予防医学の研究者を目指していた僕が、大学発ヘルステックベンチャーを起業した理由
「予防医学の研究者になることが自分の目標だった」 私の所属していた医学系研究科山田研究室は、研究テーマは多岐に渡りますが、臨床現場や社会の課題に対して、研究成果を通してその解決策を提案する、研究成果で 「社会に一石を投じる」ことに日々チャレンジしている非常に刺激的な環境でした。 そんなプロフェッショナル集団の中で、私は名古屋大学の大学院でオンライン心臓リハビリテーションプログラムの構築と、効果検証を研究テーマとして担当させてもらい、予防医学、医学研究の魅力のどっぷりハマっていきました。 そして当たり前のように、いつしか自分も「将来は研究者になるんだ!」と思っていました。
現場医療に出て感じたアカデミアと現場との距離感
私が、起業を決意した理由はいくつかありますが、その一つはアカデミアと現場との距離感を強く感じたことです。 現場医療では、一日でコンタクトできる患者さんに限りはありますが、優れた研究成果は、その限界を超えて多くの困っている患者さんの生活にアプローチできます。これが何よりも研究の一番の魅力です。 ただ自分が臨床現場に出て痛感したのは、実際はそう簡単にはいかず、どれほど良い研究であっても実際に現場で使われるまでには相当高いハードルがあることでした。 いくつか要因はあると思いますが、語弊を恐れずにいうと ● そもそも研究論文なんて読まない人がほとんど ● 論文の結果は理解されても現場ですぐには使われない (知ってる、わかる、使えるは別次元) などが挙がります。 つまりは、「研究成果を出す→社会が良くなる」は直結せず、「研究成果を出す→【成果と使い方を広める】→社会が良くなる」この間を埋める部分が圧倒的に機能していないのです。
研究成果を社会に実装し、世の中をより良いものに
もう一つは、自分の周りに優秀な研究者が多くいすぎました。さらに世の中には、本当に素晴らしい研究成果がたくさんあり、優れた研究者が山のようにいます。 ここに、自分である必要性はありませんでした (自分に研究者としての才能がなかった、、、) むしろ、そういった研究者が残してくれた研究成果が社会に届かずに、埋もれていってしまうことが寂しく、とても悔しく感じるようになりました。 また、研究が学会で講演をするためだけのものであってもいけないし、キャリアアップのための論文数確保であってもいけないとも思っています。 PREVENTは、研究成果を社会に実装することで、 病気を抱える方の健康づくりを支えることに本気で取り組んでいる企業です。 ユーザーの抱える課題を捉え、 解決策となる研究成果を正しく理解し、 医療専門職、エンジニア、デザイナーが 一緒になってサービスとして形にする そうです。 これは、医療現場や研究室にいてできることではありません。 つまりは、起業は、自分の成し遂げたいことの最適解であって、 思いを同じとする最高の仲間たちと最高の環境で奔走している今があるというわけです。 ここ最近で、社員も100名に近づき、チームで考えられること、解決できることの質が高まってきており、ワクワクが止まりません。 引き続き、PREVENTにしかできない、価値、サービスを届け、病気を抱える方の健康づくりの質を高め続けていきたいと思います。
社会保障費の増大という社会課題に貢献する
経済産業省の推計値によれば、ヘルスケア産業は2025年には33兆円にまで成長すると予測される注目産業です。 日本のヘルスケア産業は、ダイエットをはじめとした健康に関心の高い人をより健康にするサービスが主流です。たとえば、歩くとポイントが貯まったり、運動をたくさんするとクオカードをもらえるキャンペーンがありますが、上位の人たちは健康自慢な人ばかり。本当に必要な人たちに対してサービスを提供しなければ社会課題の解決にはならないと考えます。 私は、予防医学の研究者になることを夢見て理学療法士として病院で働いていましたが、そこで直面したのはいくら優れた研究や医療従事者が揃っていても、病気が重症化した場合、再発を防ぐことが難しいという現実です。 たとえば、脳梗塞を発症した患者は、5年以内に30%も再発する。原因のひとつが生活習慣。脳梗塞などの動脈硬化が原因で起こる病気は、生活習慣により全身の動脈硬化が進み、一度発症した後も、生活習慣が改善されず再発します。 心筋梗塞が発症し、生活習慣を改善するためにフィットネスクラブへ入会しようと思っても、心疾患のため断られることもあります。 そこで、弊社では企業の健康保険組合と提携し、これまで眠っていた組合員の健康診断などのビックデータを有効活用しています。 ビッグデータの利用で、将来の医療費や発症予測のデータ解析をしています。現在、我々のクライアントである健康保険組合には過去数年分の健康診断データやレセプトのビッグデータがあります。名古屋大学と共同で開発したアルゴリズムを用いて、予測シミュレーションを行っています。そのなかで病気の発症リスクが高い組合員に対し重症化予防の健康づくりプログラムを提供しています。 具体的には、「Mystar」と名付けられたスマートフォンのアプリやウエアラブル端末などを使い、脈拍や歩数、塩分摂取量などのライフログを記録します。アプリを通じて医療従事者とチャットや電話での面談を行い、プログラムの効果を高くしていおり、また医学的な研究結果やデータに基づいた教材を提供し、正しい知識を得ることもできます。 実際に、PREVENTの前身である名古屋大学大学院医学系研究科(保健学)山田研究室では、生活習慣改善プログラムを実施した脳梗塞患者の3年以内の再発率は3%と、通常の10分の1まで抑えられました。 Mystarではこの研究成果を応用した生活習慣改善サポートを提供しています。 このようなプログラムで生活習慣を改善することは、社会課題の解決にもつながります。医療、介護、福祉、年金、子育てなどを含む日本の社会保障費は、2018年度が121.3兆円、そのうち医療費は39.2兆円を占めています。 政府は2040年には社会保障費が188.2兆円から190兆円まで増加し、医療費は18年度の約1.6倍になるとの推計値を発表しています。特に問題なのは、2割から3割の人たちが8割の医療費を使っていることです。同じ現象は、企業にも当てはまります。 1万2000人の従業員がいる企業では、5%の従業員の医療費が全体の大部分を占めています。だからこそ、医療費の多くを使っている従業員や将来的に使うことが予測される従業員に対し、ピンポイントでアプローチすることで医療費削減につながります。
ものづくり大国、名古屋に拠点を置く意味
名古屋大学のある愛知県はものづくりが日本一盛んな土地です。 製造業のメーカーには、生活習慣病のリスクが高まる40代、50代の人たちが数多く働いています。この土地でサービスの実積を上げれば、他の地域や海外へも展開しやすいと考えたからです。 現在は、健康保険組合に加入している組合員や提携している生命保険会社加入者だけがプログラムを受けられますが、今後は誰もが利用できるようもっと多くの自治体などと連携していきたいです。さらには、動脈硬化性の生活習慣病だけでなく、それ以外の慢性疾患に対しても取り組んでいく予定です。 社会保障費の増大は、政治的にも社会的にも待ったなしの状態なだけに、今後のPREVENTの挑戦にご注目いただきたいです!