株式会社イオグランツ

株式会社イオグランツは、住宅建築専用の3次元CAD（3D CAD）の販売と運用サポートを軸に、工務店や住宅メーカーが抱える課題の解決に貢献する会社である。大阪本社の他、名古屋、埼玉に拠点を構え、大手住宅メーカー、地域密着型工務店、設計事務所、不動産会社などと直接取引をしている。

3D CADは住宅建築用の他、橋梁や道路などを建設する際の土木用、自動車や家電などで使われる機械用などに大別されるが、基本的な機能は共通しているため、土木用、機械用でも、住宅建築の設計やパース製作に使うことは可能だ。実際、工務店や住宅メーカーの中にもこれらのCAD製品を使っている会社もあるという。ただ、日本の木造住宅建築に合わせたきめ細やかなサービスは、国内メーカーが開発する住宅建築用3D CADにしかない。

さらに、その国産住宅建築用3D CADにもいくつかの種類がある。各製品の間には、一見大きな違いはないが、それぞれが売りとなる強みを持っている。イオグランツ社が扱うのはDTS社が開発する『Walk in home』という製品だ。『Walk in home』は動作が軽快で操作性に優れ、美麗なグラフィックでの提案が出来る点が大きな特徴であり、プレゼンテーションツールとしての性格が強い3D CADだ。

同製品は代理店を通して販売されているが、イオグランツ社はその代理店の中でもトップクラスに位置づけられている。強みは、工務店や住宅メーカーが、プレゼンテーションツールとしての『Walk in home』を存分に活用して提案力を高めるための"サービス"にある。特に施主に感動を与え、夢を膨らませるプレゼンボードをより効率よく制作するための支援を、「ツール」と「カスタマーサポート」の両面から一気通貫型で行っている。

まずはツールのラインアップ。『Walk in home』は代理店ごとにカスタマイズして販売するのが通常だ。同社の場合、最小限の工数で入力ができるよう考え抜かれたマスタープログラム、総数15,000点以上の部材・素材を収録したコンテンツ集と、それでいて軽快なオペレーションを実現している点が特徴だ。

また、独自に開発した建築パース専用レタッチツール『E-Paint』を同梱。営業担当者でも簡単にかつスピーディに施主の希望を取り入れた魅力的なプレゼンツールを作れることに加え、手描きパースの第一人者・宮後浩氏が書き下ろした点景を収録し、ボタン一つで置き換えられるようにしたことで、より奥行きと温もりを感じさせる演出を可能としている。

さらに業界初のVR住宅営業アプリ『EOPAN』、自動見積積算ソフト『BRIDGE』などの独自ツールを開発し連携することで、より効果的なプレゼンテーションを、より効率的に行える環境を提供している。

これらのツールを使い、施主の目の前でイメージを形にしていくことで、作りたい家のイメージをより豊かに膨らませることが可能となり、受注率の向上へと繋がる。同社が提供する一連のツールは“イオグランツの『Walk in home』”として、住宅建築の業界では高い認知度と評判を誇っている。

もう一つは、単に納品したシステムの保守に留まらないカスタマーサポートだ。社員の90%以上は『Walk in home』を使ってパース制作が出来るCADオペレーター、またはCADクリエーターだ。

全員、入社後すぐに同社が運営するコラムデザインスクールに入学して、手描きパース制作を学び、その上で実際にCADを使ったプレゼンボードの制作に従事する。工務店や住宅メーカーに『Walk in home』の営業をする際に、実際どれだけ簡単に使えるものかを実証するためプレゼンボードの制作を無料で提供する他、実際に納品した顧客から要望があればパース制作を受託する。

そういった実務を通して自社が提供するツールの使い方に精通した実体験があるからこそ、ユーザーからの問い合わせに真摯に対応することができるのである。もちろん自らのユーザー体験によって得た気づきは、自社が提供するツールの開発や機能追加、カスタマイズにも反映される。

では、なぜここまでカスタマーサポートに力を注ぐのか。それは同社のルーツから紐解ける。

代表取締役・山中健司氏が大学卒業後にCADの販売会社に就職し、そこで出会ったのが『Walk in home』だったという。山中氏はたちまちトップセールスマンとなったものの、物を売るだけのビジネスに疑問を抱き始め、サービスの手厚い会社を作ろうと28歳の時に大阪に戻りイオグランツ社を立ち上げた。製品のユーザビリティにこだわり、ユーザー目線に立ったサポートを行う同社の事業方針は、このような経緯から生まれたものである。

もう一つ、同社のアイデンティティの元となったのは、手描きパースの第一人者であり、2008年には全国で初めて建築パースの分野で博士号を取得した宮後浩氏との出会いである。宮後氏を技術顧問として迎え、同氏の手描きパースのエッセンスを取り込み、2014年にはさらに宮後氏が学長を務めるコラムデザインスクールを事業継承するに至っている。これが同業他社には決して真似することが出来ない同社のアイデンティティに繋がっている。

2014年には、もう一つ転機となった出来事がある。それは建築管理パノラマアプリ『EOPAN』のリリースだ。リコー社から全天球カメラ『THETA』の紹介を受け、建築分野での活用方法を検討し、リフォームの際に現状写真を撮影する習慣があることから着想を得て生まれたのが『EOPAN』である。

VR元年と言われたのが2016年。今でこそVR技術を使ったオンライン内覧会は当たり前となっているが、2014年にはまだ同様のサービスは生まれていなかった。そのような時代にタブレットを使い遠隔操作で住宅の中を見たり、完成した住宅の構造を可視化したり出来るアプリを実現。それによってグッドデザイン賞ベスト100、さらにそのうち20社のみが選ばれる未来作りデザイン賞の受賞へと至っている。そしてこの受賞が対外的な信頼へとつながり、飛躍的な成長を遂げることとなったのである。

設立以来、ITとパース制作のスキルを駆使し、持続的な成長を遂げてきた同社。2015年から2019年までの5年間で売り上げは倍増している。近年の少子化や2019年10月の増税は新築住宅の着工数を鈍化させてはいるものの、そういった負の外的要因をものともせず着実な成長を遂げているのだ。それに伴い、現在積極的な採用活動を行っているところだ。

同社の社員は総務部門を除く全員が、まずはCADオペレーターとしてスキルを身につけるところからスタートする。そしてパース制作とコールセンター対応をしながら、操作マニュアルの作成や既存顧客へのアップセル、顧客への操作研修、新規顧客へのデモンストレーション、さらに企画開発、マネジメントと、段階を経るキャリアパスが確立されている。

イオグランツで働く魅力は、住宅建築の現場で働く人たちと直接関わることで、建設業界への貢献を強く実感出来ることだ。現場で顧客をサポートするメンバーの多くが、設計事務所やリフォーム会社、不動産、インテリア商社など、住宅やインテリアなどの仕事に関わってきた人材だ。同業他社からの転職者もいる。“現場で関わるのとはまた別の形で住宅建築の分野に携わりたい”“自分が困った経験を生かして、同じように困っている人を助けたい”といった思いを持って入社を決めることが多いという。

総務経理部 課長・越智美穂氏は業界未経験ながら、パーステック1級を持ち、現在は人事や採用も兼ねている。その越智氏は自社の業務についてこう語る。

「建築業界の中でCADの販売会社は目立たない存在です。一般的にはやりがいが見出せる仕事だとは思われにくい業種です。しかもCADオペレーターというと、言われたことを黙々とこなすだけの仕事と思われがちです。しかし弊社の場合、過去に設計や建築、不動産、インテリアなどの業界で培った専門スキルと経験を生かしていただけます。お客様へのサポートはもちろん、製品に組み込む機能、製品そのものにも生かされます。サポートではお客様から大変喜ばれますし、現場じゃないところから業界を見たい、もっと俯瞰的に様々な住宅会社とお付き合いしたいと考えている方には面白い仕事になるでしょう」（越智氏）

部署を横断するメンバーで構成された10個の委員会では、定期的に議題を持ち寄って業務のブラッシュアップに努める。そういった意味でも、社員一人一人が会社の動向に及ぼす影響力が大きな会社だと言えるだろう。

近年はサポートで信頼関係を結んだ顧客から、CADの操作や活用に留まらない相談を受けることも増えている。2021年には20周年を迎える中、長年勤めてきた社員がさらに活躍出来る場を確保する意味もあり、今後は、CADの販売・サポートにこだわらず、より広い範囲で住宅建築業界の課題を解決していくサービスを生み出していく計画もある。

“共に笑い、輝くために”という企業理念を掲げ、顧客やスタッフなど、関わる全員が輝ける会社を目指し、どこにもないサービスを創造しながら成長を遂げる。それがイオグランツ社である。心の底から喜びを感じることが出来る。そんな仕事を求めている人には注目すべき要素が詰まった会社だ。