株式会社デザイン

Webマーケティングのコンサルティングや制作をコア事業として手がけている、デザイングループ。持株会社である株式会社デザインを中心に10社ほどの事業会社を展開し、“中小企業のお客様の課題を解決するトータルソリューションカンパニー”を追求している。

同グループでは、2007年5月の創業当初から、当時まだあまり知られていなかった“ロングテールマーケティング”に取り組んできた。一般的に、2割の人気商品で8割の売り上げを占める商品構成を取る場合が多い（「パレートの法則」と呼ばれる）。ロングテールとは、これを逆転させ、8割の商品売上が2割の人気商品の売り上げを上回るようにする手法を指す。つまり、ニッチなニーズを数多く集めて大きな収益に繋げるという考え方だ。

ロングテールを実現させるマーケティング手法として、同社はCMSによるブログに着目。例えば、“渋谷　居酒屋　女子会　飲み放題”といった4ワード以上のニッチなニーズの検索に当てるランディングページとしてブログを数多く作成し、上位表示により集客に繋げるというブログマーケティング案件を、これまで約8,000件も手がけて蓄積してきている。

「4ワード以上の組み合わせは無限大にあります。どういう業態のどんな商材には、どういったワードやコンテンツを当てていけば集客に繋がるかといったブログマーケティングの設計ノウハウは、相当深めていると自負しています」（取締役副社長 渡辺雄介氏）

もう一つ、同社はクライアントのランディングページやホームページの制作において、クライアントのニーズに応え抜くことで高い顧客満足を提供し続けてきた。

「例えれば、注文住宅のようにお客様の欲するサイトの制作に徹底的に対応してきました。しかし、当社のお客様は中堅・中小企業が多く、Webマーケティングの知見があってのニーズとは限りません。目的は、Webサイトをつくることにあるのではなく、Webサイトで集客し業績を上げることにあります。そうであるならば、お客様の要望通りではなく、当社の知見をベースに最適なものをご提案したほうがいい場合が多くなってきました。そこで、今後は8,000件の実績を基に、注文型から提案型へシフトしていきます」（渡辺氏）

そこで同社は、新たな人材を求めることとなった。現在、主力事業会社としてWebコンサルティング事業を手がける株式会社セルクルの制作部門の責任者を求めている。

同社では、8,000件のブログマーケティングのデータをDMP（Data Management Platform）に投入し、どんなエンドユーザーがどのように行動し、どんなコンテンツが刺さってコンバージョンに結び付いたかといった“成功パターン”を抽出していく。

「この客観的なデータを論拠として、お客様により的確なWebマーケティングの形をご提案できるようにしていきます。また、既存のWebサイトを解析して改善するPDCAの提案も充実させていきます。差し当たって、DMPを使いこなせたり、Webマーケティングについての知識や経験、さらに欲をいえば組織づくりやマネジメントもできる人材に、この制作部門をお任せしたいと考えています」（渡辺氏）

同社を創業した代表者の平林義行氏は、数十名の規模のWebマーケティングベンチャーに入社し営業職に従事。実力主義の会社で頭角を現し、3年ほどで一気に1000名ほどの組織に急成長させる中心人物となる。平林氏は、事業部長として会社の利益の7割を担うという重責を担った。その平林氏の下で働いていたのが、渡辺氏ともう一人の取締役副社長である大石竜也氏（インタビュータブ参照）。

同社はJASDAQへの上場を果たすが、経営の志向が顧客よりも株主に向かい、“時価総額を大きくする”ことにプライオリティを置く路線に3人は違和感を覚えたという。これをきっかけに2007年の創業に至る。以来、顧客満足を第一に考える経営を続け、グループを広げてきた。
「顧客第一へと会社を変えたいと思いましたが、ならば自分たちで会社をつくったほうが早いし、一度ゼロからつくってみたいとの思いが一致しました」（渡辺氏）

現在、主要なグループ会社は次のとおり。

●株式会社デザイン
グループの管理・企画・運営を行う持株会社として、グループ全体のリソースの最適化や事業シナジーづくりを担う。
●株式会社セルクル
Webコンサルティング会社として、中堅・中小企業のWebマーケティング戦略の策定からWebシステムやWebサイトの構築、運用支援を行う。
●株式会社マーケティングラボ
グループのインキュベーションカンパニーとして、新規事業の立ち上げや分社化を手がける。
●株式会社ラレーヌ
ネイルサロンや美容室を都内中心に20店舗運営。実際にWebマーケティングを実践し新たな集客ノウハウを磨く“実験台”の役割も持つ。

そのほか、人材採用支援サービスや保険代理業などを手がけるグループ会社がある。同社のグループ戦略について、渡辺氏は次のように説明する。
「お客様を獲得する単価は高いものです。獲得したお客様をグループ会社で共有することにより、当該コストを削減し、その分を低価格でお客様に還元できます。この軸で競争優位性を発揮できるグループとして発展させていきます」

目標は、“100社・100人の社長の創出”。「上昇志向のあるメンバーに、数多くのチャンスを提供していきたい」と渡辺氏は意気込む。

同グループのメンバーは約200名。株式会社セルクルは約80名で、うち制作部門は約30名だ。約50名の営業部門は実力主義で、統制の取れた運営が行われている。一方の制作部門は「限りなく自由な風土」と渡辺氏。
「もちろん、結果に責任を持って仕事をしてもらうのは当たり前ですが、プロセスは問いません。フルフレックスタイムでリモート勤務もOKです。仕事の質はソースコードなどを見ればすぐわかりますから、管理面で問題はありません」（渡辺氏）

今後は、さらに組織の一体感やメンバー同士が切磋琢磨できる風土も強化していくという。
業務面では、100％クライアントと直取引によるメリットが大きい。
「代理店が介在せず、お客様に直接提案でき、クレームや要望、満足の声を直接聞くことができます。手応えややりがいは大きいと思いますね」と、渡辺氏。

人材育成の面では、1人の制作担当者がディレクションからデザイン、コーディングまでこなす“多能工”づくりを目指している。コミュニケーションロスをなくし、成果物の質やスピードを上げ、より手応えのある仕事にしていくためだ。

そんな同グループの風土は、経営とメンバーの距離が近いフラットさにある。
「私はメンバーから“雄介さん”と呼ばれていますが、よくメンバーと食事に行きますし、意見が言い合える関係性がつくれていると思います」（渡辺氏）
グループ全体での会社／部門対抗ゲーム大会が年に1～2回行われたり、パーティーも何度か行われている。また、エントランス付近にはメンバー同士がコミュニケーションを深めるためのバーも設けられている。

制作部門の責任者として迎えたい人物像について、渡辺氏は次のように言う。
「仕事の原動力とは、推進力と責任感だと思います。それに加え、失敗を恐れない精神と、経営マインドがあればいうことはありません」

制作会社からマーケティング運営会社にシフトし始めるタイミングで、30名の組織を自分の思うようにリードしていけるポジション。大きなやりがいがあるに違いない。