VRゲームとVRプロダクト分析ツールを開発中
株式会社ダズルは、2011年の創業以来、ソーシャルゲームの企画・開発・運用事業を主に手がけてきた会社だ。共同開発による本格ファンタジーRPGゲームでは、数多くのユーザーを集め、リリースから約8ヶ月で100万ダウンロードを突破。大手ゲーム会社と協業プロジェクトが進むなど、ゲーム開発会社としての実績をさらに積んだ。
2016年のトピックは、バーチャルリアリティ(VR)事業への本格参入だ。「2020年までには700億ドル規模に成長する」とも予想されている新市場である。
同社はソーシャルゲームを多数手がけてきたが、市場はレッドオーシャン化しているのが現状だ。自社開発のタイトルで勝負するのもリスクが高い。既存のソーシャルゲーム事業を続けながらも、新しいビジネスに取り組むという点が、ダズルの考えだ。
収益の柱は、引き続きソーシャルゲームを中心としたゲーム事業であるが、一方で社内の余剰リソースをVR事業に配分し、研究開発を進めているのが現在の体制だ。
2016年6月にリリースされたシューティングVRゲーム「オハナちゃん」は、同社初のVRゲームタイトルだ。ヘッドマウントディスプレイを着用し、360度全方位から攻撃してくる敵キャラクターを撃退する。今後は、自社オリジナルのコンテンツのほか、VR関連の受託案件も展開する予定だ。
VRプロダクトの分析サービス「AccessiVR(アクセシブル)」もリリース2017年夏にアジア初のVR分析サービスとしてローンチ。当初、同社はVR向けの広告事業に参入することを検討していたという。しかしVRはプラットフォームが未成熟であり、現段階では広告の需要がない。そこで当社の技術力やノウハウが生きる、VRプロダクト向け分析ツールに目をつけたという経緯がある。
エンジニアの岩田氏が説明してくれた。「AccessiVRによって、VR空間内にいるユーザーが、どのオブジェクトをどんなふうに見ているか、何人が見ているのか、わかるようになります。こうしたデータを集めて、VRの開発者に役立てていただこうということです」
社員の意見を尊重した就業規則でエンジニアの働きやすさを追求する
同社代表はエンジニアであり、技術力の高さは折り紙つき。どうせやるなら新しい技術を目指そう、という姿勢は創業時から変わらず、VR事業進出も、その一環であるという。
くわえて「クリエイターが働きやすい職場」を強く志向しているのが同社の特長になっている。例えば、スペシャリストとマネジメント、2つのキャリアだ。キャリアアップしたエンジニアが開発を離れマネジメントにつくケースがしばしばあるが、現場を愛するエンジニアにとっては喜べるものではない。そこで、圧倒的に技術力が高いエンジニアやデザイナーを対象に、エキスパートあるいはプリンシパルという役職を設けたという。マネジメントはせず、ひたすら技術力でコミットする。あくまでスペシャリストとして働きたいエンジニアの方も歓迎という姿勢だ。
就業規則も「クリエイターが働きやすい職場」を意識したものだ。フレックスタイム制度を導入しているだけなら珍しくはないかもしれない。しかしコアタイムは14時から17時の3時間、標準労働時間が1日7時間と定められ、それが十二分に活用されている。(一部グレードは対象外)
開発環境も充実させている。GitHubによるコードレビュー、Qiitaでの情報共有はエンジニアの成長を促すもの。Mac、Windowsも個人の選択に任せている。「居心地のいいオフィス」を目指し、直近のオフィス移転にともない、休憩にも作業にも使えるソファスペース、お弁当代の補助なども用意した。
エンジニアリングの力を評価
現在の陣容は、エンジニア・デザイナー・企画およびバックオフィスがそれぞれ1:1:1ほどの割合。前職でもソーシャルゲームの開発にあたっていた人材が多くを占めるという。今回の採用は、AccessiVRの開発にあたるサーバーサイドエンジニアやソーシャルゲームのバックエンドシステムを開発するエンジニアが中心だ。
まだ未成熟なVR市場であるため「VR経験者である必要はない」。だがベースとなる技術力において、妥協はゆるされない。「仮に現時点でVRにあまり興味がなくても、技術力がある人に来て欲しいなと思っています。特に、設計から実装まで全体の面倒を見られる、リードエンジニアクラスの人がほしい。会社が成長し、プロジェクトが増えてきたことで、これまでの人員では足りなくなっています。人のマネジメントはしなくていいので、システムをきちんと見てくれる人。かつ、VR事業に興味があればなおよし、というところです」
「これからの成長市場を舞台に働けることが第一のやりがい」だと同社エンジニアは言う。大きく当てれば見返りは当然大きくなる、ということだ。しっかりした技術がまずあって、その上でVRに興味を持って欲しい。そういった点からは、「一発当てようというよりは、堅実にエンジニアの仕事を進めていける人のほうが合う会社だと思います」(岩田氏)とのことだ。
現在は60名ほどの規模へ拡大したが、創業当初より個人の意見が通りやすい環境が守られており、この新市場で試したいアイデアがある人材にはうってつけだと言える。聞けば、前述の「オハナちゃん」はVR未経験のエンジニアが担当につき、1人で形にしたものだという。
「『オハナちゃん』以前は、サーバーサイドのエンジニアだった社員です。しかし『VRをやりたい』『unityもやってみたい』というので、好きにやってもらいました。悪く言えば会社は放置したのですが(笑)、本当に企画から全て考えてくれました。この件に限らず、社員には大きな裁量を与える文化がある会社です。もちろん受託案件については、お客様がいたり、共同で運用している相手がいたりと、自由は制限されます。しかし、VRに関しては、今のところ相当自由にやれますよ」(同社エンジニア)