株式会社アイ・シー・アイ

日本でもっともアクセス数が多いといわれているOCW（オープン・コース・ウェア）、東京工業大学『TOKYO TECH OCW』や大手メーカー系SIerが提供するデータセンターサービス、大手金融機関向けシステムなど、大規模プロジェクトに次々と携わっている株式会社アイ・シー・アイ。顧客にもソフトバンクやキャノングループなどさまざまな業界の大手企業が名を連ね、売上高は、2013年の２億5600万円から2015年には倍増となる５億円に達するなど、2009年設立、社員数28名という規模感からはイメージしにくいほどの実績と勢いを見せている。

その秘密の一端は、幅広い事業領域と業務領域にある。情報システムに関する課題解決に向けた技術的支援を行うコンサルティング事業からシステムインテグレーション事業、システム開発事業、セキュリティ事業までをカバー。業務領域においては、インフラ設計・構築・運用、Webの設計・開発・監視というように、上流工程から下流まで経験できる。プロジェクトによっては、ユーザのIT教育、導入時教育、管理者・開発者向けセキュリティ教育といった社員のスキルアップ施策を行うこともあるくらいだ。
「当社が目指すところは、IT関連における全レイヤーに対応できる企業、任せていただけるだけの信頼と実績がある企業です。もともとはシステム基盤に強みを持つ会社でしたが、最近は、Web・オープン系の案件依頼も増えています。ネットワークやサーバ基盤の設計・構築からデータセンタの構築も手掛けていますし、最上流といえる顧客課題の吸い上げから携わり、プロジェクトの全体像を企画・設計してシステムの実装、運用まで一貫して携わるプロジェクトも少なくありません。中でも、当社のコンサルティング力は、お客様から高い評価をいただいており、全案件のうち７～８割が上流工程からの受注となっています」（シニアコンサルタント・日野氏）

同社が、高いコンサルティング力を誇る理由は、その創業経緯にある。

アイ・シー・アイは、日本最大手のシンクタンクであり、コンサルティングファーム、システムインテグレーターである野村総合研究所を「スピンオフした人たち」によって設立された。大企業であるがゆえの制約から解き放たれ、より自由に理想の会社をつくるためだ。

「私たちは、IT活用を一新するために集結した“コミュニケーションイノベーター”です。長年にわたって旧来の業務プロセスを埋め込んできたシステムが、合理化・効率化という本来の目的を妨げる足かせになっている企業がごまんとあります。また、システム導入によって合理化・効率化を実現した企業においても、システムによるヒューマンコミュニケーションの減少から社員同士のコミュニケーション能力（情報を作る力、相手に伝える力、相手の気持ちをくみ取る力）の低下をまねいているところが少なくありません。コミュニケーション能力の低下は、創造力や営業力に影響を及ぼす深刻な問題です。そのため、私たちは“ITは、社会・企業が潤い、人が輝くための価値を生む道具”だという思いのもと、人と人、組織と組織、社会と社会のコミュニケーションを、ITを活用して改革していきたいと考えています」（代表取締役社長・藤岡宥三氏）

そのためには、上流工程からプロジェクトに参画し、システム全体を設計していくところから携わる必要がある。同社が、上流工程からの一括受注や顧客との直接取引にこだわる理由がここにあり、野村総研時代に培ったノウハウや人脈が活かされている。

「当社には、それができるだけの技術力と実績があります。現在も、人手が足りないために、やむなくお断りしている案件がいくつもあるくらいです。だから、『もっと上流の業務をしたい』『運用だけに終始したくない』『クライアントに高い価値を提供したい』という意欲のある方であれば、おおいに自分を試し、成長できる環境を提供できると自負しています」（エンジニアリンググループ GM・辻 由紀夫氏）

同社は、最新技術を取り入れる貪欲さや、常に新たな領域へ挑戦する前向きさに溢れたプロフェッショナル集団だ。そんな彼らのプロ意識を支えているのが、自主性を尊重する社風であり、「人の1000倍、考える」という文化である。

「人材育成の基本はOJTです。もちろん、スキルアップのための勉強会なども行われていますが、会社として強制しているわけではなく、社員自らが必要性を感じて実施しているにすぎません。当社は、アウトプットで勝負しているため、一人ひとりに大きな権限と裁量を与えてもいます。その責任を自分の中で消化し、お客様へ質の高いサービスを提供するために、自分が何をする必要があるのか、徹底的に考え抜く――それが、当社のスタイルです」（藤岡氏）

多少、余談になるが、「人の1000倍考える」文化が根付いている同社では、まったくの異業種からの転職組が多いにも関わらず、顧客に満足してもらえるエンジニアやコンサルタントへと成長した人材が幾人も働いている。運送業から転身したエンジニアもいる。そのくらい、同社では人材が育つ環境があるということなのだろう。

しかし、放任するばかりかというと、そうではない。「社員の人生を幸せにするため」、福利厚生が充実している。独身寮が完備されているだけでなく、通信手当や子供手当、401ｋ（確定拠出年金）、持ち株制度なども整っているのだ。
「野村総研という大企業で長年、キャリアを積んできた人間が始めた会社なので、社員を大切にする文化が自然と生まれてきた結果だと思います」（藤岡氏）

アイ・シー・アイは、創業から数年しか経っていないベンチャー企業らしい勢いを持ちながら、IT分野の先端における数十年に及ぶキャリアに裏付けられた成熟さも併せ持っている数少ない企業の一つといえる。着実にステップアップしていきたいと考える人には、最適な環境といえるのではないだろうか。